リュウがななこと仲がいい。
そんなこと聞いたからと言ってなにができるわけでもない。
というか、何かを思う権利は私にはない。
でもただひたすら不愉快だった![]()
リュウには早く立ち直ってほしいと思っていた。
それなのに、この矛盾する気持ちは何だ。
深層心理ではいつまでも私のことを好きでいてほしかった・・・?
だとしたらどれだけ私はエゴイストなんだろう。
・・・いや、違う。
単純に相手がななこだから。
リュウに私が嫌いなななこを好きになってほしくはなかった。
どちらにせよ、ものすごいエゴだな![]()
そのエゴが正しいことではないのはわかっていたから、
誰かに口に出すのははばかられた。
だから一見平気そうな、気にしてない顔を貫いた。
リュウとななこの件に関しての事実は、
その後まもなく本人からも知らされた。
リュウが私と同じテーブルでグループワークをしていた時だった。
ななこが私の斜め前にいるリュウに寄ってきた。
清田くん。
今日何食べたい?
何食べたい・・・
?
ん?
あー・・・。
なんでも。
そっか。
じゃあこの前おいしいっていってくれたから、
生姜焼きかな。
は・・・
?
何?
何の会話?
ごはん?食べに行くんじゃなくて?
手作り・・・
?
んー・・・。
心なしかリュウの声が小さい、
そしてななこの声は響く。
聞きたくないけれど、
耳を澄まして聞いた![]()
目は不自然なくらいにそちらを見ないようにしているのに。
ななこはふわりと歩き、
私のもとへと近づく。
来るな来るな来るな・・・!
今感情を整理できていないこの状態で、
ななこと話すのは嫌だ・・・!
私の願いはむなしく、
彼女は私の隣に来た。
甘ったるい匂いが鼻につく。
私には似合わない甘い香り![]()
ふんわりと香る、甘い甘いベビードールの香り![]()
ななこにぴったりの柔らかく、糖度の高い香り。
サクラ?
なに?
清田くんの好きなもの、
ちゃんと知ってた?
イラっとした。
顔の温度が2℃ほどは上がったと思う。
知らんわ![]()
なんなら食べ物に興味ないと思ってたしな
!
そらななこみたいに家庭的じゃないしな、私は
!
えー?
どうかな。
知らんかったな。
かろうじて普通に返した。
サクラ、お料理とかする
?
しないよ。
そうなんだ。
私一人だからしなきゃなんないし、
し始めたら楽しいよ
?
そ?
私にはできんかな。
「作ってあげたい彼ご飯」
(ごめんなさい、これじゃなかったと思うんですけど本の名前が思い出せない。
なんかその時そのタイミングではめっちゃイラっときた本の題名だったんです。)
ってレシピ本、すごい簡単だし、
おいしいって清田くんも言ってくれるよ
?
よかったじゃん。
私がそう返した時、
なな。
リュウの強めの声が静かに響いた。
そういうのやめて。
えー?
ただアドバイスしてるだけだよ?
ななこはほほ笑みながら言葉を返す。
もーええって。
いー加減にせぇよ。
静かに響くリュウの声が空気を凍らせた。
私はと言えば、
色んな事にショックを受けていた。
ななこに煽られていることじゃない。
「なな」。
親しい呼び方。
そして親しい間柄でしか出さない方言。
ななこのことを、そんな風に呼ばないで・・・!
すぐに我に返る。
・・・なにをショックを受けてんだ![]()
人間の心理の複雑さに戸惑う。
間違いなくリュウのことを好きな気持ちはミリもないのに、
なにが私をこんなに不快にさせるのだろう。
はぁい![]()
こんなに凍り付いた空気の中、
尚も歌うように返せるななこに、
ある意味感嘆した。
ななこは去り際に私の耳元で小さくつぶやく。
「清田くんと一緒に住んでるの」
は・・・?
思った以上にダメージのある事実だった。
住んでるって
?
寮は
?
寮、やめてないじゃん。
彼のお母さんが同棲なんて了承するはずがない。
聞きたいことはあれど、聞けるわけもない。
サクラと清田くんて。
・・・・![]()
ななこのその意味ありげな表情で、
言いたい続きはわかった。
「シてなかったんだね
」
横目でななこを射るように見た。
ふふっと笑ってななこは嬉しそうに立ち去っていった。