
何がしたかったんだこの映画『‟それ”がいる森』
森の中から現れた‟それ”に人が襲われる様を描いたホラー映画『‟それ”がいる森』は『女優霊』『リング』でJホラーブームを先駆けした中田秀夫監督が新に送る新感覚のホラーだ。
東京でサラリーマンをしていた田中淳一(相葉雅紀)は大企業の社長令嬢、赤井爽子(江口のり子)と結婚し、義父の会社に勤めるが、折り合いが悪くなり、縁を切られて家を追い出される。淳一は知人(宇野祥平)を頼って福島に単身移り住むことになるが、家を去る時に一人息子の一也(上原剣心)から「お父さんは逃げてばかり」となじられてしまう。
3年後、淳一が手掛けているオレンジ栽培がかいよう病(果実に斑点模様ができる柑橘系の病害)に悩まされつつも、実を結び始める。そんな時、東京で爽子と暮らしているはずの一也がやってくる。中学受験のために大好きだったサッカーを辞めさせられたことなどで、母親と口論が絶えない一也は家出してきたのだ。淳一はかつてなじられたことを思い出し、今度は息子と向き合うために一也を預かり、こちらの学校に転校させる。
学校では「ヘタレの東京者」と一部の生徒から敵意を向けられるも、サッカーの授業で活躍したことから、大柄のクラスメイト、ユウジくんと友達になり、学校裏にある天源森につくった秘密基地に案内される。その帰り、二人は森の中で巨大な鉄の物体を見つける。翌日の学校でその事を話すと、一也を嫌っているショウタたちから「ウソをつくな」とやじられる。「だったら証拠を撮ってきてやるぜ」とユウジ君の母親のスマホで証拠写真を撮ることに。しかし森の中から鉄の物体は消えていた。その帰りに二人はうなり声をあげる何者かに襲われユウジ君は姿を消し、一也は意識を失って倒れているところを淳一と担任の北見絵里(松本穂香)に助けられる。
翌日の一斉捜索に参加した淳一と絵里は男女の死体とバッグに詰められた大金を見つける。それは東京で起きたホストクラブ襲撃事件の犯人と奪われた金であった。しかしユウジ君の行方は知れず、森の中には巨大な物体の痕だけがあった。意識を取り戻した一也に森の中でのことを聞いても「覚えていない」というだけ。以降、家屋から女の子が行方不明になる事件が起き、大規模なクマ狩りが行われる。これで安心だというショウタたちに一也は
「違う!あれはクマなんかじゃない!」
と声を荒げるのだった。
一也は一人森の中へ入ったところを追いかけてきた淳一に咎められ、森の中でクマではない何かにユウジ君が襲われたこと、何者かの正体を撮ったスマホが森の中にあるはずだという。一人で森に入った淳一はユウジ君のスマホを発見。そこには得体の知れない‟それ”が写っていた…
『‟それ”がいる森』は予告編で‟それ”の正体を徹底的に伏せていて、これはいい判断だと思う。‟それ”の正体が最大の謎で、映画の売りだから。そして‟それ”の正体が全然大したことないっていうのが、大問題。
‟それ”の正体は宇宙人で、鉄の物体はUFOで、彼らは何十年かに一度やってきて子供を食って成長していく、という目的な正体が明かされるのだが、そう教えられても観客の頭の中は「なぜ?」の嵐だ。
UFOでやってきている、というネタバラシはかなり早い段階で行われる。UFOと思わせといて実は違っていた、というオチかと思ったらそのまんまUFOでした。なんで早くバラすの?
外見はこの手の宇宙人の定番、グレイで全身が銀色。こいつがひょろっと淳一のビニールハウスに突っ立っている光景はM・ナイト・シャマランの『サイン』に出てくる「誕生日パーティのビデオに写ってる宇宙人」そのまんま。この映画では子供を食らって大人を容赦なく殺す怪物なのだが、どう見ても強そうに見えない。バットで殴ったら倒せそう。
見たこともないような化け物とか、貞子みたいな正体不明の怪異と思ったらグレイなのでこの時点で拍子抜け。そもそも全然怖くない。
中田秀夫監督は『女優霊』『リング』で得体の知れない恐怖を描いてヒット作を連発したが、スランプに陥って『L change the WorLd』(ナンチャンがFBIに扮したズッコケ映画)『MONSTERZ モンスターズ』(韓国映画のリメイクで、マッチョのタンクトップ男が襲ってくるギャグ映画)などに手を出してドツボにハマった。最近は『スマホを落としただけなのに』『事故物件 怖い間取り』などで復活の兆しを見せているが、その二本も『リング』の頃とは違って、恐怖と笑いをミックスさせた、本人曰く「怖ポップ」路線を開拓。これは本人なりに色々な方向を模索した結果なのだろう。
しかしどう見ても成功しているとは言い難い。UFOもグレイもさんざん使い古されたネタだし、それも考え抜かれて採用したという感じでもなく、苦し紛れに出してきたようにしか見えない。宇宙人はビニールハウスに入ってくるのだが、子供を食うのが目的なのにビニールハウスに来る理由がわからない。実は60年前にも来ていて、その時は夏祭りの最中で、森に迷い込んだ子供を襲ったという話が明かされるが、映画で描かれる時期は春になる前なのだ。じゃあなんでこの時期に宇宙人が来るの?
ビニールハウスで襲われそうになった淳一が木にかかった体液を回収して「大学かどこかで調べてもらおう」というので、これで宇宙人の正体がわかったりするのかな?と思ったらこの話は以後、出てこない。かいよう病にかかったオレンジが宇宙人の弱点なのだとわかった淳一は攫われた一也を救うためにオレンジの果汁を絞って棒の先に括った布に果汁をしみこませた武器をつくる。これで一也を救い出すと、棒を放り投げてしまう。武器は捨てずに持っとけよ!!(案の定、死んでなかった宇宙人に襲われる)
小学校に子供たちが避難するが、そこに子供を食らって巨大になった宇宙人がやってくる。するとクラスメイトのコウジくんは箒を持ち出して「やっつけてやるぜ!」と宇宙人に挑んであっさり食われる。あんなデカいやつみたら普通逃げるよ!立ち向かわないよ!その直前には森から飛んだUFOが町の上空を飛行。すると町ひとつが停電する。なぜそうなるのか、誰も説明してくれない。停電させる意味もわからない。
最近公開されたジョーダン・ピール監督の『NOPE/ノープ』もUFOでやってきた宇宙人が人を食らっていた。そしてUFOが来ると停電する。それらはピール監督が考えに考え抜いた結果の産物だ。偶然にもネタが被った本作は製作陣が考え抜いたようにはまるで見えない。物語も登場人物の行動もすべてが不可解で、何をやろうとしたのかがまったく理解できない怖さだけは、ある。
ホラーとエンタメを融合させようとして、ダダ滑りしている。最悪なのがエンドロールでUFOも宇宙人もフィクションではなくて実在しているのかもしれない…みたいな方向に持っていこうとして完全に失敗してますね。そういう時は徹頭徹尾ありえない感じにしないと。リアル感を出したらダメよ。それやるんだったら白石晃士監督みたいなモキュメンタリー路線でやらないと。はじめから奇想天外なモンスター映画にした方がよかったのでは。
あと、あの変な主題歌はなんなんだ。わけのわからない言語が延々と流れる、あれ。「森」という意味の言葉が流れてるらしいんだけど、よくわからないのでみんなに聞いて欲しいんだけど、この主題歌、なぜかサントラに未収録。
こんな記事まであるんだから、話題にしてほしかったんでしょ!じゃあサントラに入れるか、サブスクで聴けるようにするのが普通でしょ!この映画本当に何がしたかったのかわからない。
最高に輝いてる!(幻想)『ぼっち・ざ・ろっく!』第一話
2022年秋アニメが本格的にスタート。その中でも覇権を争う一本がTOKYO MX系で放送中の『ぼっち・ざ・ろっく!』だ。
まんがタイムきららMAXで連載中(現在4巻まで発売中)の原作漫画は主人公が女子高生4人組のバンドとあってポストけいおんを狙う野心作だ。ただ、けいおん!とは方向性がまったく違うけど…
主人公の後藤ひとりは幼いころから友達の作り方がわからないコミュ障なので言葉の頭に「あ」をつけないと人と話せない、目が合わせられない、陰キャの挙動不審ひとりぼっちだ(コミュ障の描写がリアルすぎるので、原作者のはまじあきはリアルコミュ障の作家なのかと疑われた)。
中学生のころから一日6時間押し入れに籠って引き続けたギターの腕前は大したもので、「ギターヒーロー」名義で開設しているオーチューブチャンネルの登録者数は数万人(後に10万を超える)に上る。今は押し入れから愛を込めてギターを弾く日々だけど、いつかバンドを結成して、文化祭ライブで活躍して、プロデビュー、その後のインタビューではぼっちで陰キャの過去を懐かしく振り返りつつ、ワンマンライブ、ZEPP、スーパーアリーナ…!と妄想だけが肥大化していた。ある日、公園で所在なげにしているところを、バンドのギター担当がライブ直前に逃亡したためサポートを探していたドラマーの伊地知虹夏に誘われ、即ライブハウスでバンドデビュー。しかし生来のコミュ障が災いして他のメンバーとセッションができないひとりの演奏技術はミジンコ以下。初のデビューステージは「完熟マンゴー」の段ボール箱に入って演奏することに。しかし自分を変えたいという夢と「有名になってちやほやされたい」という承認欲求に目ざめたひとりは虹夏のバンド「結束バンド」のメンバー入りを果たす。
最近のまんがタイムきらら系は「ぼっち・陰キャ・コミュ障」の漫画がやたらと目立っていて(『ななどなどなど』『きもち悪いから君がすき』とか)誰もやらない隙間産業を狙っているのかと思ったが、『ぼっち・ざ・ろっく!』は人気も高く、晴れてアニメ化にまでこぎつけている。
そしてついに放送された第一話は製作しているCloverWorksのクオリティ高めのアニメーションが美しいのはもちろん、それ以上にひとり役の青山吉能の七変化ともいえる声の演技が素晴らしく、それだけでも30分楽しめる。
『けいおん!』は放送当時、「あの原作漫画のアニメで面白くなるの?」と事前の評価は低かったけど、いざ始まったら傑作だった。『ぼっち・ざ・ろっく!』は事前の評価がすでに高めで、期待値が高すぎ、逆の意味でスタッフも大変だったと思われるが、不安が杞憂に終わってよかった。
バンドのアニメなので結束バンド役の声優4人による主題歌が採用。こちらは「ぼっち・陰キャ・コミュ障」とは正反対の疾走感溢れる青春ど真ん中邦ロックで、こちらも最高(ボーカルは後にバンドに加入する喜多ちゃん役の長谷川育美)!
第一話を見る限り期待を裏切らない出来だったので1クール全12話、期待しかない。めざせけいおん越え!スーパーアリーナライブ!
公開50周年『小さな恋のメロディ』来日
1971年の映画『小さな恋のメロディ』公開50周年を記念して、主演の二人、マーク・レスターとトレイシー・ハイドが来日する記念イベントが横浜と京都で開催。舞台は横浜シネマノヴェチェント、関内ホール、京都みなみ会館だ。
これは本来去年行われる予定(去年が公開50周年)のイベントで、コロナ過のため一年ずれての開催。レスターとハイドが同時に来日するのは確か、公開当時以来(その時は小森和子や水野晴郎先生が対談した)のはず。レスターやハイドは単独でイベントやテレビの企画なんかで来日している(レスターは2019年の東京コミコンにも来日している)が、両者同時来日、しかも一週間以上の長期に渡っての来日となるので本当に貴重だ。
映画『小さな恋のメロディ』は本国イギリスではまったく話題にならず、日本を始めとするラテンアメリカ各国では今も語り継がれる普及の名作だ。
イギリスの厳格な公立校を舞台に中流のダニエル(レスター)と労働者階級のメロディ(ハイド)との恋愛、社会からのドロップアウト、反逆がテーマで、高度経済成長期の真っただ中だった日本でもベトナム戦争反対など政府や社会に対する反発が高まっていたことが映画のテーマとクロスしていたこと、ビージーズやクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングを収録したサントラ人気も相まって、今も忘れがたい作品。
わたし今日ね 昔の映画を見たの 『小さな恋のメロディ』よ
ねぇ二人はさぁ トロッコに乗って逃げてくの ラストシーン
と大槻ケンヂが歌ったのは97年だ(アニメ『EAT-MAN』のOPに使われたため、映画と関係なく覚えているオタクが多い)。
そのオーケンすら霞むこっぱずかしい歌詞を書いたのは浅井健一で筋少に遅れて98年。
そんな恥ずかしさすら超えてメロディにしたい欲求が生まれるのが『小さな恋のメロディ』なのだろう。まあわかる。映画きっての名台詞がすでに恥ずかしい。
「50年ってどれくらい?」
「休暇を除いて150学期かな」
「そんなに愛せる?無理だわ」
「できるさ。だってもう一週間も愛し合ってる」
映画のレスターとハイドだったらいいけど、日本人が真顔で口にしたら恥ずかしさで死んでしまいたくなるわ。そんな恥ずかしさを乗り越えて来日イベントに足を運んでみてはどうでしょうか。
シネマノヴェチェントの企画にはレスターが73年に出演した邦画『卒業旅行 Little Adventurer』も上映されます。これは東宝が興行がまったく当たらず、レスター人気にあやかった番組。ところがレスターは予定を過ぎても来日せず、クランクインギリギリにやってきて、しかも家族と一緒に来ていた!(親がエージェント代わり)やる気ゼロ、観光気分のレスターをなだめすかしてようやく完成した映画は当然ズッコケてレスター人気は収束した。こんな機会でもなきゃ絶対見ない一本なのでみんなで地獄を味わってほしいね!
ガチのニチアサスタッフ&キャストが結集したクソアニメのOP
2022年秋アニメの先陣を切って放送された『ポプテピピック TVアニメーション作品第二シリーズ』。シーズン1は前代未聞の手法で話題をかっさらいましたが、果たして今季は…と思ってたら、初回から意味不明でした。
シーズン1最終回の『テレビスペシャル 玄武』のBパートのラスト、蒼井翔太が時を遡って歴史を改変したところ、もうひとりの闇・蒼井翔太が出てきたところからの続きからはじまり、突然実写のオープニングで幕あけ。これがニチアサの仮面ライダー風につくられていて、蒼井翔太はなぜだかわからないけど変身までしてしまうのだった。この仮面ライダー風オープニングが単にマネしているのではなく、本職の人たちが製作を手掛けており、この人たちも一体どんな顔して製作してたんだろう…?以下、説明します。
蒼井翔太が歌う第二シリーズ主題歌『Endless Love』のタイトルロゴが『仮面ライダードライブ』風。
劇用バイクでクレジットされている河村章夫は東映のテレビドラマや特撮ヒーロー作品のカースタントを手掛けているタケシレーシング所属。VFXディレクター、キムラケイサクは最近の戦隊シリーズや仮面ライダー作品に関わっているCGデザイナー。キャラクターデザインの武藤聖馬は『仮面ライダーゼロワン』のヒューマギアや『ウルトラマントリガー』の闇の三巨人のデザインをした人。特殊造形のレインボー造形企画は言わずと知れたスーパー戦隊シリーズをはじめとする東映特撮ヒーローのスーツ、マスク他をつ食っている会社だ。そして監督の坂本浩一は東映特撮、ウルトラシリーズの監督。アクション担当のB.O.S Action Unityは元レッド・アクション・クラブのメンバーが設立したスタントチームで『パワーレンジャー S.P.D』他パワーレンジャーシリーズや『劇場版仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』にも参加していた。
と、製作スタッフはニチアサに関わってる本職の面々なのである。その人たちが「仮面ライダー風の」画像をつくってるんだから、真似じゃなくて本気の仕事なんですよ。
さらに出演者にも本職が集う。おやっさん役は声優の江原正士だが、顔だしの俳優として『仮面ライダーBLACK RX』に出演経験があり、スーパー戦隊シリーズや平成ライダーシリーズに声の出演がある。タイムパトロール隊長役は『仮面ライダー電王』『仮面ライダー響鬼』などに出演していた中村優一。
このカットのためだけに呼ばれた中村さん、お疲れ様です。
そして謎の少女役で出ているのは『魔進戦隊キラメイジャー』でたった4話しか出ていないメインヒロイン(?)の柿原さんを演じていた西葉瑞希。登場シーンが限られてるのにインパクト大の存在感を放っているあたりがキラメイジャーの再現っぽくてたまりません。
これらのOP映像はアニメ本編とは一切関係ありません。関係ないところに全力を注ぐあたりがまさしく『ポプテピピック』という感じで、こんなクソアニメにマジになっちゃってどうするの?
このガチなOPのせいで、第一回目の声優が平野綾に茅原実里、ハルヒ&長門のSOS団コンビという話題が霞んだぐらい。このインパクトよ。今季の覇権はいただいた!
おわかりいただけただろうか
2022年10月予定
2022年10月予定
10月8日(土)
『アイドル十戒 新たなる支配者其の二』
場所:アワーズルーム 開演:19:00
料金:¥1500(drink代別)
出演:竹内義和 しばりやトーマス
新章スタート!アイドルにハマったために号泣することになった男の悲劇
10月18日(火)
『旧シネマパラダイス』
会場:アワーズルーム
開演:20:00
料金:¥1000(1drink込)
解説:しばりやトーマス
深夜の映画番組みたいな企画。
もうすぐハロウィンなんで、ジョン・カーペンターの『ハロウィン』しかないでしょ!
10月22日(土)
『僕の宗教へようこそ第一五五教義~地下ニュースグランプリ中間報告』
場所:なんば白鯨
開演:19:00
料金:¥1500(1drink付)
出演:しばりやトーマス アシスタント・トモ
今年一年間のどうでもいい話題を発表する地下ニュースグランプリの中間報告会。
2022年は地獄です。
10月25日(火)
『キネマサロン肥後橋 』
会場:アワーズルーム
開演:19:30 ¥1000(1drink込)
解説:しばりやトーマス
カルトを研究する若人の会。
今月研究するのは黒沢清監督の終末ホラー『回路』。
地獄が溢れてみんな消える。
10月27日(木)
『スーパーヒーロートーク』
場所:なんば紅鶴
料金:¥1000(1drink別)
開場:19:30
出演:にしね・ザ・タイガー ソエジマ隊員 しばりやトーマス














