しばりやトーマスの斜陽産業・続 -57ページ目

まんがタイムきららMAX2023年1月号雑感

 まんがタイムきららMAX1月号が発売。気になったやついくつかの感想を書きます。

 アニメ絶賛放送中の『ぼっち・ざ・ろっく!』表紙、巻頭カラー、巻末の3つを独占。伊地知姉妹の過去を回想する特別編で通常の4コマでないストーリー形式だ。

 

 

・ライブハウス、スターリーの店長、星歌さんがまだバンドに人生のすべてを注いでいて、家族とかがわずらわしくて妹の虹夏ちゃんと対立し続けて家にも戻らないという遅すぎる反抗期を迎えていた頃の話で、その彼女が如何にしてバンドを捨ててライブハウスの店長になる道を選んだのか…という展開は少々ずるい泣かせのテクニックが使われていて、もう絶対泣くやんかという話よ。伊地知姉妹はこの漫画で唯一シリアスな話題ができるキャラなので(ぼっちちゃんやリョウ、ましてや喜多ちゃんはどうしてもギャグにしかならない気がする)こういう話もアリっちゃあアリですよ。番外編のストーリー漫画としてはよくできている話なので、この辺が某けいおん辺りとは違うところだよね。ストーリー形式でも読めるし面白いっていう。あっちは…(以下略)

 

・巻頭の次はアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』のアフレコレポート漫画。描いてるのは先月突然の最終回を迎えた『お姉さまのVな事情』(単行本今月末発売!)のMOTO先生。ほんと、なんで終わったんやろ…

 アニメ制作スタッフは全員美少女か動物にされるというレポート漫画のお約束、今回は美少女を選択されたMOTO先生による美少女スタッフ、大変素晴らしい。やっぱり美少女アニメ(ぼざろが美少女アニメかどうかは置いといて)のスタッフは美少女なんですねえ(棒)

 まだ放送前の第7話の収録だったようで、ぼっちちゃんがしおしおのパーになっちゃう時に虹夏ちゃんが「ぼっちちゃん死んじゃった…」「新しいギタリスト探さないとですね…」っていうセリフに原作者はまじあき先生の「悲しみよりか血も涙もない感じで…」という適格なディレクションが!さすが原作者、血も涙もない。今週の第7話が楽しみです。

 

・来月単行本一巻が発売される魚の美少女化漫画『マグロちゃんは食べられたい!』はさしみ(指原みなとの略称)委員長の提案で女子会が行われることに。生真面目なさしみによる数十ページにわたる「女子会企画書」で当日の予定は完璧だ!

 この漫画はマグロを一匹まるごと食べたいという夢を抱く少女、みさきが釣り上げたキハダマグロが美少女になってしまい「私を食べてください!」と迫るが彼女が食べたいのはマグロであって美少女ではない。マグロちゃんと名付けられた魚はみさきの自宅に押し掛け女房として住み着き、食べて、食べないの押し問答が繰り広げられるという話だ。きららって本当に面白いですねえ。現在カジキやクロマグロも現れて魚が人間になるのを普通に受け入れている人々、どうかしてるよ!

 

・3巻終了の危機を無事乗り越えた『ななどなどなど』は早めのバレンタイン回。クレイジーサイコレズ陽キャこと高山萌さんがストーキングも辞さない意中の同級生、吉岡るるちゃんに友チョコ(のフリをした本命チョコ)を作ろうと奮闘。高山にとってるるちゃんは特別なので特別な手作りチョコを挙げたいが特別扱いしているのを知られたくないので「限りなく市販のものに見せかけて相手に悟られることなく手づくりを食べさせたい」というめんどくせえ難易度SS級のミッション発動!

 で、どうするかというとまず市販のチョコチップクッキーの包装を奇麗に開け、中身だけを取り出す(包装袋は消毒)。その袋に手作りのクッキーをつくって入れ、ヒートシーラーで奇麗に封をして吉岡さんに手渡す。あくまで市販のものをさりげなくあげただけ(実はハンドメイドのド本命)なんですよ…という風を装うために!めんどくせえよ高山!

 この完璧な作戦によってつくられたクッキーは冷蔵庫にしまわれているところを高山の兄(冴えない大学生)がちんこをかいた手で触られてしまう!

 兄貴がちんこかいた手で触った袋を愛しの吉岡さんに渡せるかい!となった高山、コンビニとスーパーに走ってクッキーを買いに走るのがすでに売り切れ。泣く泣く高山、市販を装ってさりげなく渡すという当初の予定を変更し、余っているクッキーの中身を個別の包装にして「(たくさんの人からもらうので)いつもは市販のものをみんなに配り歩いているだけだけど、今年は時間が余ったから(注・本当は徹夜した)限られた人にだけ特別につくった」として吉岡さんに渡すのでした。

 今回の高山はいつにもましてクレイジーぶりに拍車がかかっていて、完全にどうかしていた久しぶりに爆笑した

 

・十分に発達した科学はきらら4コマと区別がつかない漫画『ぬるめた』はちあき(創造主)とくるみ(被造物)の喧嘩が勃発!諍いの挙句「死ね!」と言ってしまったことで引っ込みつかなくなった二人は徹底して無視&罵倒のバトルに発展。しかし双方ともにザコメンタルなので互いのいないところで号泣。互いに謝ろうとするもよく考えたら悪いの向こうの方じゃね?と考え直して絶対謝らない、そして煽り合いに。だるいからとっとと謝れや!とさきながキレかかるの最高に笑えたわ。最終的には二人がところかまわずイチャイチャし始めて我々は何を見せられていたんだ…?

 

・月末に単行本第一巻発売の終末漫画『白魔導士はゾンビの夢を見るか?』は大学編の佳境に。ゾンビもので大学が舞台になるとロクなことがないんだけど、今回はほっこりしたアットホーム回。大学の生き残りカップルがアヤちゃんの母親、富良野教授の教え子ということが判明。

 前回レベルアップして新しい魔法を覚えたリルちゃん。「敵から見えなくなる」という魔法なのでこれを使えばゾンビに気づかれることなく進めるぞ、と思いきや持続時間が30秒しかないのだった。

 登場人物が多数になり、物語の幅がひろがった感のある本作ですが、この手の漫画で登場人物が増えるということは犠牲者が出てくるということになりがち。まんがタイムきららでその辺はどうなってくるのか、見物。

 

・安定の毎回カラー『ご注文はうさぎですか?』はリゼちゃんが怪物パンを生み出している頃、ユラさんが奴隷を誕生させていた。何が何だかわからない。

 

きららMAXのやべーやつこと『SAN値直葬!闇バイト』はこよちゃんが悪夢にうなされるようになり、バイト先のアメンパイン店長に相談したところ「世界の真実に気づいてしまったから」と立て板に水の勢いで説明され、こよちゃんの抱える問題は「このバイトを通じてのみ解決し得る」と説得させられてしまい、なんとかしてこのバイトから距離を置きたいと思っているはずのこよちゃんはたこ焼きの食いすぎでバイトを休んでいるあかりの代わりにヤバイ仕事をさせられるのだった!

 あかりちゃんの強メンタルさと比べて、こよちゃんはいつも悲惨な目に遭ってばかりなので、このピンチも切り抜けて!お願い!

 きらら及び萌え4コマ漫画界唯一(?)の暗黒系コズミックホラー漫画なので大事に扱って欲しいな~これ大好きだし。早く単行本出ないかな。

 

・前作『今日の授業は恋愛です!』2乙だった、つみきつき先生のゲスト掲載『性別不明の殺し屋さんがカワイすぎる。』はいきなりのお試し掲載の割にはいきなりのカラーなので編集部期待の一本かも。

 マジメに勤めていた(多分)会社を首にされ無職の主人公の部屋の前に居座っていたのは正体不明・性別不明、オッドアイの殺し屋、ユーリ(持ち物に名前が書いてある)「詮索するな!」といいながら自らこれまでの境遇やプライベートの情報を明かしまくり、若干ポンコツの雰囲気を漂わせる組織を抜けた殺し屋と無職25歳女の凸凹カップル漫画か!?なんともいえない空気をかもしていて、次回にも期待。

 

・ゲスト掲載の『続しまいゆ』MAX8月号に掲載された『しまいゆ』の続編で、約半年後にゲストの続きが載るって珍しいね。ゲームにハマって夜更かしの連続、ロクに風呂にも入らない自堕落な生活を続ける姉の世話を焼く妹の話で、毎回姉を無理やり風呂に入れるシーンがあるのが見どころ。今回は朝風呂に入れてでてきたらまだ午前中だったので、姉が「えらい…えらすぎる…私は何でもできてしまう…」と興奮するところ、共感してしまった…

 

 MAXは長期連載が二つも終わり、新連載がずっと休んでいたりと入れ替えの激しい時期なので、果たして新連載を勝ち取れるのか?

 

 桔香ちゃんとリリカお嬢様、コンビニあくまちゃんは予告通りの休載です。来月が待ち遠しい。

 

 

 

 

 

内容が不適切!?富良野市議会にドロップキック

 アニメ『邪神ちゃんドロップキックX』はふるさと納税を活用し1クール12話のうち4回分がふるさと納税編として製作された。その4話のうち富良野編が富良野市議会の決算審査特別委員会によって「内容が不適切」であるとして決算不認定となったのだ。

 

 

>市議会事務局によると、決算の不認定は04年度の一般会計(審議は05年)以来で17年ぶり。採決では認定と不認定が7対7の同数となり、委員長裁決で不認定となった。

>争点となったのは、アニメの制作委託料3300万円。討論で佐藤秀靖氏は「邪神ちゃんに借金があるため臓器売買を提案するなど社会通念上許されない行為が多くあり、富良野のイメージを落としかねない」と主張。一方、認定の意を示すため起立したある委員は「あくまでアニメの中の話。一部分だけを切り取って議論するのはよくない」とした。

 

 同アニメの第9話『富良野に潤むラベンダー色の瞳』はトイチならぬトジュウ(十日で10割)の闇金を借りた邪神ちゃんの借金返済が絶望的なのを知ったメデューサが「内臓、売ろ?」と臓器売買を持ち掛けるという展開があり、そのことを言ってるのだろう。そもそもこの世に存在しない架空の生命体の話で、富良野の関係者が臓器売買を持ち掛けたとかならまだしもねえ・・・富良野市議会には洒落が分からない人間がいたのかもしれない。

 

 これを受けていち早く反応した邪神ちゃん公式、なんと争点となったアニメの富良野編をYouTubeで無料配信。しかもアンケートを実施、アニメを見て富良野のイメージは上がったか?下がったか?を回答して欲しいというもの。

 

 

 ニコニコ動画でも無料配信が開始。

 

 マイナスになりかねない騒動を逆に利用する、ありえないスピードで即決というこのフットワークの軽さが邪神ちゃん公式のバーリトゥードというか場外乱闘のテクニック・・・公式が無敵すぎるんよ・・・

 今後、同様の騒動が起きた際にアニメ公式はどういう態度を取ればいいのか?という試金石になればいいと思う。

 

 ちなみに同じふるさと納税を活用した長崎・南島原市編第9話『イルカにノって大騒ぎ!ハラハラドキドキ南島原!』では警官がピストルを人に向けてぶっ放し、世界遺産・原城跡で邪神ちゃんが乱を起こそうとし、ゆりねに日本刀で真っ二つにされ、踏み絵扱いされた邪神ちゃんが素麺にされて食われるという不適切シーンしかないんだけど、特に問題にされてないんだよなあ・・・

 

 

 

 

 

マジックミラー号を守れ!商標出願の巻

 AVメーカーのソフト・オン・デマンド(SOD)が同社の人気シリーズ『マジックミラー号』の文字を商標登録出願したというニュース。

 

 

 記事内にもあるけれど、『マジックミラー号』という商標自体は約20年前に(09類、12類、41類)の3区分ですでに出願、登録されている。今回はマジックミラーのパロディ車『マジックミラーカー』が他社によって商標出願されているため、マジックミラー号を守るために同じ区分で改めて出願したのではないか…という話。

 今年はゆっくりだの、ラブライバーだの、人様の作ったモノを横からかっさらって権利を独り占めしようとする輩が多数現れたからね、防衛対策は必要なんですよ。

 マジックミラー号は未だに月2,3本はリリースされている人気シリーズ。実際のところはマジックミラー部分をそれほど活かしてないが大金かけて車作って、認知させた功績は計り知れない。安易にパクられちゃあ困るんですよ!(お前は別に困らないだろって?そりゃそうなんですけどね)

 

 

 

これでいいのか?山崎ゴジラ

 11月3日は映画『ゴジラ』(1954)が公開された日。それを記念してこの日は「ゴジラの日」なのだが、2022年のゴジラの日にはビッグニュースが配信。来年にゴジラシリーズの最新作が公開されることと、監督・脚本が発表。山崎貴だ。

 

 

 

 山崎監督がゴジラをやるというのは今年の2月にそれとなく噂が流れていた。『踊る大走査線』シリーズや『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズなどのCG製作会社ロボットが「東宝の新作映画『超大作怪獣映画 』の撮影がついに決定」として映画のエキストラ募集をしていたからだ。

 

 

 これが当時「山崎ゴジラの撮影なんじゃないか?」と言われていて、噂が的中したということですね。

 

 ゴジラの新作はともかく、監督が山崎貴という一報にガクッときた人も多いだろう。彼が邦画CG映画の進化に一石を投じてきたことに疑いはないが、面白い映画を撮っているかどうかは疑問だ。

 山崎監督は過去に『ALWAYS 続・三丁目の夕日』のオープニングにゴジラ登場シーンを入れたことで知られている。

 このゴジラに関して山崎監督はインタビューでこう答えている。

 

―― のっけからマニアックな質問ですが、あのゴジラは“どのゴジラ”をモデルにしたものですか?

山崎 あれは金子さんのゴジラ※1がベースになっています。いわゆるGMKゴジラとか、白目とか言われるヤツですね。僕が白目のゴジラが好きだったのと、怖いゴジラにしたいと思ったので。

※1金子さんのゴジラ:金子修介監督がメガホンを取った映画「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(2001年)に登場した“白目”のゴジラ。徹底して悪役として描かれた

 

―― 昭和30年代という設定を考えたら、昭和29年の“初代ゴジラ”ではないのですか?

山崎 そうなんですが、それでもちょっと初代を意識して耳をつけたりとか、いろいろしているんです。ハイブリッドなゴジラなんですよ。

 

 

 これを巡ってはゴジラファンの間で異論が起こった。『ALWAYS 続・三丁目の夕日』の舞台は1959年。この時点では初代と二作目『ゴジラの逆襲』が公開されている。だったら劇中に出てくるのは初代ゴジラ(身長55メートル)ではないのか?監督がGMKが好きだからそのゴジラを出すっていうのがねえ…それがお前のゴジラに対するこだわりなのか!?

 

 今回つくられる山崎ゴジラはエキストラ募集の際に「1945〜47年戦後の日本」とあるので、もしかして初代のリメイクってことか?じゃあ…やめとけ!!

 アスキーのインタビューに山崎監督はこうも答えている。

 

―― それにしてもなぜオープニングの大事なシーンにゴジラを出そうと?

山崎 昭和がポイントでした。昭和でなければゴジラは出せないと思っていて、以前、もし自分がゴジラを作るとしたらと考えたことがあって、それには昭和は切り離せないと考えたんです。

戦争の傷後が残っているあの時代のムードは、現代では成立しません。フィクションとしては面白いけど、現代ではあまりにも現実と乖離しすぎていて。

 

 というコメントも庵野ゴジラが現代を舞台にして成立した今では反吐が出るほど軽~い意見にしか聞こえない。今の東宝では大予算映画のエースは山崎貴だから、彼にゴジラをやらせるという東宝の選択はわかるんだけど、現時点で山崎ゴジラには不安要素しかない。山崎監督得意のCGゴジラという部門でもやはり現代(というか近未来)を舞台にした『ゴジラS.P』が新解釈で成功しているんですよ!?

 彼が昭和に拘るのは『ALWAYS』シリーズの延長で製作できるからで、ヒットした過去作のイメージをいつまでも引きずっていて(山崎監督の『ALWAYS』以降の作品は昭和が舞台のやつばかり)はっきりいって冒険心がない。どうせ何やってもボロクソに言われるんだから思い切って冒険しろといいたい。

 よいこのみんなは再来年公開予定の『ゴジラVSコング』の続編に期待しましょうね。

 

 

 

 

 

 

 

挫折感を味合わせてくれる学生運動ドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』

10月28日0時よりAmazon prime videoで配信開始となった『仮面ライダーBLACK SUN』は87年に放送された変身ヒーロー番組『仮面ライダーBLACK』のリブート作品だ。二日懸けて全10話を観た。



 現在の日本とは異なる歴史を歩んだ日本が舞台。人間とは違う姿、能力を持った‟怪人”との共存が為されてから50年。「反怪人」を掲げた運動団体が「怪人はこの国から出ていけ、彼らは反日だ」とヘイトスピーチをまき散らす。かと思えば「差別はやめろ、怪人とは共存すべきだ」と訴える人間と怪人たちのデモは衝突する。
 国連では中学生の少女、和泉葵(平澤宏々路)が流暢な英語でスピーチをし、怪人との共存、平和を訴え絶賛され、総理官邸に招かれた葵は日本国首相・堂波真一(ルー大柴)に与党から政界進出しないかとお世辞を言われる。
 しかし堂波の正体は平和を訴えながら密かに怪人を作り出し、外国に売り飛ばしている外道である。怪人は元首相だった堂波の祖父によって生み出された。第二次大戦の時代に「無敵の兵士」を作り出す人体実験によって誕生したが終戦とともに不要になり、打ち捨てられた。
 戦後十数年を経て怪人は日常生活に溶け込んでいたが高度成長期の1972年、怪人の権利を守ろうとする運動が激化し、人間と怪人らは手を組んで闘争の火が大学を中心に噴き上がる。運動団体のひとつ、ゴルゴム党は三神官と呼ばれる怪人ダロム、ビシュム、バラオムを中心に結成されていたが、三神官は時の首相と結託し、怪人の権利を認めることと引き換えに政府の軍門に屈する。安保闘争の際に運動家が獄中転向したかのように。
 そんな三神官の方針に反発する怪人ビルゲニア(三浦貴大)、と人間の学生、新城ゆかり(芋生悠)にオリバー・ジョンソン(モクタール)、そして怪人の南光太郎(中村蒼)、秋月信彦(中村倫也)らはゴルゴムを離脱、怪人らの命の源‟ヘブン”を生み出す創世王と首相の孫、真一(前田旺志郎)を攫い山中のベースを作り、革命のための組織をつくる。しかし彼らは内部抗争の末、互いを疑い、殺し合い、革命は瓦解する。ビルゲニアと信彦はダロムらに捕えられる。殺されたゆかりが信彦らから受け取った創世王後継者の証、キングストーンを手にしたジョンソンはその場を去り、光太郎は傷つきながらも逃れ、廃バスでひっそりと怪人差別を避け暮らしていた。


『仮面ライダーBLACK SUN』の世界は現実世界の学生運動や在日外国人らへの差別、ヘイトスピーチ問題といった実在の事件と『仮面ライダーBLACK』の世界観をミックスしたドラマだ。
 変身ヒーロードラマでは力無き人間が苦境に立たされても、絶対的なヒーロー、仮面ライダーが活躍し人類は侵略の魔の手から救われる。だが『仮面ライダーBLACK SUN』の世界には絶対的なヒーローが存在しない。怪人たちは銃弾を撃ち込まれれば傷つき、死に至ることもある。主人公であるBLACK SUN、南光太郎(西島秀俊)でさえ差別と闘うデモ隊を横目で見るだけで、拳すら振り上げない。ヒーローではないからだ。
 共存と平和を訴える葵の庇護者となって戦う術を教える光太郎だが、それでもこの差別はなくならないことを知っている。
このドラマが訴えるのは絶対的なヒーローが悪に下す正義の鉄槌ではない。ヒーローは差別をなくすことができないという無力感だ。

 こういった世界観は確実に現在の日本で起きている外国人排斥運動や政府が外国と戦争するために派兵できるよう法律を変えようとしている問題を背景にしている。ビルゲニアらが山中にベースをつくって内ゲバで崩壊していく様子は連合赤軍そのものだ。こういった描写をするあたりが元若松プロの白石和彌監督らしいギミックだ。
 が、そういう物語にしたために湧き上がるのは

「これって仮面ライダーブラックである必要あるの?」という疑問だ。

 これが初めから学生運動とその後の闘争の総括、政府批判といったテーマであったならば問題ないが、少なくとも仮面ライダーの名を冠した作品に視聴者の多くが期待するのは変身ヒーロードラマとしての物語だろう。
 爽快感がなく、陰鬱でカタルシスのない物語は「一体何を見せられているんだ?」と開いた口がふさがらないではないか。アマプラユーザーの多くはかつて同じ媒体で展開した『仮面ライダーアマゾンズ』のような物語を期待しただろう。『アマゾンズ』だって陰鬱でカタルシスはないし『BLACK SUN』に負けじと暴力的だ。しかし製作側はあくまで変身ヒーロードラマとしての形は崩さなかった。変身ヒーロードラマでない『BLACK SUN』にあるのは上手いとも思えない実在の事件の雑な引用とベタベタな政治批判、人物描写だ。ルー大柴演じる首相はどうみても安倍元首相で、側近に麻生太郎まんまの寺田農やグレタ・トゥーンべリまんまの葵とか、笑うところなのか。
 怪人(国民)の生き血を吸って肥え太る政治家たちはまさに今の政権与党そのものだ。それらの比喩がダメとは言わないが、もう少し上手くやってくれれば見てるこっちも乗れるのに。こういったベタな引用は『麻雀放浪記2020』なんかの時にもあったので、いつもの白石和彌節なんだけど。

 本当に描きたいテーマが差別や共存のための物語でも構わない。それを仮面ライダーBLACKと絡めるならもう少し違うやり方があったんじゃないかと思うのだ。全10話の物語は仮面ライダーBLACKである必要もないドラマを延々と見せられ、そのくせ最終エピソードの10話の冒頭では突然『仮面ライダーBLACK』のオープニングが再現され、倉田てつをの歌まで流れる!ファンに目配せしたってことなんだけど、ここまで別の話にされてるのなら、そんな引用されたってむしろ邪魔だよ!やらない方がよかったよ!

『BLACK SUN』で描かれた差別の問題は現在進行形で起きている問題なので、当然ハッピーエンドにはならない。
 ヘイトスピーチをまき散らしていたリーダーは信彦が始末するが、頭が挿げ替えられるだけで差別は続く。たったひとり、「手取り合おう」と訴える少女(新海誠の娘、新津ちせ)に葵は手を伸ばす。光太郎から継承された力で葵は怪人らや人間とともに革命グループを結成する。しかしゴルゴムの生き残りは内閣の一員に名を連ねる。闘争は終わってはいないのだ。

 西島、中村ら役者たちは皆さすがの芸達者ぶりでニチアサのヒーローものには絶対にない緊迫感のある演技を見せているのに、変身ヒーロードラマと『BLACK SUN』の物語が乖離しすぎていて勿体ない。
 現実の学生運動が空しく敗北したように『仮面ライダーBLACK SUN』はコレジャナイ!という挫折感を味わったまま幕を閉じる。そういう意味では学生運動の挫折感をこれでもか!と味合わせてくれる、真の学生運動ドラマの傑作かもしれない。視聴者の多くがそんなものは望んでいない、という点を考慮しなければの話だが。