時代を越えたメロディー ③『隣組』 | サト_fleetの港

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ブログで取り上げる話題はノンセクションです。
広く浅く、幅広いジャンルから、その時々に感じたことを “おとなの絵日記” のように綴っていきます。


シリーズ3回目の今回は、
戦前から戦中にかけて愛唱歌として人々に親しまれた『隣組』を取り上げる。
「そんな古い歌、知らないよ」
とおっしゃるあなた、
そう言わずにちょっと聴いてみてほしい。
きっと、どこかで聴いたことがあるメロディーのはず。


『隣組』
作詞:岡本一平 作曲:飯田信夫

(一) とんとんとんからり と 隣組
  格子を開ければ 顔なじみ
  廻してちょうだい 回覧板
  知らせられたり 知らせたり

(ニ) とんとんとんからり と 隣組
  あれこれ面倒 味噌醤油
  ご飯の炊き方 垣根越し
  教えられたり 教えたり

※(三番・四番省略)


『隣組』は昭和15年 (1940年) 6月に発表された国民歌謡。
当時は中国大陸での戦いが続いており、翌年に太平洋戦争 (大東亜戦争) が勃発するという戦時下で、
“隣組” とは、国家総動員体制の末端組織として町内会の中に作られた相互扶助の仕組み。
そのPRソングとして国策的に作られた『隣組』だったが、
政府の思惑とは関係なく、ラジオで放送されるや、明るくテンポのよい曲調が人々に受け入れられ、またたく間に愛唱歌として広まった。

※隣組による炊き出しの様子。
(Wikipediaより)

※警防団と隣組の防空演習。
(『NHKアーカイブス』より)


作詞の岡本一平は、北海道出身の漫画家・文筆家で、
「芸術は爆発だ」で有名な芸術家 岡本太郎の父親。
漫画に解説文を添えた独自のスタイルの漫画 (イラスト) が新聞や雑誌に掲載されて人気を博し、一時代を築いた。
作曲の飯田信夫は、大阪市出身の作曲家で『太平洋行進曲』などの軍歌や数々の映画音楽の作曲を手がけたのをはじめ、
福岡大学や石川県立小松高校の校歌など多くの校歌も作曲している。


ちなみに、歌詞にある “とんとんとんからり” とは、
隣組の “と” に、格子戸を開ける “カラリ” という擬音を合わせた一種の囃子詞 (はやしことば) であろう。
このキャッチーな歌詞とメロディーが親しまれ、隣組制度のなくなった戦後も『隣組』はよく歌われた。
また、その替歌が最近でもテレビ番組のテーマ曲やCMソングとして使用されている。
有名なところでは、1977年から1998年にかけてフジテレビ系で放送されザ・ドリフターズのバラエティー (コント) 番組『ドリフ大爆笑』のオープニングに、
“とんとんとんからりと” の部分を “ド・ド・ドリフの” に替えて使われた。
(このテーマが使われたのは1978年1月の放送から)

吉高由里子さんが出演したサントリーのトリスハイボールのCMは、
曲調をマーチ調にした『ドリフ大爆笑』のアレンジを踏襲した上で、歌い出しを “ト・ト・トリスの” にして使用していた。
これなど、『隣組』の替歌の『ドリフ大爆笑』のテーマのまた替歌といえるかもしれない。
後に、連続テレビ小説『花子とアン』(2014年度上期) では、
戦時中のシーンで、吉高さん演じる花子の子供たちが、ラジオから流れる『隣組』を聴いているシーンが出てきた。
これなどは、NHK制作陣のちょっとした遊び心だと思う。

というわけで、
『ドリフ大爆笑』のオリジナルテーマ曲だと思っていた方も多いかもしれない『隣組』のメロディー。
時代を越え、世代を越えて、今も人々の心に残っているのだ。







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