ホリデー騎兵隊 | サト_fleetの港

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ブログで取り上げる話題はノンセクションです。
広く浅く、幅広いジャンルから、その時々に感じたことを “おとなの絵日記” のように綴っていきます。

“HOT HOLIDAYS!” とは、
JRA(日本中央競馬会)のキャッチコピーだが、
人気のレースのある休日ともなれば、
競馬場は、文字通り熱気に包まれる。




16世紀のイギリス発祥といわれる競馬は、
いまや、世界に広がった。

人はなぜ、ここまで馬に魅せられるのだろうか?



お気に入りの馬の毛色に似た色のマフラーをまとう女性。

さながら、
西部開拓時代の騎兵隊を思わせる。



当時の騎兵隊の兵科色は黄色。
そのため、
騎兵隊のつけているスカーフは黄色だった。



このことから、
騎兵隊に愛しい人がいる婦人が、
黄色いリボンを身につけて、その無事を祈ることが流行ったという。

ジョン・ウェイン主演の映画『黄色いリボン』(日本公開 1951年)の中にも、それは描かれている。



この映画の主題歌 
“She Wore a Yellow Ribbon”(黄色いリボン)は、日本では、ミッチー・ミラー合唱団の歌っている曲が有名だが、
映画で使われたジョン・ハート楽団のオリジナルはこれだ。

“She Wore a Yellow Ribbon”

Round her neck she wore a yellow ribbon
She wore it in the winter and the marry month of May
when I asked her why the yellow ribbon?
She said it's for my lover who is in the Cavalry
Cavalry, Cavalry
She said it's for my lover who is in the Cavalry
Cavalry, Cavalry
She said it's for my lover in the U.S Cavalry!

【日本語訳】
あの娘の首には黄色いリボン
冬と5月に身につける
なんのためかと聞いたなら
騎兵隊の彼氏のためだとさ
騎兵隊、騎兵隊
騎兵隊の彼氏のためだとさ
騎兵隊、騎兵隊
合衆国騎兵隊の彼氏のためだとさ



これに対して
ミッチー・ミラー合唱団の “黄色いリボン” は、
オリジナルの歌詞の “in the Cavalry” を
“far away” に変えるなど、歌詞を一部変更して軍歌色を消し、ロマンチックな流行歌に仕立てている。

しかし私は、
いかにも騎兵隊の歌らしい歌詞と、やや荒削りな感じの歌唱のオリジナル(ジョン・ハート楽団)の歌の方が断然好きだ。


映画で使われている 
“She Wore a Yellow Ribbon” には、間奏のように途中から別のメロディーが挿入されているが、
これも、騎兵隊員が愛唱歌として歌っていた “The Girl I Left Behind Me”(直訳すると “後方に残してきた彼女”)という曲だ。



この曲は、騎兵隊が出てくる西部劇でよく流れているので、
西部劇ファンの方なら、少なからず耳にしたことがあるのではないだろうか。

実は、
この “The Girl I Left Behind Me” と、
“She Wore a Yellow Ribbon” は、ともにアイルランドの古謡だった。

それがなぜ、アメリカの騎兵隊で盛んに歌われるようになったか定説はないが、
アイルランド出身の兵士が歌っていたものがイギリス軍全体に広まり、
それが、米英戦争(1812-1815年)などでアメリカ軍の捕虜になったイギリス兵が歌っていたのを聞いたアメリカ兵が、
自分たちの生活に合わせた替え歌にして歌ったのではないかと推測されている。

両方とも、前線に赴いた兵士と、後方に残された恋人の想いを歌っている。



西部開拓時代、開拓民を守るため、
馬という機動力のみで広大なエリアのパトロールにあたった騎兵隊。

ともに戦ってきた愛馬と同じように、
皆で歌う愛唱歌の存在は、荒みがちな隊員の心を癒したのではないだろうか。

“She Wore a Yellow Ribbon” は、
スタンダードナンバー化して、今でもメロディーを聴く機会は多い。
“The Girl I Left Behind Me” も、イギリスでは フォークダンスの伴奏曲として使用され続けているし、
アメリカでも、カントリー&ウエスタンの名曲として歌い継がれている。


人と馬、人と歌、
楽しい時も、苦しい時も、よき “相棒” として共存してきた。

長い年月を経ても、
人のDNAに刻み込まれたその記憶は、
消えることはない。