Halloween!Commando☆2021 -6ページ目


Halloween!Commando☆-1



魔法だ。

「この靴をぴったりはける者を探している。試してみるものはおるか?」

そのサイズはまさにアタシにぴったりだったので、ぜひ履かせていただきたいと申し出た。するとほどなく箱一杯の靴とドレス、異質に思えたがめっぽううれしいキャンドルセットがご使者によって届けられた。


それらはアタシが手にしたことも無いような、そのどれかを一足買うのにも多大な勇気がいるような高価な品々。リトルシスターともども、この降って湧いたビッグプレゼントに狂喜乱舞になるわいさ。

これをわれらに賜った感激と感謝をご使者のかたに託して、その夜は興奮でねむれなかった。どの靴をはいて、何処へ行こうなんていう悩みがあること自体知らなかったが、そんな煩悩の種類もあったのか。

翌日、トイレットペーパーを買いに出る用事があったので、さっそく、とにかくはいてみようと中でもお気に入りの靴を選んで出かけてみた。

このささやかな買い物に靴に悩んでみるなんて!それも履くものがないんじゃなく、選ぶのに苦労してみるなんてなんて新しい分野だろう!


その眠り続けてきた新しい靴は、この外出で時間を取り戻してしまった。

いっきに塵にかえっていくさまを呆然と見送った。

真新しい姿を留めていたのに・・・。

ああ、おとぎ話のお姫様のよう。時間を取り戻すのがどういうことかの残酷よ。

それでもまだまだ靴はたくさんあるのだ。飽食だ。酒池肉林だ!?

ご使者のかたも言っておられたうちの出来事ではあった。

永い間眠っていた靴たちだから風化する可能性は十分にあると。

惜しみつつ、止められない風化に立ち向かう心の準備と、このすばらしい贈り物をどこに保存していくかでまた考えねばならなかった。器は決まっているのだ。入れるのであれば何かを出さねば納まらない。


それは30日の真夜中の事。

再びご使者が現れて、前回の3倍とも4倍ともわからない大量の贈り物を届けてくださったのだっ!「要らぬものは捨てるがよい。」靴・靴・靴、そして衣装に装飾品・・・!魔法でしょ、やっぱりこれは!捨てていいような品じゃない。

ちらりと、悪魔の影がよぎった気がした。アタシは悪魔に強欲振りを試されているのか?物欲の満たされた嬉しい中で死ねるならそれは本望であろう、とでもいわれているのか!?この幸運は、まるまるラッキーで片付くものなのか?

それらに眼を通すだけで、かるく夜が明けた。

部屋一杯の靴の箱やら衣装やらで、からだを横たえる場所も無い。

収納場所を、作らなくては。そして31日、とっくにハロウィン当日になっているというのに祭りの準備だの実感どころか、こともあろうにこのアタシが、押入れの大手入れでのっぴきならない状態に陥ってしまったのだ!

最後に大手入れをしたのは何年前だったか。衣替えもついでに、ますます部屋はカオスと化した。いや、ほんと、にゃあたち大興奮なんてはんぱねぇ・・・。


どれだけ格闘した事か。何袋のゴミ袋をいっぱいにしたことか・・・。

やっと外見上、いつもの部屋にもどった。部屋は相変わらず雑然としているが、押入れの中は整然だぜ!

片付け終って最後に残った茶色の小箱はキャンドルセット。


ああ、これは。


最初見たとき異和感と共に意味深に思えたのは、今のこの状況を暗示していたからなのかな。それはかわいい、りんごのセット。

水に浮かべて灯火をゆらす手の中に入るりんごが4つと、びんづめのりんごの香るキャンドルに、りんごの絵のついた紙ナプキン。かわいいだけで、こころ惹かれていたんじゃなかったのかな。

「りんご」で「ハロウィン・・・カボチャ・・・カボチャの馬車」からの「プレゼント」じゃ、キーワード的にズバリ魔女のお仕事じゃないか。出来すぎってもんじゃないか?


アタシはすっかり心奪われ、ぶっ続けでの一昼夜の掃除によって魂も抜かれ、今けっこうな放心状態でハロウィンナイトを迎えようとしているんだよ。それでもまだ部屋の地表は手つかずだけども。

やっぱりすごい手際と手並み。

ここに現れた魔女は、しっかりアタシを踊らせて、タマシイの欠片のかわりのプレゼントを置いてったんだ。



Halloween!Commando☆-2



せめて。何も出来なかったに等しいハロウィーンパーティーだけれど、そんな魔法な世界があったことを書き留めておこう。

そして牧場を、一面のカボチャ畑に変身させよう。

そのうちに、カボチャパイが出現するかもしれないし、

そしたらこのりんごのキャンドルを水に浮かべて 葡萄酒で乾杯しよう。


どうだろうかな?あの靴たちのどれだけ分が風化の魔法にかかってるのかな?

どきどきしながら、これからは、片っ端からはいていく。





               Happy Halloween!! 









黒い黒いチョコレート


ちょこれーと?


苦くて甘い
舌に乗せるととろりと溶けてなくなって、いつまでもきえない


チョコレート?
食べたい!!


きつねいろで香ばしい匂いのクッキーやビスケット


くっきー?


さくさく噛むとほろほろに砕けて
ずっと舌に残るバターの味がたまらなくて
消えてしまうのがさびしくてもう一枚…ってキリがない


クッキー!食べたい!


はちみつ色の透きとおったきれいなキャンディー


きゃんでぃー?


甘い甘い、レインドロップみたいな
小さなかけらなのに信じられないくらいねっとり甘い


キャンディー、食べたい!!


薄い羽みたいなパイが幾重にも重なりあって
美味しい中身がびっしり詰まっている


ぱい?


りんごのパイ、すぐりのパイ、くるみのパイ
かぼちゃのパイ…


りんごのパイ、食べたい!!


紅いあかいイチゴのケーキ


けーき?


白いクリームがふわふわで甘くて
イチゴの冷たいじゅわじゅわのすっぱさときたら最高にベストマッチ


ケーキ?
たべたいたべたいたべたい!!


どれもみんな食べたい!はやく貰いに行こう!!



君はそんなふうに急かすけれど、

まだ日が高いから、もう少しがまんしなくてはいけない


ちゃんと衣装も用意して
黒い大きな帽子とか、長いマント
それとも白いひらひらした大きな布?
とにかくちゃんと隠れられるようなそんなものを身につけて


お菓子をもらう時には特に気をつけなくてはならない
布に隠した本性をチラリとでもみせちゃいけない


今夜はどの家のドアから叩こうか?

君はお菓子に夢中でそんなことにはちっとも興味がなさそうだけれど
お菓子をくれない家にはイタズラできるって
それが本当の本当の目的
お仲間が欲しいって、淋しい淋しいと彷徨うだけの日々には
一年に一度だけの、この夜をばかり待ち望む

君にもそのうちわかると思うけれど―――



そろそろ日が暮れる
あの大きな明るい窓の家を目指そう
あそこにはやさしそうな男の人と女の人と、小さな子供たちが住んでいる





Halloween!Commando☆



Trick or Treat! Trick or Treat!


玄関が開いて、女の人が現れた。

「来たわね、モンスター君たち。」

「お菓子くれなきゃいたずらするぞ」 僕たちは、脅しの決めポーズで宣言した。

女の人の背後では、パーティーでもしているようなたくさんの気配があった。


「ねぇ、モンスター君たち。お菓子はすきなだけあげるわ。だからちょっと寄っていってくれないかしら?うちのこどもたちね、まだモンスターになれなくておうちにいるんだけど、先輩モンスターにお手本をみせてほしいのよ^^どうかしら?」

そんな申し出ははじめてだから僕は困ってしまったが、答えるより先に僕の小さいおばけが室内に突入して行ってしまった。

「いいにおいっ!

ケーキッ!チョコレート!クッキー!りんごパイあるっ?食べたいっ!」

「さあどうぞ、なんでも食べてね、あなたも入って。

にぎやかになってきてうれしいわ。」


家は外観とは違い、ハロウィーンの飾りつけと、奥の部屋では電気も消した 完全なる暗闇の中でのいくつかのジャック・オー・ランタンの灯りのみ。

何という曲なのか、レクイエム風な楽曲が流れている。

部屋の中にはあちらこちらにいろんな格好をしたモンスターたちがいるようで、ランタンをあびてお菓子をほおばる影がうごめいている。

それにあわせるように こそこそ話しやちいさな笑い声がさんざめく。

「びっくりした?ムード満点でしょ?怖いことないわよねモンスター君、さあ、どうぞ。」


きらびやかに夢のようなお菓子が並んでいる。ああ、想像したよりもっとたくさんの、名前も知らない甘い、あまい、やさしいスウィーツ・・・!ぼくの小さいおばけはつぎつぎとお菓子をほおばっては感激で舞い上がってしまいそうな勢い。

長居はできない。見破られては大変だ。


それにしても・・・このお菓子っ!体中に力がみなぎるような、大きな声で笑いたくなるような、ジャンプで月をも越えてしまいそうな、なんておいしい食べ物なのかっ!

こんなのは今まで食べたことが無い。ぼくのおばけもすぐに夢中になって、その皿は二人で食べつくしてしまったし、その横のこれもまた格別。

はっと気づくと、こどもが二人、新しいお皿をもってぼくたちに差し出していた。

「これもおいしいよ。」「ありがとう。このうちの子?」二人ともにっこりうなずいた。

どきどきしながら、いっしょにお菓子をほうばった。袖口が透明だなんてばれないよね?食べ方 おかしくなんかないよね?食べながらまわりを見回すと、数人のモンスターたちがおもしろそうにこっちを見ていた。壁際のソファーには、おとうさんだろう、仮装をした男の人が楽しげにくつろいでいる。


「どう?気に入ってもらえたかしら?このお料理やこのお菓子たちは?」

ああ、僕はほんとうにびっくりしたのだ!こんなにおいしいものは今まで一度も食べたことが無い。底なしにおいしい、ほんとうに驚きだ!

そんなことを女の人にまくしたててしまった。僕としたことが、興奮しているみたいだ。

女の人が満足そうにほほえんで、言った。


「うれしいわ。ようこそ、モンスターたち。今夜はみんなで楽しみましょう。

わたしたちのハロウィーンを。」


そして言った彼女のせりふに、僕は、耳を疑った。

僕たちが特においしく食べていたお菓子の秘密。

この家でお菓子を食べているモンスターに化けた子供たちのたましいを、ちょっとずつイタダイテ、月下に咲く花の肉厚な実と 芳香がぎゅっと詰まった大きなつぼみをいっきに攪拌し、小麦粉に混ぜる。


「このお菓子に目がなくなっちゃうのが、ホンモノのあかしよ^^

月の雫やこどものタマシイは好き?」


ぼくのちいさいおばけは、デビュー最初からついているな。

この先のハロウィーンの晩は、ここにみんなで集うのだ。

人の子の化けたモンスターにもおいしいお菓子を食べさせて、そのかわりにちょっとだけ、いのちの欠片をもらっておく。


みんなしあわせ。そしてだれしもがおいしいお菓子にありつける。

やってくる子供たちを待っていればいい、一石二鳥のおいしいはなし。

もうさみしいことはない。

こんなに仲間が集うなんて。それもこんな画期的な企画で人間まで交えて!


やっぱり魔女ってすごいんだ。

お菓子でひとを操るんだから!



入れ替わり立ち代り、現れてはお菓子を食べて立ち去る子供たちを見送りながら、僕たちも たらふく食べた。












Halloween!Commando☆















風に交ざって そうと知らせる。

鼻孔から 肌から 記憶から 金色の粒子を感じ取る。



なんて甘美なその香り・・・。

大きく息をすいこんで イメージを確かめる。



わたしは目を閉じ 幾星霜の空をこえる。



懐かしい顔が そこにある。








Halloween!Commando☆-scene3



絡み合ったまま根元を切られ、放置されるがままに枯れていった。

それでもその蔓植物は、命尽きてなお一層の強情で、そのフェンスから剥がれ落ちることはなかった。

わたしは恐ろしさをおぼえたものだ。

死んでいるのに離れない、強烈な硬直に。


あのドレス・・・。

私が失ったあの黒いドレスはどこへいったのか。


秋晴れの青い空の下では不似合いなイメージが、わたしの頭の中を占めていた。

いつ、どのように無くしたのか。あれを着ていたのは誰だったか。

この執着が何なのか・・・。透き通る涼風が、そんな思考をさらっていった。

わたしは蔓の除去に集中した。




蔓はどこまでも細くきつく絡みつき、ぽろぽろとその一部が崩れはしても
細く固く昇り続ける先はどこまでも続いている。
どれだけ時間が経ったのか、忘れてしまうくらい。





もう先ほどまでの青空は陰りはじめ、

西の空がゆっくりと薔薇色を帯びる。
心地よかったはずの涼風は指先を凍えさせ、

それは少しずつ少しずつ全身へと広がりはじめる。
もうそろそろ夜が落ちてくる。


それはあっけないほど突然で、

明るい光は引き止める暇もないほど唐突に去る。
ああ、夜が来た。
そう思った瞬間ずっと繰り返し繰り返し辿り続けた疑問の答えに行き当たった。







あれはワタシだ。
でもあの瞬間まで、ドレスは純白だった。
誰もが祝福の言葉と笑顔で迎えてくれるはずのワタシの白いドレス。
けれどその朝、何もかもがワタシの腕から奪い取られ

ドレスはゆっくりと灰色に変わっていく。






この頑強な執着はワタシそのもの。
取り戻せるはずもないのに諦められなくて、

しがみついて、ドレスを黒く黒く染めてゆく。
夜の闇のように深い色に。



執着はこうしてまだ死に絶えない。
忘れてなどいない。




―――けれど




もう頃合だ。




どれだけ屍骸のまま絡みつき、

しがみついていたとしても取り戻せるものはなく、

再生もないということにようやく気づけたのだから。






夜の柔らかい闇がじわじわとしみこむ。
この闇色のドレスを纏い、

私は今度こそやさしい死の腕に抱かれることができるだろう。
とんでもなく長いこと待たせ続けてしまったけれど、

けして裏切ることのない唯一無二の存在の元へと。










うっそりと暗いのに明るい、それは真夏の陽射しの中こそりと作られたように秘密めいた匂いのする場所。
ゆっくりと手招きしている影はまるで物の怪のよう。
でもそれが何かは知っているから、その場所まで向かう足取りは軽い。


明日またと、そんな言葉を耳にした瞬間から待ち望んでいた。
細い葉をもつ常緑の木々が目の届く範囲全てを埋め尽くしている森を歩けば、かさかさと足は枯れた落葉を踏み乾いた音を立てる。ふわふわとしていて固い地面を感じないほど降り積もった枯葉は踏みしめるたび淡い香りが鼻をつく。糸杉のような深い森の香りは吸い込むたび頭の中までを浄化していくようだと思った。
もう人の声も車の音も聞えない。
それほど遠くまできたはずはないのに誰もいなくなってしまったかのような静寂が続いて心細くなった頃、手招きするその姿がみえた。
わくわくと早くなる足に急き立てられながらそこへ向かう。
針葉樹の葉の隙間から漏れる日差しはちらちらと明るく時に薄暗く、その姿がある場所ばかり木の下闇はいっそう濃い。
緑の吐き出す酸素が重いほど濃密で、少し上がりかけた胸の鼓動は宥められるどころか窮屈なほどだ。


木の下闇はまるで結界のように張り巡らされ、入ることは叶わないかに思えたがそれはあっさり一跨ぎに受け入れていまや明るい闇を共有することになる。
闇の中はひときは木々の匂いが濃い。
存在を忘れまるで同化していくのではと思えるほどそこは物言わぬ木々だけの世界で、ここへ急いでいた理由すら忘れてしまいそうになるけれどこの空間を所有しているようなもうひとつの姿はすぐ目の前にあった。
忘れてなどいません、なんて心の中で囁くけれど声はひとつも零れてこなくて。
いっそこの木の下闇に取り込まれてその存在を取り巻くものになってしまえたらとぼんやり思った。




Halloween!Commando☆-2-1



ちょっとまえから様子が変だとは思っていたのだ。

どこか夢見心地で、焦点の定まらないうっとりとした目を宙に漂わせては薄く笑う。

おつむ、少し弱いのか?と思いきや、頭脳的にはすこぶる優秀ときているから、紙一重の類なんだろう。あまり親しいとはいえないクラスメイトだが、おれの席から窓を眺めるとちょうどそのライン上で、これまたぼんやり外を見ているこいつに目が行く。

なんてことはないんだが、なんとなく気になる存在ではあった。


それが。今、目の前をふらふら歩いていたあいつが、いきなり消えたのだ。

いや、変だったから。人目を避けるように森に入って行く様子がとても不自然に思えたので、つい後を追ってきてしまったのだ。

緑陰の濃い場所を選るように見え隠れするその姿を、気がつかれないように追いかけるのも一苦労だったのに、いきなりパッと、かき消えてしまった。

その瞬間を、おれは見た。落とし穴は、そこにはないのだ。

おれは一瞬金縛り状態だったけどそんなことをいっている場合じゃない。

あいつが消えた場所まで走った。

そして、落ちた・・・。


そこは胸がつかえるような強烈な木々や落葉、根っこや土などがむせかえる発酵臭をたちのぼらせており、何か幼虫のねぐらのようだった。

どこかにぶつかってやっと転落が終ったとき、目の前の薄暗がりに、あいつがいた。あいつが、なにか黒く大きいものに抱きかかえられ、目を閉じていた。

敵意を秘めた暗黒の瞳が、おれを咎めた。

震えが止まらない。これは邪悪だ!

そのままゆっくりと、あいつを抱いたまま薄れて行く。

連れて行かれてしまうっ!

おれはしゃにむにつかみかかっていた。けれど大きな影に弾き飛ばされ、根っこのようなものに体の自由を奪われ、嗄れた声であいつを呼び続けることしか出来なかった。せめて、目を開けて、気がついてくれっ!

だれか、あいつを助けてくれっ!!

白い閃光が走ったような気がした。





Halloween!Commando☆-2-2




遠くで秋祭りの灯がゆれている。

十の昔に日は落ちて、あたりは暗闇につつまれていた。

どうして何事もなかった風にここにいるのか、とにかく二人とも落ち葉の上で湿気ていた。 「これ、きみの?」

「あ、おれのお守りだ。ひでぇ、ぼろぼろだ。」「・・・ぼくの手に巻きついてた。」「!?」

あれは何だったのか聞きたかったが、とても淋しそうな顔をしていたので、いらぬことを言ってしまった。

「連れて行かれなくてよかったよ。ていうか、おれは邪魔したわけだから怒ってるかも知れないけどさ。」

あいつは不思議そうにおれの顔を眺め、肯定とも否定ともわからない「うん。」を言った。

「変な体験しちゃったぜ。くわばらくわばら。せっかくだから、祭りを流していかないか? りんご飴買おうぜ。」

あいつがにっこり笑った。





Halloween!Commando☆-2-3













Halloween!Commando☆-x1




おかしいだろうっあせる



このオレ様が、こんなカボチャたちといっしょになって

収穫されているなんてのはっっメラメラ叫び


落とすなっ!ころがすなっっ!!

切るなっっっ!!!こんちくちょう~~~っっっ爆弾





Halloween!Commando☆-scene1-1




はじめてそれを見つけたのは子供の頃だ。
まだ親も友達も村の人々もまわりにはたくさんの人間が溢れていて、明るくて騒がしい毎日があたりまえにいつまでも続くのものだとそれほどの意識もせず暮らしていた頃。
村の外れ、あまり訪れる者もない墓地の向こう側、朽ちかけた屋敷があることにはそのずっと前から気づいていた。


その日は誰の姿もなく一人きりで、退屈にまかせぶらぶらと散歩みたいにその屋敷に近づいたのだった。
どこからみてもひとけのないお化け屋敷みたいな外観なのに不思議と怖くはなかった。

秋の初め、咲き始めたコスモスの花が屋敷を覆い隠すほど育っているせいか、そこはなんだか温かい場所に見えたのかもしれない。
西日はまだ高い。一人きりでもだから平気だった。
ゆっくり朽ちたドアの隙間から中をうかがうとやはり天井もあちこち朽ちているせいか、案外隙間から差し込む光が明るく室内をみせている。人の気配も化け物の気配も感じられない。
奇妙なほど明るい。
だから勇気づけられてそのまま隙間から中にそっと侵入した。


床もひどく朽ちている。
それでも足音を立てぬようそっと歩けば、子供の体重くらいは支えてくれるようでひっそりとした静寂はそのまま。広い美しかっただろう玄関ホールからぐるりと回廊が奥へと伸び、大きな階段が二階へ続く。大きな屋敷だ。
多分貴族の館だったのだろう、重そうな甲冑や銅像の残骸がいくつもひっそり主のことを語るでもなく眠っている。まだ朽ちはてていない暗い壁にもいくつもの肖像画がずっと回廊の向こう側までかけられているようだ。
暗く薄黒く、その中には判別のつかないものがほとんどでかすかにみえるものもぼろぼろに虫食いだらけだったけれど、色彩の残るのはそんな古い絵ばかりだったのでじっくりひとつひとつ眺めてみた。
この館の昔からの住人達の絵なのだろうか、どれも古い昔風の衣装を纏ってひっそり黙り込んでいる。
お姫さまみたいなドレスは子供の目にもまだ綺麗で、白いご婦人の顔はかすかにほほえんでいるよう。
恰幅の良い紳士も幾人もいた。


そんな印象的な絵を次々と見て行くと廊下のつきあたりにひとつだけ、色のない絵がみえた。
その絵の中はほとんど黒づくめでまるで色彩を否定しているようにモノクロームの世界が広がる。今までみてきた絵とはどれとも似ていない人物がそこにいた。
そんな白と黒の世界に生きているというのに絵の中の青年は圧倒されるほど印象的で、みつめたら視線を外すことがてきなかった。
どうしてかはわからなかったけれど。
だからじっとその場に佇んだまま、ふいに落ち始めた夕闇に驚いてそこを逃げ出すのはもうかなり長い時間をその絵の前で過ごした後だった。
夜はふいに世界を変える。
慌ててそこを逃げ出した。



Halloween!Commando☆-scene1-2



それから何度もその絵を見に行った。
こっそりと誰にも気づかれないようにして何度も何度も。
理由なんてわからなっかったけれど、どうしてもそうせずにはいられなかった。
けれどそんな密やかな時間も子供時代がそろそろ終わるという頃あっさり終止符を打った。もう飽きたからとか、違う場所へ移ったからとかそんな理由ではなくこの村まるごとの突然時間が止まったからだった。


首都で起きた大きな戦はこんな小さな村など一瞬に廃墟に変える。
もう生きているのはひっそりと地に生きる者たちばかり。鳥すら通わない。
意識を無くしたのは頭上にぴかりと光る大きな火をみた瞬間。
死んだことさえ気づかなかった。
それなのに眠りから覚めたようにふと意識を取り戻した時、それがいったいどんな意味をもつかとか自分が何者なのかとかすらわからなかった。


焼け野原の地に肉の無い身体。
昼の光のなかでは眠ったように動けなくて、月の光に眼を覚ますそんな存在。
同じものはひとつもいなくて、ただ虫が鳴いていた。
それからずっと時は止まったままだったのに、彷徨い歩く闇の眼に墓場と崩れかけた廃墟がぽつんと入ってきて、そこであの絵に再会した瞬間すべてわかった。過去も今もこれから先も。


痛くて淋しくて消えてしまいたかった。
泣き叫びかけだしたかった。
けれど、願いのひとつも叶えられることはない。
幾日も幾日も永遠に哀しみは続くのだと。
絶望しか仲間がいないとそう思っていたのに。

昔のようにただあの絵を眺めるだけで、癒しようのない痛みが和らいでゆくことを続く暗い夜の中で知った。


それからずっと神さまの国に入れないこの身と、やはり神さまに見放されたように取り残されたあの絵の青年と。
暗く温かい闇の中で言葉を交わすこともなくひっそりとただ見つめあうのだ。
どちらかが朽ち果てるその瞬間まで。








Halloween!Commando☆-0




今晩は十五夜でございます。

そんな本日から、はじめたいと思いますよ満月

ひとつのおはなしを、二人で前編後編リレーしまして先の読めない展開にしていきたいと思っております^^

どうなることかわかりませぬが、ま、ま、ぬる~く、おつきあいくださいまし★


飛び入り参加、歓迎いたしますよ^^


では。よろしく!週末更新をめざしますよ^^