Halloween!Commando☆2021 -5ページ目






薄暗い照明と喧騒


話し声すら聞き取れないほどのボリュウムで流れる音楽に身を任せる男と女
ただ強いアルコールの力を借りて今夜一夜限りのあったかい腕を確保しようと躍起になっている


阿呆らしいなんて思って覚めた眼で眺めていたって結局はこっちも同様で
淋しい夜をどうやって埋めようかあの頃は考えてばかりいた


朝になれば虚しいだけだなんて知っているのに
それ以上に独り寝のベッドは寒くて
誰もいない夜は明かりすら消すこともできず朝の光の中ようやく眠りにつく
そんなことを繰り返していた




今夜も淡い照明の下
きついアルコールと煙草の煙に巻かれて
ぼんやりと次に熱くしてくれるものを探してはいるけれど

もう一人のベッドは怖くない


見捨てることなく差し伸べられる手がある
同じように傷ついて苦しんでいる同胞がいる
薄闇の中、傷を舐めあうだけだってかまわない




生まれつき光のあたる場所では生きられない

そんな存在もあるのだと

いくつもいくつも諦めては悟った

そんな奴らはけして

この目の前から消えたりはしないから










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Halloween!Commando☆




目の端に、ひらひらと動く白くて長いものが見えたので

おれは自転車の速度をゆるめ なんとなくそちらを見た。



けっこうな襤褸屋敷の二階の窓が開け放たれていて

それはそのなかでゆらゆらと踊っていた。


なんだろう、不自然さに身の毛がよだつ。

長すぎる。白すぎる。高すぎる。動きの流れが波打ちすぎる。


太陽輝く日曜日のお昼過ぎ、コンビニに昼飯を買い出しに行った帰り道。

ようやく暑くなくなったと思ったらのいきなりのこの寒さに季節感がどうかしていた。


例年とは違う風景だが、今日がハロウィーンだということを

突然に思い出した。













あっけにとられるほどよく喋るのは昔からだったけれど

大人になって

だんだんと頭の中できっちりと考え出された会話を続けられると時々腹立たしかった


迷いも打算もなくただ馬鹿みたいに笑い転げて
怒って喧嘩して怒鳴りあってそれでも楽しかっただけの幼い日


そんな頃から何があろうとけして逸らされない強い視線はそのまま
よくまわる頭の中もその舌先も多分
仲間のことばかりに使われることが多いから余計




追いつけないその男の影を自分はいつも追いかけながら一足後ろを生きている


ちっとも不満じゃないけれど悔しくないといったら嘘になる



自分とは正反対なそいつ



無神経な無遠慮な
そんな立ち位置でこっそりと全てを支えているなんて
守られて在るのだなんてことに気づいているから












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ライトに映える色が好きだといったら笑われた


みどりやきいろやオレンジ
とにかく光を反射して輝く色がどうしても手放せない


まるで習性みたいにいつも身につけるものがそんな色の洪水にのまれていったのはいったいいつからだったか
そんなことすら覚えてなんかいない


あきれたようにみつめる眼はけれど優しいままで
止めろなんて言われたことすらなかったからよけいに
ずっとずっとエスカレートしていった気がする


闇に沈む墨色の上着に袖を通すのも嫌いじゃなかったけれど
でも弱いこの自分はきっとその色を纏ったままでは飲まれてしまうから



闇はあたたかくて居心地がよくて


どこまでもどこまでもただ沈み込むことだけを許してしまうから




光を留める色をいつだって手放せないでいる











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Halloween!Commando☆


 



この街の本当の名前がそうなんじゃないのだが、この10月という季節にはここに世界中から観光客がやってくる。

「幸福の街」それが通称。


古めかしくて崩れかかったような街だけど、それぞれの家はそれなりの手入れと伝統的な儀式をおこたらない。



僕たちは、そこの観光客のお世話係をやっている。





街を飛び交い専用のチャンネルで交感しあって要回収の人間のもとへ向かうのだ。

何を集めにいくのかって?

それこそがこの街の通称にかかわる観光名物。




あなたのなかの

どうしようもなく残酷な

それが自分にあるなんて ほとほと悲しくなるような

汚い深い真っ黒な気持ちを

丸ごと全部回収いたします。




クログロを回収し終わった人間は、とても穏やかな顔をする。

眉間のしわは消え 引き結んでいた口元もほっこりとゆるむ。

わだかまっていた憂さも晴れて休暇を楽しげにすごしていくのだ。


観光のメインエベントは

仮装をしてのハロウィーンパーティーだ。

日頃の自分を忘れ、おおいに食べて飲んで笑って騒いで端目をはずして。




そして・・・。





僕たちの楽しみといえば、回収したごちそうをつまみに、夜の国のなかまたちと大饗宴を繰り広げることなのだ。




・・・ね?


どちらにとっても素敵な街でしょう?




これが「幸福の街」。

よろしかったらあなたもどうぞおこしください。

僕たちお世話係が

あなたのもとに飛んでいきます♪





ふふふふふふふ・・・^^

一石二鳥、だね^^















闇を切り裂くみたいに蹴りをひとつ


そこから滑らからにゆっくりと動きだす
次のステップへと続けてゆくための準備運動なのか?
けれど実は何ひとつ考えているわけじゃない
ただ体が覚えた一連の動作は無意識に無造作にだらだらと続けられる


けれど汗の光る僧帽筋の動きは滑らかで
傍でみているものには美しいと思わせられるから
その男の頭の中身がとても軽いとか、そんなことまではわかりはしないし
なんの問題もないのだった


しかもここにいるのはそんな輩ばかりで
さっきからずっと的当てばかりしているもうひとりだって
相当な軽い発言を繰り返しては顰蹙をかい続けてばかりいる
もっともそれはわざと寡黙な相手を挑発しているのだと誰の目にも気づけるほどのベタな態度で
普段から彼らはとても仲が良いと知っていなくても充分
第三者としては阿呆らしいとしか思えないのだった



薄暗いホールは真昼だというのに海の底にいるみたいだ
煙草の煙が白くゆらゆらと揺らめきゆっくり沈み込んでゆくマリンスノー

暗い照明に鈍く光るグラスのきらめきは
きっと水底から見上げる太陽の光のかけらに似ているんだろう
















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Halloween!Commando☆


ら~らららら~~~♪

ふふふふ~~~ン☆

るらららららららるる ぽ~~~~~~ドクロ











薄闇をゆっくりと流れる紫煙
ゆらゆらと不安定なその軌跡を視線はぼんやりと追う
何かに似ている、と
思考すらいらない単純作業を手先だけが忙しく続けていたはずなのに
ふとそんなことを思いつく


たゆたうように流れていたと思えばふいに動きを早めそして消える
それはあの銃口からながれ出た煙のようだ
硝煙の匂いが漂う
あの紫煙が嫌いではなかったけれど、忌まわしいのは事実で
何度もそれを眺めて
生きていることを確認するのは虚しいといつから思うようになったのか
踏み越えた死体の数をひとつひとつ数えながら
悪戯に銜えた煙草の紫煙なんてその時は気にも留めなかった



時折響くダーツの矢が的を貫く音に度々現実に引き戻される
遠く飛びがちな思考をまた目の前のゆらゆらとした紫煙に向けなおす

誰にも気づかれもしないだろうその存在
脈絡の無いあわあわとしたそれを不意に過ぎる影が切り裂いた










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Halloween!Commando☆



 電話が鳴った。


丁寧な言葉遣いの落ち着いた声音。

中学時代のクラスメイト、委員長の芳田くんからだった。


何十年たったのだろう。

あの、真剣なこどものときから・・・。



「都合の悪い曜日とかはありますか?

早くても一ヶ月後位にはなってしまうでしょうけれど、また詳しいことが決まったら連絡します。夜は御自宅にいらっしゃいますか?」


極め細やかな営業マンのようなその声には かつてのクラスメイトとは思えない隔たりがあった。




何か事が動こうという時、私はまず悲観する。

そんなことをしてそれが何だというのだろうと。


会いたくない、わけじゃないけれど、集まったところですでにみんな見知らぬ大人になっているだろうに。名前さえ覚えていないかも知れない。


「みんながどんなふうになっているのか、一目みるのも楽しみだね!」


友はそう言って弾んでいた。



りっぱな大人になった姿をさらせるのならそれもいい。

私はどうだろう。

どんなふうに人目に映るのだろうかと自分をふりかえる。

未だ魔女修業の端くれ道中、世間の目はやさしくはない。


会えば、何かが変わるだろうか。

あの遠い時代は払拭され、けど戻る時間もあるのだろうか・・・。




「わざわざ声をかけてくれてありがとう。じゃあ、よろしくおねがいします^^」



じんわりと、悲観的志向から楽しみに変わったのがわかった。


想いを馳せて遠い昔。

続いてきているそれぞれの道が 時間と空間を飛び越えて邂逅する。


どんな人たちと一緒だっただろか?

彼らはどんな顔をしてたっけ?

そのイメージで再会して大丈夫なのかな!?




委員長の声が、遠い時代と今を繋いだ。












Halloween!Commando☆


あっというまの10月でございます星空

今年もはじめますよ、HalloweenParty!!


上弦の月がのぼる黄昏時



Halloween!Commando☆


虫の声をききながら あちらの空間に目をこらしてみようかと・・・




Halloween!Commando☆


二匹のらくだが水先案内をさせていただきますよ^^


どうぞご一緒にお楽しみいただきたいハロウィン


では、今年もよろしくおねがいしますよオバケ








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