この国の精神 相も変わらぬ現代思想(2) | 秋 隆三のブログ

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昭和21年 坂口安吾は戦後荒廃のなかで「堕落論」を発表した。混沌とした世情に堕落を見、堕落から人が再生する様を予感した。現代人の思想、精神とは何か。これまで営々と築いてきた思想、精神を振り返りながら考える。

この国の精神 相も変わらぬ現代思想(2)

秋 隆三

 

<ウクライナ情勢>

 

  ウクライナ戦争は、まだまだ終わりそうにない。東部ドンバス地方では激戦状況が続いているらしい。プーチンとしては、この地域を制圧しなければ戦争を始めた大義を失うことになるから、何としてもドンバスを手に入れる必要がある。しかし、計算したようには物事は進まないものだ。プーチンは、ロシアの大統領選挙を来年に控えて焦り始めた。これが勝敗を決めることになるだろう。何故なら、ロシア内部からの揺さぶりが起きるからだ。ロシアも形だけは民主主義である。投票によって大統領を決め、議会によって法律を作るという形式は何としてもとり続ける必要があるのだ。民主主義というのは何とも都合の良い思想であり道具である。しかし、戦死者が10万人を超えるとなると、国民が黙ってはいないだろう。特に都市部からの出兵者の戦死は、国民の感情を揺さぶる。終戦間際の日本の状態である。戦争から1年、ロシア経済は確実に崩壊に向かっているが、生活実感にまでは至っていない。地方の農業者が兵隊として徴用され、農業労働力が低下し、さらに工業労働力が低下し始めなければならない。この春の徴兵以後が一つの目安だろう。

 

<中国の振る舞い>

 

  それにしても、中国がしたたかである。中国の目的は一体何なのか? 個人的意見(意見というのはほとんど根拠のない言葉である。この場合も根拠はほとんどない。民主主義における国民意見というものはこういったものである)であるが、中国の狙いは、ロシア沿海州、つまりウラジオストク、ナホトカ、さらに広くはアムール川(黒竜江)西部地域一帯の、かつて、16世紀明朝から19世紀清朝初頭まで中国領であった地域の復帰である。中国としては、ロシアへの経済支援を小出しにしながら戦争を長引かせ、ロシアを疲弊させる。その中で、ウラジオストク、ナホトカ、ハバロフスク一帯の地域を自由国家としてロシアから独立させて、貿易自由国家を創り上げる。国連の加盟も承諾も要らない。それこそ、武力による侵略ではないので、国連だって反対のしようがない。この地域一帯は、現在のアムール州(1858年清から割譲)、沿海地方(1860年清から割譲)、ハバロフスク地方(満州族居住地にロシアが19世紀後半に侵入)、ユダヤ自治州(1858年清から割譲)であり、19世紀半ばまでは中国清朝の領土であった。但し、樺太南部、カムチャッカは、アイヌ民族と日本の領土と考えられている。仮に、この国をアムール国としておく。中国は、アムール国に武器弾薬、生活用品の原材料を輸出し中国企業が生産する。ロシアはエネルギーをアムール国にパイプラインを通して輸出する。これで、ロシアと中国の取引は貿易自由国を通して完全に成立する。中国は、香港と同様に機会を見ながら、アムール国の取り込み併合を計画すれば良い。

 

<日本の脅威>

 

  これは、日本にとって大変な脅威となる。中国は、台湾などには目もくれないだろう。資源、エネルギーを手に入れ、さらには、軍港までが手に入る。既に、この戦争をチャンスに、ハバロフスクの中国国境地帯は未曾有の景況を呈している。中国工作員、ロシアに潜伏している現地人中国スパイは、膨大な数に達していると推定しても不思議ではない。来年の大統領選挙前を目処に、アムール国独立の機運を高める。

  この推理が成り立つとすれば、後1年半ぐらい戦争が膠着状態で続いてくれなければ困る。プーチンの次期大統領選挙とアムール国の建国を同時に実行できれば、中国は広大な領土を獲得することができる。これが可能であれば、現状の中国経済の低迷等はどうということはない。アムール国建国とともに始まる大規模建国バブルは、中国に多大な財と富を提供することになるからだ。

  ロシアは、正々堂々とアムール国からエネルギーとのバーターで無尽蔵の武器弾薬を手に入れることができ、腰砕けの欧米、NATOを無力化し、ウクライナを手に入れることができる。ロシア、中国は戦争特需で好況を呈することになる。

 

  戦争というものは、最大のイノベーションを生むのである。科学技術だけではない。1990年以後、考えもせずにグローバル経済へと突き進んだ先進国のつけが、反グローバリズム思想の劇的変化を生んだ。ロシア、中国といった広大な領土を有する国家における国家経営技術のイノベーションとなりうるのである。

 

<どうする日本、ヨーロッパ、アメリカ>

 

  NHKの大河ドラマ「どうする家康」が、低視聴率だそうだ。面白くない? とりあえず面白くない。鎌倉時代に始まる武士の精神というものが、全く理解されていないからである。言い換えれば、日本人の精神性に深く迫っていないのである。現代日本人の精神性の希薄さというか、貧困というか。まあ、どうでもいいが。見なければ良いので。

 

  さて、中国とロシアが、密かにこのような計画を進めるとしたら、家康ではないが「どうする」のだ。日本よ、ヨーロッパよ、アメリカよ。

  核の使用が怖くて武器弾薬の提供に及び腰のバイデン及びヨーロッパの首脳達。ロシアが負けてロシアの分裂を懼れる皆さん。

  次は、中国の台湾侵攻だとビビりまくっている日本の政治家達よ。

  今の中国は、台湾等はどうってことはないのだ。現在の中国バブル崩壊による中国共産党崩壊を回避する絶好のチャンスが、ウクライナ戦争によってもたらされたのである。

 

  何としてもウクライナを勝たせなければならない理由は、ここにあると思いませんか。西側諸国は、武器弾薬の供給を躊躇している余裕はもはやありません。後1年で世界が変わるかもしれません。既に、第三次世界大戦は始まっているのですから。

 

今回は、お茶の時間の物語で終わります。

2023/03/06