この国の精神   相も変わらぬ現代思想(1) | 秋 隆三のブログ

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昭和21年 坂口安吾は戦後荒廃のなかで「堕落論」を発表した。混沌とした世情に堕落を見、堕落から人が再生する様を予感した。現代人の思想、精神とは何か。これまで営々と築いてきた思想、精神を振り返りながら考える。

この国の精神   相も変わらぬ現代思想(1)

秋隆三

 

  日本精神、武士道とかなりハードな思想論と真面目に対峙してくると、現代の最新情報から取り残されるのではないかという不安に襲われる。

 

  最近の社会・経済状況に少しだけ触れてみよう。

 

<ウクライナ戦争とプーチンの教訓>

  まず、ウクライナ戦争だが、今のところ大きな進展はなく、両者硬直状態である。何はともあれ、戦争なのだから、ほとんど正確な情報はないに等しい。従って、メジャーであるかマイナーであるかを問わず同じような報道となる。それにしてもだ、あのプーチンという男も引くに引けないところまで来てしまったようだ。彼が我々に示した良い点を挙げるとすれば、政治指導者は、一つの思想に固執してはならないという、極めて重要な教訓である。プーチンの思想・哲学は、世界中で様々に論じられている。ユーラシア主義、国家主義、大国主義、ロシアは欧米の価値観・グローバル主義ではない等々であるが、根本にはソ連崩壊直後の欧米資本主義によるソ連固有の資本収奪に対する怨念の思想ではなかったかと思われる。ナショナリズムと言えばそれまでだが、この20年間の彼の行動からは、ロシアの資源を欧米資本、それどころか国内資本にも自由にはさせないという強い意志が感じられる。ロシア固有の資源とは、かつてのソ連邦の国々も含めてのことであるから、ウクライナが勝手にEUやNATOに加盟する等はもっての他になる。

  人間の怨念というものは、怨念を持っている当の本人よりも、その人間を取り巻く周囲の人々、恨まれる人々の方が、怨念の恐ろしさを強く持っているものである。だから、怨霊退散を祈願する宗教が生まれるのだろう。

  怨霊については、菅原道真の怨霊を鎮めるための北野天満宮、梅原猛の怨霊論等があるが、日本人にとって怨霊は神にして祭りあげればそれで静まるのである。プーチンも、京都がどこかにプーチン神社でも作って神になってもらい怨霊退散を祈願してはどうだろうか。冗談です。

  プーチンの怨念が手に負えないのは、単なる政治的イデオロギーではないところにある。政治的であれば、損得勘定で手をうつこともあるが、歴史観の上に反近代グローバリズム思想を載せて、さらにロシア正教会の宗教思想を下敷きにするとなるとほとんど手が付けられない。

  日本の政治家の皆さん、どうぞ気をつけて下さい。政治家というものは、柔軟な思考と勇気ある決断が必要なのであって、どこかの宗教のようにお題目を唱えればそれで済むというものではありません。

ウクライナ戦争は、もはやどちらかが崩壊するまで続くのでしょう。苦しむのは国民だ。先の日本の戦争のようにです。しかし、そこまで行かなければ、このヘンテコリンな政治指導者から解放されることもなく、国家は再生しないのです。それは、日本の近代史が示しているのです。プーチンさん、できればゼレンスキーさんも日本の近代史を勉強して下さい。

 

<円安とインフレ、増税>

  今月の電気料金請求書を見てびっくりである。私の住んでいるところは、標高が高いので、真冬にはマイナス15度ぐらいまで冷え込む。1年前の電気料金の25%増である。今年の6月からは、更に30%も値上げするというのだから、どうなってしまうのか空恐ろしい時代に入った。

  税金も上がるらしい。防衛費増税に少子化増税、脱炭素増税ときたもんだ。防衛費は、防衛国債でしょう。少子化対策なんかやったって、今までも効果がないのだから効果が出るはずがない。フランスが成功したとかいう話は嘘です。移民の出産率が高いのだから当然でしょう。わが国の人口は7千万人ぐらいが丁度良い。少子化対策をやっても、生産性はあがるわけではなし、GDPは下がるばかりです。ところで、日本は生産性が低いと言っている学者が沢山いますが、GDPの成長率がゼロでは生産性などあがるはずがない。生産性が低いのは、役所の仕事です。バブル崩壊後、リストラが続き、失業率が高くなって、地方自治体が打ち出した手が、ワークシェアリングである。今もって、ワークシェアリングが続いている。国は、DX化を進めようとしているが、ワークシェアリングが地方自治組織の思想なのだから、DX化をしても何も変わらない。

  電気、ガス、石油等の公共料金がものすごい勢いで値上げし、国も負けじと税率を上げる。どこかおかしいのではないのか?それで、企業の賃金を上げろと圧力をかける。政治家は、本当に仕事をしているのか?

 

  米国FRBの金利上昇により急激な円安となった。報道各社は、それきた円安とばかりに、円安で日本は駄目になると書き始めた。あの日経でさえ、日本も金利を上げて円安を抑えなければという。経済学者でも、少し知識のある学者であれば、円安はデフレ脱却のチャンスだぐらいは知っているはずだ。最近、テレビを見ていたら高名な経済学者が、円安は経営者を安易な経営に向かわせて、イノベーションを遅らせるから、円高でなければ駄目だと言っている。この国でイノベーションを起こさせることが如何に大変なことかを全く解っていない。若い頃、技術の先端を走り、現代のITの先駆であっただけに、企業リスクに対して日本の金融、政府が如何にお粗末かを身をもって知っている私からみると、バブル崩壊後30年を経てもこの国は何ら変わっていない。企業は、せっせと内部留保というセコイ貯蓄をし、金融機関と監督当局は担保主義から脱却できず、証券会社は米国市場を伺いながら目先の日本市場でセコイ商売をする。

  イノベーション企業が失敗したら、二度と立ち上がることはできない。セーフティネットのない社会で、イノベーションに挑戦することは、負けると解っている戦争をするのと同じなのだ。第二次世界大戦の日本ではないか。

 

  文芸春秋2月号は創刊100周年記念号だった。内容は、実に陳腐であり、お粗末なものだが、一つだけ優れていたのが、昔の掲載から選りすぐった論評であった。社会不安とどう向き合うかという亀井勝一郎の言葉、「人の世は心配だらけの綱渡り。その気構えでひたすらゆく。ときにリアリズムと呼ばれ、保守主義とも呼ばれる」。いいね👍。蝋山政道の戦前の言葉、「昭和日本で起きているのは一貫して行政の肥大化。“革新政治”が進めば進むほど、行政は遅滞し、国家も社会も動かなくなる。現代日本は、自民党という革新政治政党がやっているのか。いいね👍。長谷川如是閑の言葉、「人間関係の倫理は抽象ではない。倫理はかたちに宿る。かたちのない倫理などはない」。社会が変化すれば、倫理もかたちとして変化しなければならない。いいね👍。小泉信三のさし当たり、福田恆存の専守防衛からの大転換等々、社会の心配に真摯に、かつ深く向き合い考え論じることだ。それに反して、この100周年記念号掲載論文のつまらなさときたら話にならん。

  労働組合は、今年の春闘は戦わなくても30年ぶりの賃上げなので、何もせずである。フランスでは、ストライキで地下鉄もストップしている。今、この時に給料を上げる必要があるのではないのか。電気料金をこれほど上げても、再生可能エネルギー代金を国民に支払わせているとは一体全体どうなっているのだ。最近では、太陽光発電に関連した犯罪が摘発されつつある。再生可能エネルギーなどは、全く意味がないことはこれまでも何度か説明してきた。再生可能補助金・国民負担をやめろ、賃金をあげろ、エネルギー価格をさげろ等々、国民生活に直結する問題に対して労働組合は何も言わず、何もしない。諸君も腐って、宮台師匠の言うようにクズに成り下がったのか。

 

  学生もそうである。学費が高いから、地方の出身者の多くは、学生ローンを使わなくては進学ができない。両親は、子供達のために一生懸命働いている。理工系の学生ならば、修士課程に行かなくては専門的教育を受けられない。そういう親達と話をしていると涙が出てくる。

私も貧乏学生であった。アルバイトをしなくては、東京で食べていけなかった。親に仕送りを増やしてくれなどは、口が裂けても言えなかった。今の学生はどうだろう。1年ぐらい留年するのは当たり前だなどという考えはないか。

  学費、生活費が高すぎるのだから、社会がおかしい、政治がおかしいとは思わないか。過激な思想に染まる必要はないが、思想というものは、社会の何かがおかしいと感じるところから生まれる。若者よ、スマホにかじりつくより社会を見ろ。そして君達個人個人が思想を作れ。もう思想は出来ているか。クズの思想が。

 

次回に続く。

2023/02/01