そういえば、先日

オムツ田くんがはじめて髪を切りました。

 

 

 

はじめて、は人生に一度だけ。

 

 

 

いったい誰が彼の髪にはじめてハサミを入れるのか。

 

 

 

「ここは父親として、僕が責任を持って

 最初の彼の専属美容師になる」

 

 

と高らかに僕は宣言しました。

 

 

 

なんで?

 

 

 

と恐ろしく冷たい目で妻に言われました。

 

 

 

「僕が切りたいから」

 

 

「人の髪を切ったことあるの?」

 

 

「ない!(腕を組みながら)」

 

 

「上手に切れるわけないじゃん」

 

 

「何事にもはじめてはある」

 

 

「いやだ。美容院でカットとさせると決めてたから」

 

 

「どうして」

 

 

「上手にカットしてもらいたいから。あなた初めてなんでしょ?」

 

 

「なにごとにも初めてはある。あのイチローだって初めてバットを握った日があった。イチローにもだぞ? もう彼は覚えていないけれど、それは北風の吹く、ある春の朝のことだった、半ズボンのすそが肌にこすれて、幼いイチローの太ももは定規で引いたように真っ直ぐの赤い擦り傷が……」

 

 

「なんでイチローが知らないことをあなたが知ってんのよ」

 

 

「嘘だからだ! じゃあジャンケンで決めよう」

 

 

「そういうことはジャンケンで決めない」

 

 

「そんなの一方的すぎる」

 

 

「こういうことは母親が決めるって、昔から決められてるの」

 

 

「そんなの聞いたことがない! 昔からっていつからだ。古事記にも日本書紀にも出てこなかったぞそんなヘアカットのくだりは!!」

 

 

「美容院で切る。決定」

 

 

 

とまず、

初めて子供が髪を切るときは

必ずどの家庭でもここで一悶着あるわけです。

(たぶんない)

 

 

 

いいですか、みなさん。

 

 

赤子がはじめて髪を切る。

 

それは、髪がここまで伸びるまで

赤ちゃんが無事に、健康に、すくすく育ってくれたことを祝う

ちょっとしたイニシエーション(通過儀礼)なわけです。

そうでしょう?

 

 

 

「フォフォフォフォ。

 よくぞここまで健やかに育った」

 

 

と、父が威厳と愛を持って、

その右手に輝く銀色の鋏を、

赤子の細い髪に入れるのです。

 

 

その日を僕は楽しみに生きてきたのです。

 

 

にもかかわらず。

 

 

 

妻は参照元のよくわからない風習を持ち出して

僕の楽しみを奪おうとするわけです。

 

 

ひどい。

 

 

 

しかし、物わかりのいい夫である僕は、

このとき彼女に譲歩しました。

 

 

 

「……そこまでいうならわかった。

 美容院でカットしてもらおう」

 

 

「わかってくれたならいい」

 

 

「そのかわり、僕が行っている美容院で切る」

 

 

「いや、私の美容院で切る」

 

 

 

どうしてだよ!

 

 

とここで、

必ずどの家庭でも絶対に間違いなく二悶着目が始まります。

 

 

 

僕はもうかれこれ

二十年近く知っている美容師に

いつも髪を切ってもらっています。

 

 

一方で、妻は妻で、

十五年近く髪を切ってもらっている

彼女の美容師がいるのです。

 

 

 

でもね、なんなら僕の美容師は、

 

「赤ちゃんが初めて髪を切るときは

 怖がらないようにした方がいいから、

 リラックスできるように柴崎さんの家まで行きますよ」

 

とまで言ってくれてる。

 

 

それなのに妻はまったく聞く耳を持ちません。

 

 

 

「美容院で切るところまで譲歩したじゃんか!」

 

 

「それはそれ」

 

 

「じゃあジャンケンで!」

 

 

「こういうことは母親が決められるの。昔からそうなってるの」

 

 

「だから昔からっていつからだ! 聖書にも旧約聖書にもクルアーンにも真理の言葉にもでてこなかったぞ!」

 

 

 

いいですか、

いいですかみなさん。

 

 

 

育児は妻の仕事、

なんていう時代もあったかも知れないけれど、

今では夫婦共働きで互いに仕事を持ち、

父母そろって育児を行っているのに、

こういう決定権は、父親に回ってこない。

 

 

全国のお父さん、そんなのおかしくないですか?

 

 

いまこそ、

僕らパパたちが全国で立ち上がり、

ひとりひとりは家庭内で弱い立場しかない僕らが、

旗を掲げ、肩を組み、恐怖を押し殺しながら声を張り上げて

ともに権利を勝ち取ろうじゃありませんか!

 

 

パパだって子供服を選びたいし美容院だって決めたい!

 

 

 

 

 

……。

 

 

結局どうなったかって?

 

 

 

 

妻の美容院で髪を切ることになりました。

 

 

 

 

 

 

でも結果としては、

まずもってみなさまにご報告を差し上げたいのは

ものすごくかわいくなりました。

 

 

 

 

 

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