shiro's nest -56ページ目

イージー

『神様、どうか僕に愛を与えて下さい』

祈る男に、
神の愛は商売女を与えた。

『神様、僕は肉欲が欲しいのではありません』

祈る男に、
神の愛は幼女を与えた。

『神様、私は娘が欲しいのではありません』

祈る男に、
神の愛は年頃の醜女を与えた。


とうとう、男は神を疑い始めた。


『神よ、あなたは私の願いを叶えて下さらない』

『あなたにはがっかりしました。私程には、
こんな相手がお似合いですか?』


今度は何も起こらない。
男は、神を冒涜した後ろめたさと、
罰のないことに安堵した。


男は商売女と愛欲にふけり、
考えることのできる全ての性交を試した。
それに飽きると、幼い娘を凌辱し、
小間使いに酷使する醜女にも、
気が向けば手を出した。



女達の容姿は何年経っても変わらなかった。
当然である。それは神の愛なのだ。



若かった男も歳を取り、
館が乱交の声に晒されることも少なくなった頃、
男の頭にも自戒の念が過ぎり始めた。

『神様、私をお許し下さい。
あなたのためにできることなら、
できる限り微力を尽くします』


神の赦しが下された。


彼はもはや歳を取らず、
容姿も代わらないままに老婆と床を共にする。
枯れた体をくまなく愛撫し、
歯のない口からこぼれるよだれを啜る。


老婆は幸福を手にしていた、まごうことなき神の愛が満ちていた。






それは男の母だった。彼は赦されたのだ。






しろ

ソウクール

古臭い喫茶店の
入るときのカランカラン。

誇らしげなパーカッションが、
ウインク付きで鳴らしてくれる。



出るときのニュアンスは、
いみじくも悲しい。

カランカラン。
出るときの音は別れの合図。


だれといようが、
おとこでもおんなでも、
カランカランは平等で、
どうどうとしてる。


カランカラン。


さようなら。


僕もどうどうとしていたいのに、
別れの日のレクイエムみたいに、
こころがすこし、さむい。



秋風のせいだろうか、
冷やかすようなくしゃみが出た。





しろ

窓辺の憂鬱

秋風が寒く、
木の葉がぽろぽろ落ちる頃。

秋の花が咲き始め、
秋の花粉が満ちてくる。


秋のミツバチに
託してみようか?

夏の喧騒がなくなれば、
花を見つけるのは難しいかな?


秋の水面、
張り付く落ち葉で
苦しそう。

早く流れを呼び込まなきゃ、
濁って見えなくなってしまう。


河原のRadioよ、
聴かせておくれ。

僕にもわかるように、
あの人にも届くように。

凍えて、冷えて、
氷の火傷をしないうちに。


澄んだ音色で満たしておくれ。
この星空いっぱいに。





しろ