(平手友梨奈side)
病室を2人ででたときに、私は正気になった。
「ごめん!取り乱したりして!
ほんと、ごめん!」
理佐は、ニッコリ笑いながら答える
「いいのいいの。全然大丈夫だよ。
友梨奈がいてくれるから
私はどこにいても大丈夫だから。
私は負けないから。」
「絶対に理佐は良くなるよ。
私も毎日看病するから。」
私は元気よく答えた。
そして、二人で個室まで移動する。
「広い部屋でしょう」
理佐は部屋の窓を開けて発言した。
「ほんとだね、私の部屋より広いよ。
これなら、泊ることも出来るね。」
「友梨奈・・・私負けないからね。
絶対に完治してみせるから。」
「うん、私も応援するからね。」
けれど、理佐はもう覚悟していたんだ。
残された時間が、残り僅かなことに・・・・
次の日、私は理佐のお父さんの所に電話した。
理佐には死の足音がせまっている。
こんなときこそ、親がそばにいるべきだ。
出勤前だったら捕まると思い、
私は、日本時間、20:00にスマホを取りだし、
佐藤さんから教えてもらった番号に電話した。
何回も何回もコールし、ようやくつかまった。
「もしもし、急で申し訳ございませんが、
私は理佐さんの友人で平手友梨奈と申します。」
渋い声が電話の向こうから、聞こえてきた。
「佐藤さんから聞いています。
娘がお世話になっています。」
私は、理佐の病状を説明して、
急いで帰ってくるようにお願いした。
「申し訳ないが、
私は3000人の社員の家族を背負っている。
私事で仕事をおろそかにはできない。
後は、佐藤さんにまかせてある。
来年の8月には帰りますから。」
「娘が大変なときに、
仕事ですか?それでも親ですか?」
私は憤慨しながら、
近くの壁をバンバン手でたたいた。
「貴方には理解してもらおうとは思いません。
仕事がありますので切りますよ。」
なんて、冷たい父親なんだ!
理佐の孤独や苦しみを少しは分ってほしい。
私の切なる願いは、届かずにいた。