こんにちは。
最近角換わりの記事ばかり書いているので、今回は横歩取りの記事を書くことにしました。
今回取り上げるのは、横歩取り後手番の強力な奇襲戦法、△4五角戦法の棋譜です。
△4五角戦法は江戸時代にも指されていたようですが、再流行させたのは谷川浩司・現十七世名人です。
谷川十七世名人は、奨励会時代やデビューして間もない頃に△4五角戦法を多用して高勝率をあげていました。
今回は、谷川十七世名人の研究が見事にハマった一局を紹介していこうと思います。
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1979/11/21 王位戦 ▲森安秀光七段 vs △谷川浩司 五段
戦型:横歩取り△4五角
※棋譜引用元:将棋DB2
初手より
▲7六歩 △8四歩 ▲2六歩 △8五歩
▲2五歩 △3二金 ▲7八金 △3四歩
▲2四歩 △同歩 ▲同飛 △8六歩
▲同歩 △同飛 ▲3四飛
ここで△3三角が基本定跡ですが、本局では後手番の谷川五段が4五角戦法に進めました。
△8八角成 ▲同銀 △2八歩 ▲同銀
△4五角
先手が横歩を取った瞬間に△8八角成~△2八歩~△4五角と奇襲するのが△4五角戦法です。
以下▲3五飛には△6七角成▲同金△8八飛成(下図)と強襲するのが狙いで、これは後手が優勢になります。
△4五角以下の指し手
▲2四飛
△4五角に対して、先手は▲2四飛と切り返すのが定跡です。
以下、A△6七角成▲同金△8八飛成には▲2一飛成(下図)と攻め合って先手優勢です。
そこで、後手はB△2三歩と打つのが定跡です。以下、飛車を逃げれば△6七角成▲同金△8八飛成があります。
▲2四飛以下の指し手
△2三歩 ▲7七角 △8八角成▲同銀
△2四歩 ▲1一角成
△2三歩に対して飛車を逃げることはできないので、▲7七角と飛車取りで切り返すのが定跡です。
以下、△2四歩▲8六角の取り合いは先手に分があるので、△8八飛成▲同角△2四歩▲1一角成と進むことになります。
ここから様々な定跡があり、本局で指されたA△3三桂のほかにはB△8七銀が有力です。
▲1一角成以下の指し手
△3三桂 ▲3六香 △6六銀
この△6六銀は、おそらく当時の新手だったのではないでしょうか。
以下、A▲同歩には△7八角成が厳しいので先手は銀を取れません。
またB△3三香成と攻め合うのは、△6七角成▲同金△同銀成a▲3二成香に△3八飛(下図)が厳しそうです。
先手はa▲3二成香に代えて上手い受けの手があればよいですが、果たしてあるでしょうか。
実戦は先手の森安七段がB▲3三香成の攻め合いを見送り、C▲6五飛と攻防に飛車を打ちました。
△6六銀以下の指し手
▲6五飛 △5七銀成▲5八歩 △5六角
▲6三飛成△4七角成
迄、36手にて後手・谷川五段の勝ち
▲6五飛に対して△5七銀成~△5六角が厳しく、先手の悪手も重なって急転直下の終局となりました。
以下、
A▲4八歩には△6八歩が厳しく受けがありません。
B▲5三竜には△5二飛▲同竜△同金で、以下▲4八歩△6八歩▲7九飛△4八成銀▲同金△6九飛▲同飛△同歩成▲同玉△4八馬で後手勝勢となります。
先手は▲6三飛成が安易な手で、△6八歩が生じて先手玉が寄り筋に入ってしまいました。
代えて▲5五飛ならまだ難しかったようですが、これも後手が若干有利なようです。
では、先手はどうすればよかったのでしょうか。
結論からいうと、△6六銀に対しては▲3三香成と攻め合うのが現在では定跡化された進行です。
以下、△6七角成▲同金△同銀成に
a▲3二成香は△3八飛が厳しく後手優勢となりますが、b▲6九飛(下図)の受けがあります。
これで後手の継続手が意外に難しく、△8七飛と打つのが自然ですが、
以下▲3二成香△同銀に▲9六角(下図)が好手で先手が優勢となります。
(以下△6八金▲4八玉△5七成銀▲3八玉△6七飛成▲7七馬△4七成銀▲2七玉△7七竜▲同桂△6九金▲6三角成が一例で先手優勢)
とはいえb▲6九飛は見えにくいですし、知らないと指せない類の手です。
この手を指さない限り互角~後手有利になるとすれば、谷川五段の研究が非常に実戦的だったと言えるでしょう。
以上、今回は横歩取り△4五角戦法の実戦を紹介してみました。
横歩取り△4五角戦法は先手有利と結論付けられているものの、
先手が一手でも受け間違えると後手優勢になる変化がたくさんあります。
なので、△4五角戦法を先手をもって受けるのであれば、定跡を知っておくことが不可欠でしょう。
スリリングな将棋が指したい人は、ぜひ△4五角戦法を試してみてはいかがでしょうか!
おしまい。