人材系シンクタンク研究員 本日の雑感

人材系シンクタンク研究員 本日の雑感

インテリジェンスHITO総研の研究員として、人材関連の調査や人材マーケット分析、人材活用システムの開発などを行っています。
このブログでは人材に限らず、毎朝のニュースから得る学びや気付きを綴って参ります。

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更新がすっかりご無沙汰になり大変失礼いたしました。

2011年01月から2012年06月にかけて、日々のニュースや個人的な雑感を執筆しておりましたが、2013年よりブログ掲載先を「Yahoo!ニュース個人」に移行しております。

「Yahoo!ニュース」のご担当の方に本ブログやメルマガをご覧いただき、光栄にもお声がけ頂きました。私なんぞが…と大変恐縮ですが、雇用や労働市場の動向、人材マネジメント、キャリア等について引き続き発信して参りたいと思います。(「Yahoo!ニュース個人」ブログの方も更新が途絶えがちですが、もうちょっと頑張ります。)

また、同2013年からは慶應義塾大学大学院商学研究科に(現職で働きながら)通学し、労働経済学を学んでいます。本業の雇用に関するリサーチ・研究においても、アウトプットの質をより高めたいと思っています。

今後とも宜しくお願い致します。

6月前半にお送りしたHITO総研メルマガの
https://entry.hito-ri.inte.co.jp/a.p/101/
雑感部分をご紹介させて頂きます。

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スイスの国際ビジネススクールIMDから
2012年世界競争力年鑑が発表されました。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M4V3P16S972A01.html

日本の国際競争力は前年より1つ低下し27位。

1992年までは1位だった日本は年々順位を下げていますが、
この国際競争力の低下は何を意味するのでしょうか?


「国際競争力」と聞くと、
GDPや企業の時価総額の合計のようなものをイメージしがちですが

IMDにおける国際競争力の定義は
企業が競争力を持続できるような環境を生み出し、維持する国力
というもの。


具体的には
統計データやアンケート調査をもとに
下記4つの大分類と5つの小分類等から算出し、
企業にとって競争力を発揮できる国はどこか?」を評価するものとなっています。

 ・経済状況…国内経済/貿易/国際/投資/雇用/物価
 ・政府の効率性…財政/租税政策/制度的枠組/ビジネス法制度/社会的枠組
 ・ビジネスの効率性…生産性/労働市場/金融/マネジメント/意識と価値
 ・インフラ…基礎インフラ/技術インフラ/科学インフラ/健康と環境/教育
※参考:「IMD:国際競争力ランキング」
http://www.mri.co.jp/REPORT/CLUB/2007/07/20070701_club09.pdf



従って国際競争力の低下は、
企業にとって日本が"競争力の発揮しにくい国"になってきていることを示しており、
今後ますます企業の海外移転などが起こることが示唆されます。


多くの報道でも伝えられていた通り、
順位を下げ続けている要因として
『政府の効率性』の評価の低さが大きく影響していますが、

1つ気になるのが、『ビジネスの効率性』の中で
「起業家精神」や「国際経験」「柔軟性や順応性」といった順位も低いということ。



アンケートの結果からは
「起業家精神が圧倒的に足りず
国外のアイデアの受け入れに後ろ向き、
柔軟性や順応性に欠け、国際経験も不十分」…といった
ビジネスパーソンの意識も競争力低下の一因につながっている状況が見て取れます。



なぜ日本人の意識が国際的にみて低いのか。


IMDの日本代表である高津氏は
著書『なぜ、日本企業は「グローバル化」でつまづくのか 』の中で

日本企業が同質的で流動性の低い組織であることに加えて、
経営幹部自身の目が外に向いていないことも一因にあげています。


本来、外の変化にいち早く対応し学習すべき幹部が
目の前の業務に追われ自己啓発に当てる時間も余裕もない。
そして、そういったトップの世界観が
そのまま組織全体に伝播しているのではないか?

といたことを指摘されていました。

高津様には
先日のインテリジェンスHITOフォーラム にもご登壇頂きましたが、

そこで
「外の機会に触れ、学び直しを行う機会を強制的にでも企業は作るべきだ」
とおっしゃっていました。

とくに、今の40代や50代においては、
「G7時代やインターネット前の時代における世界観のままの幹部層もみられる」
とのことです。


外に触れ、学び直しを行う機会を部下に与えているか?
そして何より自分自身がそういったフロンティアに立っているか?


IMDの国際競争力は、
一人ひとりの意識が世界的にみて遅れている
ということにも警鐘を鳴らしてくれています。


※参考:国際競争とは何か
http://www.nagaokauniv.ac.jp/m-edu/pdf/01paper1.pdf


※HITOフォーラム当日の様子も含め、
HITO総研の活動や情報提供は下記Facebookページ でも行なっています。
是非ご覧頂き、「いいね!」を押して頂ければ嬉しいです。


4月前半にお送りしたHITO総研メルマガの
https://entry.hito-ri.inte.co.jp/a.p/101/
雑感部分をご紹介させて頂きます。


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毎日新聞に
『大学生:「もっと勉強を」 中教審が取り組み求める』
という記事がありました。



中央教育審議会がまとめた調査によると
日本の大学生が授業や関連学習に費やす時間は1日約4時間35分。


卒業要件として想定されている"8時間程度"には及ばず、
学習時間を増加・確保して大学教育の改善を図る必要がある

と指摘されています。


審議会の参考資料では
関連学習の時間について日米の学生比較がなされており、
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2012/03/29/1319185_2.pdf

日本は1週あたり「1-5時間」が最も多く57.1%、
さらに「0時間」も9.7%存在するのに対して、
アメリカでは58.4%が「11時間-15時間」も勉強していることが示されています。


この差はどこから生まれてくるのでしょうか?



1つには、
勉強しないと卒業が困難な米国に対し、
日本は入学さえすれば卒業はさほど難しくない
…といったシステムの違いも要因かとは思いますが、


別の点で影響しているように思うのは、
教える側自身の誘因



以前、スタンフォード大学のとある教授に
なぜ(アメリカの)学生にここまで勉強させるのか?
と質問をしたところ、


その教授から

「日本では教授になったらほぼ安泰かもしれない。
でも、こちらでは毎年結果を出し続けないとすぐ追い出される
ライバルも多く、教授がみな必死。あの手この手で学生を伸ばそうとするんだ」

といった回答が返ってきました。



「学生の勉強時間が少ない」という背景には
勉強しなくても卒業や就職に困らないシステムや
勉強させなくても困らない"教える側"の意識が影響しているように思います。



企業においても、これは似た構造なのかもしれません。


以前、タレントマネジメント委員会やグローバル人材マネジメント委員会で、
日本企業の社員はなぜ学習しないか?」を議論したところ、


・長期雇用のため"生存欲求"が脅かされない
・役員が一種の"上がり"になっていて、競争原理が欠如している。
・昨今では課長職すら"上がり"になっているケースもみられ、
 課長になるまでの必死さと、課長になった後の必死さが全く違う


といった点が指摘されました。

※参考
http://hito-ri.inte.co.jp/research/contents2012/GHRM_committee01.pdf
http://hito-ri.inte.co.jp/research/contents2012/TM_committee03.pdf


グローバル企業の人事責任者から出てきた、


「(グローバル企業では) マネージャー以上になると、
いつ下から突き上げられるか分からない

上位層になればなるほど、みんな必死に勉強する


といったお話が非常に印象的でした。



大学生が勉強しない、若手社員が学ばない…
そんな声をよく耳にしますが、


大学生や若手社員を問題視する前に
学習をさせる側構造そのものに原因は無いか、確認する必要がありそうです。