チャウシェスクを憶えているだろうか。1960年代から80年代にかけての24年間にわたり、ルーマニア共産党政権の頂点に立つ独裁者として君臨した、あの男である。
1989年12月に起きたルーマニア革命で政権は崩壊、チャウシェスクは失脚し、12月25日、逃亡先のトゥルゴヴィシュテにおいて、革命軍の手によって妻エレナとともに公開処刑(銃殺刑)された。
ああ、もうそんな前の出来事だったのかと、感慨深く思う。

こんな男の縮小版たちが、日本にもたくさんいることだろう。
そう、どんな内容であろうと独裁者の声は絶対なのだ。
つい先日、こんなことがあった。
「赤ちゃんにミルクを……」後の方はよく聞き取れなかったが、こんな声が聞こえた。
若い女性スタッフがそれを丁重に断っている。振り向くと、赤ちゃんをだっこした若いお母さんの姿。
ああ、ミルクを溶くのにお湯が欲しいんだなと理解した僕はすぐに歩み寄った。
「どうぞ、お使いください」
お礼を述べたお母さんがお湯を入れているときに、女性スタッフが小さい声で言った。
「いいんですか?」
いいも悪いも、へったくれもない。右も左も、上も下も、正義も悪も、この際無しだ。
恐ろしい、実に恐ろしい。これがマニュアルの恐ろしさである。
それは当たり前のことだ、お湯をタダで提供する店などない。
けれど、それを判断するのが現場にいる人間のすることなのだ。でなきゃ人間なんていらない。
「君もやがて結婚して、子を持つんだろう? 世の中杓子定規に考えると生きづらくなる」
僕はそれだけを口にした。
そして後日、その話を聞き及んだおばさんが話を蒸し返した。
僕はてっきり同意するものだと思っていたら、
「熱湯で溶いたって、そんなもん熱くて飲めないのにね。まあ、お水は買って足せばいいけど」
このおばさん、50代だけれど、結婚経験のない独身だ。それに、某S学会員だ。
お前ら、そろいもそろってアホだ。
掟破りの僕をネタに何か言ってればいい。ああゆうこと勝手にされても、困るのよねえ、とか言ってればいい。
断っておくが、僕はきわめてまともだ。どう考えたってこれが普通なのだ。お前たち洗脳されている。
小さな独裁者、質の悪い洗脳者たちは、小振りながらも、かなりのアホを生み出してゆく。
はっ! ここか! ここだったのか!
昔から変わらず、下には慕われても、上には疎まれる僕の境遇の原因は。
だって、白いものは白いし、黒いものは黒いのだ。
生きるって難儀だな……。
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