風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」 -77ページ目

「そうそう、恒例の同窓会よ。今回は土日を使って2泊3日らしいのよ。場所? 場所は変わらず伊豆のどこだからしいけど。おじいちゃんは楽隠居でいいわよね。だからおばあちゃんが二日もひとりじゃ退屈だからって……そうそう。でね、裕史も彼女がいるんでしょ? だったら会いたいって」

「おばあちゃんが遊びに来るだけで、どうして巻き込もうとするのかなあ」
祖母は千葉に住んでいる。そこが母親の実家だった。

「おばあちゃんだって永遠に生きるわけじゃないのよ。あんたの結婚式にだって出られるとは限らないんだから」

「なんか気が滅入るなあ、そんな言い方」僕はちょっとだけ、スマホから耳を離した。
「いいじゃないの、冥土の土産よ」
「ほらほらもう、自分の母親を死なせてどうするの」
「誰だって、歳を食えば死ぬのよ。あたしもあんたより先に死ぬんだしさ」



おばあちゃんの冥土の土産かあ……。
僕はワンルームマンションの白い壁を見つめながら、みひろのことを思い浮かべた。

「ね」
「まあ、向うの都合もあるから会えるとは限らないよ」
「ま、そんときはしょうがないね」

みひろは僕の彼女ではない。それどころか手さえ握ったことがないのだ。
でも、初めて出会ったころから十数年が過ぎていることを考えれば、信頼のおける友達として会わせることには何の抵抗もない。

母親やおばあちゃんが二人の仲をどう思おうが、知ったことではない。
というか、会わせてもみたかった。

同じ学び舎で過ごしたことはなかったけれど、みひろと僕は幼馴染だった。
付き合いたいとか、結婚したいとかなんて思ってもみなかったけれど、これが何かのきっかけになるのかもしれないとは思った。

「土日は行くけどさ、会えると期待はしないでね」


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その後も彼女とは、中学、高校、大学と友達付き合いが続き、いや、続きというのは少し違っている。会わないときは何年も会わなかったからだ。

会わなかった理由は、すべてを知った今ならわかる。
そして僕たちが、まるで不文律のように、お互いの家に近づくことがなかった理由も。

会いたいな、と思った翌日かその次の日には、「よっ!」と後ろから肩口を叩かれたり、道の向こうから手を振りながら歩いてきた。
「偶然ねえ」と言いながら、ちっとも驚いたふうもなさそうに。

そう、彼女は風のように僕の前に現れたのだ。

そしてその都度、背中を押してくれる数々の名言と、ちょっと戸惑う迷言を僕にくれた。

「大丈夫だから。あたしが保証するから」
「誰が保証するって?」
「あ・た・し。これ以上の保証はないから」

「明日は明日の風が吹くんだから」
「夜明け前が一番暗いって知ってる? だから、どん底だと思ったら夜明け前よ。最大限の無理をしてでも、あはは、あははって、笑うのよ。笑う門には福が来るんだから」

「犬が西向きゃ尾は東なの。こうよ、こう」
彼女は身振り手振りで示した。

「それ、江頭2:50っぽいけど」

「余計なこと言わないの。でさ、無理に東のしっぽに向かうと、馬鹿みたいにクルクル回るのよ」

「ますます江頭っぽいんだけど」
「余計なこと言わないの。無理に反対側を目指しちゃダメ。嫌でも西を向いてるべき時期ってあるんだよ。お日様が沈んで、寒い夜がやってきて、そしてね、夜を抜けたら背中から朝日が差すわ。あたしが保証する」



ちょっとおませな女の子は可憐な少女になり、やがて美しい女性へと変貌を遂げていった。
彼女は僕にとって、慈母のような存在になっていった。

僕たちは、初めて出会った小さなころから変わらず、ヒロ君、みひろと呼び合った。



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「さ、遅くなっちゃうからそろそろ帰ろうか? おうちの人も心配するし」
彼女は立ち上がり、スカートのお尻をパタパタと叩いた。
「またさ」
んしょ、とランドセルを背負い、にゅっと笑った彼女は、僕に何かを飲み込ませるようにゆっくりと何度も頷いた。

「来るから。でさ、また少しだけ」
「うん?」
「君の力になるから。また会おうよヒロ君」
「うん、いいけど、いつ会う?」

「ヒロ君があたしに会いたくなったら、また来る」
「また来るって、いつ? どこに?」
「だからあ、ヒロ君があたしに会いたくなったとき、ここに。まあ、ここじゃなくてもいいんだけど」
よく分からない不思議な言葉を吐いて、彼女は優しく微笑んだ。



「じゃね、バイバイヒロ君」みひろと名乗った彼女は、僕の頬をピタピタと叩き、小さく手を振った。

「明日も晴れるよ」
ピンクのランドセルが遠ざかっていった。

彼女が歩き去ったのが隣町の方角でなかったことを、僕はその時気がつくべきだった。


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「もっと大きくって……」年のころは僕とたいして違わないだろう彼女を見て、質問を投げた。
「何年生?」
「あたし?」彼女は自分の鼻先を指差した。
僕は頷いた。

「三年生」
「いっしょじゃない」
「だから?」
「いや、だから何だってわけじゃないけど」

もっと大きくなったら教えてあげるなんて、同い年にしては、ずいぶんと僕を幼く見ているような言葉だった。



話をして分かったのは、彼女は隣町の小学校に通っている、ということと、ネギが嫌いということぐらいだったけど、僕の方はといえば、洗いざらいぶちまけたような感じになった。
だって彼女の質問攻撃が激しかったから。

何色が好きなの?
食べ物は何が好きなの?
勉強は何が得意なの?
友達は何人いるの?
お母さんは優しいの?
お父さんは優しいの?

兄弟はいるの?
好きな人はいるの?

僕は考え考え、かなり真面目に答えた。


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引っ越しの時なのかな、一冊どこかへ失くしちゃったんだ。
それが、父が口にした、僕の小さなころの写真が存在しない理由だった。

─短編小説「見えない彼女」─

駅のそばの喫煙所で煙草を揉み消した僕は、ビルに切り取られた夜空を見上げた。

明日だな。

僕が気になっていたのは、引き受けてくれた彼女がかなり渋々だったということ。

そんな彼女が僕の前に現れたのは、小学校の三年生ごろだったと記憶している。思えば、ずいぶんと長い付き合いになる。

公園だったのか、学校帰りの河川敷だったのかは定かではないけれど、ぼんやりと景色を眺めていた場所は、ベンチだったのは間違いない。
だって、彼女が僕の隣に腰を下ろしたのだから。

「何してるの」ふわりと後ろから声をかけてきたのが彼女だった。
ピンクのランドセルの肩ベルトに両手の親指を突っ込んだ彼女は、ちょっと腰を折って首を傾げた。その微笑みは、どこか懐かしさを感じさせるものだった。



「いや……別に何って……」
人見知りな僕の戸惑いを笑うように、秋風が髪をなぶった。

ランドセルを背中からおろして隣に座った彼女は、僕の言葉など聞こえなかったかのように、ほら、と空を指差した。

「秋の空ってさ、なんで高いか知ってる?」
彼女はまるで親戚みたいに、僕の心に滑り込んできた。
「空が高い?」



「知らないの?」もう、なんてことなの、とでも言いたげに、彼女は自分の太ももをパシパシと叩いた。
「じゃあ、天高く馬肥ゆる秋って言葉も知らないね」
「知らない」

「もっと大きくなったら教えてあげる」じっと見つめた彼女の横顔は、どこか凛々しく、長いまつげが、真っ青な秋の空を影絵のように切り取っていた。


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「万引き」は、「間引き」から転じたもので、物と物のあいだ・すきまを意味する「ま(間)」に撥音「ん」がついて「まん」となったもの。「万」は当て字。

─由来・語源辞典より─

他にも説があるらしいけど、これが有力らしい。

昨夜の9時ごろ、万引きを一件捕獲した。
こんなことをいちいちブログに上げたりはしないのだけれど、右胸の肋骨が痛いから書こう。

殴られてはいないけど、「ちょっとトイレ行かせろよ」から始まって、何度も逃げようとする犯人だったからちょっと格闘があったせいだ。

目の端にちらりと映った瞬間、その怪しい風体に僕はすぐに持ち場を離れてマークした。

確かに怪しい。だぼっとした黒の上下に、縦じまのシャツから白いTシャツがのぞいている。黒ぶち眼鏡に、ぼさっとした白髪交じりの髪に少し伸びた無精ひげ。全体的に薄汚れた感じがある。でも、これがファッションの可能性も十分ある。

そうであるか否かを見抜く僕なりの方法がひとつある。それは、靴を見ることである。
それなりのこじゃれた靴でも履いていたら、それはその人なりのスタイルだとわかる。くたびれていればおしゃれではない。

その見地から言っても、僕はマークを外さなかった。

気づかれないように、男から離れた場所でじっと見つめ続けた。
商品を手に男は背中を見せて足早になった。
すぐさま作業用の手袋を着けながら、僕も足早に追った。

案の定、外に出た。
男は人混みを縫うように小走りになった。こんなケースは珍しい。たいていは普通に歩いていくのだ。

背後から男の二の腕とジャケットの腰のあたりをつかんで声をかけた。
「お金は? 払ったの?」

バックヤードで、逃げようとする犯人とちょっとしたもみ合いがあった。
ゴミ捨てから戻ったネパール人スタッフが戸が閉まらないらしくおたおたしていた。

後ろから男の首を絞めた僕が怒鳴った。「早く閉めろ、○○!」
逃げようと暴れる犯人の動きに押されて、台車に積んだ段ボールの山が倒れた。

「手伝いましょうか」外から若い日本人サラリーマンがネパール人スタッフに声をかけている。
いっそ手伝ってもらおうかと思ったけど、退路を断つことが先だった。
「早く閉めろつってんだろが!」僕は再びネパール人スタッフに怒鳴った。

いざという時、彼らはほとんど物の役には立たない。
その時、配送の日本人の若い男性が顔を出した。地獄に仏。
「ちょっと手伝ってくれる! こいつ逃げようとしてるから!」

違うネパール人スタッフがやってきた。
「捕まえてろ!」僕は怒鳴った。けれど、顔中に戸惑いの色を浮かべている。

配送の男性がネパール人に指示していた。
「そっちにいて、俺、こっちにいるから」
きれいに挟み撃ちにしてくれた。

そこでようやく110番通報ができた。

こんな時、闘争本能のわかない男は、ちんちんを返上した方がいいと僕は思っている。

「ありがとう、助かったよ」配送の男性に僕は微笑んだ。
「こんなの初めて見ましたよ」
「よくあることだから。いや、ほんと助かった。ありがとう」

ついでに書くと、一昨昨日の夜にも一件捕獲した。
その時も、僕は一人で捕縛して、逃げないように見張りながら110番通報をした。

もっとついでに書くと、今月のいつだったか、こちらのやんわりとした忠告も無視し、やがて暴言を吐く、はた迷惑で生意気な若造どもの一人をぶっ飛ばした。

これは一番やってはいけないことだ。
どんな相手であれ、手を出した方が負けなのだ。

万引き犯に腹を立てることはほとんどない。
けれど、上記のような人間には口より先に手が出るのが僕の悪い癖なのだ。

そんなこんなで僕の日々は過ぎてゆく。
そんな日でも、なんてこともない普通のブログを書くのだけれどね。

息を吸うと肋骨が痛いや、から書き始めたブログでした。

こんなブログに似合う写真なんてないから、殺風景です。花の写真なんて載せたら変態です。
でもこれこそが、生身のブログです。

万引きと痴漢は常習犯。決して出来心ではない。
そんな一部の人間のために、迷惑をこうむる人がたくさんいる。

嫌な世の中だな。


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トイレと台所が共同で、二階建ての古びたアパートの三和土には、住人の靴やサンダルが並んでいた。そこを一段上がるとぎしぎしと音を立てる廊下が伸びている。

ある日の休日、その一番手前、トイレと台所に一番近い、コンビニエンスな六畳一間の僕の部屋が、コンコンっとノックされた。

ふん? のそりと立ち上がった僕は引き戸を少し開けた。
今考えると、和室の押入れでもあるまいに引き戸のドアというのがすごい作りだ。

そこに立っていたのは、髪を七三に分け、穏やかな顔に黒ぶち眼鏡を掛けたひょろっとした人だった。

年のころは20代の後半から30代の前半ぐらいだったろうか。簡略に書けば30前後(汗)
その人は、柔和な顔の横に小冊子を示してこう口を開いた。

「神を」反応を確かめるように少し間が開いた。
ふん?
「信じますか」

あっけにとられた僕は、それでもぼそりと「はい」と答えた。

「進化論を」また少し間が開いた。
ふん?
「信じますか」
「いえ」
その人は、なんだかうれしそうに笑った。

思い出してみるに、まだ十代のころから、僕は神を信じ、進化論を否定していたのだということが分かる。
だから、聖書も少しかじったころだったのだろう。

「聖書を学びませんか」
「どこで、ですか」
「私が時々来ます」
「どこかへ行く必要はないんですか」
「はい。私がここに来ます」その人はにこやかに言った。

実直そうで、どう見ても詐欺まがいの人には見えない。
面白い、と僕は思った。




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ちょっと気分がクサクサするな。
12時間プラス1時間はちょっと働きすぎだな。

こんな曲で気分を直して、さ、もう寝なくちゃ。

小さい頃は 神様がいて
不思議に夢を かなえてくれた
やさしい気持ちで 目覚めた朝は
大人になっても 奇蹟は起こるよ

カーテンを開いて 静かな木漏れ陽の
やさしさに包まれたなら きっと
目に写る全てのことは メッセージ



小さい頃は 神様がいて
毎日愛を 届けてくれた
心の奥に しまい忘れた
大切な箱 開くときは今

雨上がりの庭で くちなしの香りの
やさしさに包まれたなら きっと
目に写る全てのことは メッセージ

カーテンを開いて 静かな木漏れ陽の
やさしさに包まれたなら きっと
目に写る全てのことは メッセージ



やさしさに包まれたなら/松任谷由実



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ビルボードにチャートインしたとかで、やたらテレビでやっている「ピコ太郎」のペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)
確かに外人受けしそうなネタだけどね。

この人が古坂大魔王だというのは周知の事実だけど、一回見たら十分だなあ……。
なかなかの遅咲きで、おめでとう! とは思うけど。

興味なさそうなのに、何でブログに上げたかというと、この人以前に「底ぬけAIR-LINE」という3人組でやっていた。一人抜けて最終的に二人になったのかな?
その中の一人を、個人的によく知っていたというだけの話。


こんなネタでもどうぞ。
MCの渡辺さん、ネタのタイトル間違えてるな。「怖い話」じゃなくて↓↓↓↓

古坂大魔王「怖そうな話」「怖くない話」どっちだろう?



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過去というものがあって、その先に未来というものがあって、けれど実際は、今しか体験できない僕たち。

今の積み重ねが過去になってゆく。
僕たちは、今という鍵盤を踏みながら未来へと向かう。

過去を振り返り、未来を夢見ることはできるけれど、僕たちは今というこの一瞬の音しか奏でられない。

レを踏んだ瞬間、その「レ」は過去の音になっているし、あ、っと口にした瞬間、その「あ」さえ過去の言葉になっている。

過去と現在と未来。決して交わることのない時たち。
でも、その垣根を取り払うものがひとつだけあるんだ。

そのおまじないを今から唱えてみるよ。
これを連綿というのに違いない。現在過去未来、それらをすべて統合できるマジック。

「ねえ君、僕は君のことをずっと好きだよ」
そう、たぶん、生まれる前から。

だからさ、悲しみっていつかは消えるんだ。
そのために、僕は、ここに現れたんだ。約束通りに。

君が心穏やかに、ゆっくり眠れるように。


夜空ノムコウ スガシカオ × YUI



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