風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」 -63ページ目

「煙草?」コンビニの前で煙草の吸殻を拾うホームレスに、博之は思わず声をかけた。

ちびた吸い殻を拾い上げたホームレスがこっちを見た。コンビニの灯りに照らされる伸びたひげは、ほとんど白に近かった。いや、薄汚れているから、正確には白とは言い難いけれど。

なぜそうしたのかは自分でも分からない。今日、上司にあんなことを言われなければ、このホームレスだって顧(かえり)みることなく通り過ぎただろう。

首を洗っておけと言われた。この不景気に取り立てて特技など持っていない自分が放り出されたら、すぐさま食い詰めるに違いない。

職を失った自分とホームレスが重なった。それだけのこと。自分が持ち合わせている善意なんて、所詮はそんなものだ。

「煙草、あるよ」パッケージを振り、一本差し出した。
「あ、これ少ないからあげるね」残りは4、5本だろう。振り出した煙草を指で押し戻した。

ホームレスはありがたそうにそれを受け取った。
「あ、ライター」
「ライターは持ってるんだよ。ありがとうね」

「それより、お腹、空いてるよね」
ホームレスは恥ずかしそう頷いた。
お金、いくらあったろう。給料日までまだある。余計なこと口走ってしまったな。
財布を確認する。ま、いいか。なんとかなるだろう。口にした以上、引くに引けない。

「少ないけど」博之は千円札を一枚抜き取って男に渡した。
「いいのかい」
「うん。腹が減っては戦はできないでしょ」

「戦なんてしないけど」にゅっと笑った男は薄汚れたジャケットのポケットを探った。
「これ、お礼に」

「指輪? 俺、男だよ」博之は苦笑した。
「もしもさ……」男はじっと博之を見た。

「もしも?」
「そう。もしも透明人間になれたら、願うことのほとんどをやれると思わないかい。これは魔法の指輪さ」


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─ギュゲスの指輪─

羊飼いのギュゲスは、地震によって開かれた洞窟で青銅の馬をみつけた。馬体の空洞には金の指輪を付けた死体があった。この指輪は玉受けを内側に回すと周囲から姿が見えなくなり、外側に回すと見えるようになるという不思議な力を持っていた。

ギュゲスは王に家畜の様子を報告する使者の一人となって宮殿に入り、王妃に近づき姦通した。それから二人で密謀して王を殺し、王位を簒奪した。

─プラトン著作、『国家』─


関根博之は連なる商店街の夜空を見上げ、上司の言葉を思い返していた。いつものように忌々しい言葉たちを。

「お前さあ、幾つになるんだよ」上司は中指で自分の眼鏡の中央部分を押し上げた。
「はい?」
「幾つになるかって訊いてんだよ」デスクに肩ひじを突き、身を乗り出した。
「にじゅうはち、です」

「もうじき三十路じゃないか。いつまでも子供みたいなミスしてんじゃないよ」眉間にしわを寄せて腕を組み、後ろにふんぞり返るように身を引いたとき、背もたれがギッと音を立てた。

「ミス、ですか」
「俺は言ったじゃないか。ちゃんと言ったよな。処理しておけよって、言ったよな」人差し指を何度も突き出す。
「処理……ですか」博之には何のことかわからない。

「だから!」上司がテーブルを叩いた音に、博之は身をすくめた。
「先方さんからかなりのクレームがあったそうだ」
先方さん?

「反省してんのかお前! これは社長の耳にも入っているからな。そろそろ首でも洗っておけ。聞こえてんのか」
「あ、はい」返事は、聞こえてるのかに対するものだ。けれど、その瞬間、すべてが被せられた。

これに似たような状況は以前にもあったことだ。

博之は誰から見てもおとなしい男だろう。持論を展開することも、誰かの意見に反論をすることもない。
ただ、微笑みながら皆の話を聞いている、そんな男だ。だって、百人百様の考え方があっても当然だから。

そんな性格だから、スケープゴート(身代わり)にされる。
またもや嵌(は)められた。

「いいからもう行け!」上司はスナップを利かせた手の甲で博之を追い払った。


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陽が傾くにつれ、風は冷たいものに変わってきた。
寒暖差の激しい日は、まだまだ続きそうだ。

仕事を終え、電車の時間を気にしながら足早に歩いていると、たいていは行く手を阻まれる。

ずいぶんのんびりと駅に向かう人が多いからだ。
遠くの信号を見ながら駈け出したりする僕からすれば、その温度差に驚くばかりだ。

先を急ぐ人もいれば、今を楽しむ人もいる。
明日を夢見る人もいれば、明日の訪れを恐れる人もいる。

希望に燃える人、絶望に打ちひしがれる人。
喜びの中にいる人、悲しみに暮れる人。

その日、その時、それぞれの道それぞれの時間をひとは歩く。ひとりとして、同じ人間はいないのだと、人波を縫いながら思う。

きみのすべてを ぼくの自由にしたくて
ずっと大切にしてたわけじゃない

だからなにも 信じられなくなっても
ぼくを試したりしなくて いいんだよ

いいさ 落ち込んでだれかを傷つけたいなら
迷うことなく ぼくを選べばいい

さびしさの嵐のあとで
きみの笑顔を さがしてあげるよ


全部だきしめて/吉田拓郎


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今宵は、ひとり静かに目を閉じて、こんな曲に身をゆだねてみたら?

過ぎ去ったあの頃が、まるで走馬灯のように……。


サンタナが1976年に発表したアルバム、アミーゴ(原題: Amigos)より。

哀愁のヨーロッパ/サンタナ


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特に味噌マニアというわけでもないけれど、味噌を買う時はひとつひとつ手に取って、いつも悩んでしまう。

そう、自分なりの定番というものを持っていなかったからだ。味噌汁を作るわけじゃない。ホタルイカや豚足を酢味噌で食べたり、エシャレットに付けるぐらいだ。

でも、エシャレットのときは味噌だけだから美味しくなければ、パーだ。

そこでいつだったか買ったのがこれ。究極の逸品
封を開けた瞬間に、なんと香(かぐわ)しい! 酢味噌を作る手を止めて舐めたい衝動にかられた。

今使っているのは2つ目だ。僕が同じ味噌を買うのは珍しいかもしれない。それぐらい気に入っている。
西友で買ったけど、東急ストアにもあるようだ。

ラベルにはこう書いてある。

創業百二十年の老舗味噌屋の四代目が日本で一番旨い味噌を造りたい思いで生まれた究極の味噌。

おそらくこれを見て買ったと思う。300g 367円(税込)

国産原料100%使用した酵母菌が生きている中辛口の無添加信州味噌です。二年間の低温熟成と3種合わせ麹により深いコクと香りのある味噌になっており、一度使われた方からのリピート率№1です。
普段お使いの味噌に物足りなさを感じている方におススメです。
麹歩合は6割麹(米:大豆=6:10)です。


誰かから、この味噌は美味しいよって勧められない限り、僕はこれを使い続ける気がしている。
コスパが高い。

昨夜はチャンネルを変えたら「鶴瓶の家族に乾杯」の再放送をやっていて、つい見てしまった。僕の大好きな番組だから。
時間のない僕がテレビに見入ってしまったら、当然ブログが書けない。
ちなみにゲストは、北島康介だった。

鶴瓶……なんて読むか知ってますか。
つるべです。最後に「い」も「え」も付きません。どうでもいいか(笑)

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─百田尚樹著風の中のマリアより─

*マリアとは本作の主人公であるオオスズメバチのワーカーです。ドロテアはマリアより年長のワーカーです。

まだ幼い新女王たちの食糧確保のため、彼女たちがニホンミツバチの巣を襲おうとする場面です。



「この中に巣がありそうね」ドロテアは言った。
マリアとドロテアはエサ場マークフェロモンを出す用意をしながら、洞の中に足を踏み入れた。

すると洞の中から不思議な音が聞こえた。
「何、あの音?」マリアは言った。
「翅(はね)をふるわせている音みたいね」
「何のために?」
「私が知るわけないわ。怯えているんじゃないの」
ドロテアはおかしそうに言った。「全然向かってこないから、拍子抜けするね」

ドロテアの言うとおりだった。これまで戦ってきたセイヨウミツバチとは全然違う。ニホンミツバチはマリアたちとはまったく戦おうとしなかった。

洞の中は思ったよりも大きく、ミツバチの巣はかなり奥にある感じだった。中は暗く、ミツバチたちの翅の音がやたらと響いていた。



帰りの電車の中で本を読んでいて、あ、あれだあれだと思った。
僕はこの映像を見たことがある。

オオスズメバチ(スズメバチ)が巣に侵入してきた際、数百匹のニホンミツバチ(ミツバチ)がオオスズメバチを球状に取り囲み腹部の筋肉収縮・翅の振動などを利用し中心部を50度近くまで上昇させ蒸し殺すという殺法。

オオスズメバチはいきなり集団では襲わず最初は単独行動でニホンミツバチの巣に偵察する習性やニホンミツバチが50度まで耐えられるのに対しオオスズメバチは45〜6度とわずかに耐熱温度が劣る特性を利用したものである。


最強ハンターオオスズメバチが、仲間を呼ぶエサ場マークフェロモンを出す場面もあります。

この命がけの必殺技を使えるのはニホンミツバチだけのようです。ニホンミツバチ、すごい。

ナレーションで、恐ろしい肉食の蜂とありますが、ワーカーは肉を食べません。幼虫に与えるえさを狩っています。

もうひとつ、ニホンミツバチの翅の音を、敵を威嚇しているのです、と語っていますが、必殺技に向けて体温を上げています。

さて、戦いの結末は。
マリアは、そしてドロテアは……。

オオスズメバチ vs ニホンミツバチ


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昨日からの続きです。
外来種ですが、なんて無粋な名前なんでしょう。
「おっきい犬のキャンタマ」なんて。


こんなにかわいいのに。


絶滅危惧種に指定されている在来種「イヌノフグリ」の種子が犬のキャンタマに似ていて、それに花が似ているところから「オオイヌノフグリ」と名付けられたと記憶しています。

大迷惑な話ですね。種子はハート型です。それもまあ、犬のキャンタマに見えなくもないけど、あくまでもハート型です。河原とか、畑や田んぼのあぜ道に咲いています。小さいから見落としがちです。

「犬ふぐり 星のまたたく 如くなり」
高浜虚子(たかはまきょし)

次にハナニラです。
藤青色、ピンク、白とあります。星形のきれいな花です。
やったことはないけど、傷をつけるとニラの匂いがするらしいです。葉っぱも確かに、ニラに似ています。
なぜか、河原の一角だけに、ずらーっと咲いています。


ナズナも咲いていました。実が三味線の撥(ばち)の形をしていることから、ぺんぺん草ともいわれますね。


あまり好きになれない、ホトケノザも。
これは春の七草の「仏の座」とはまったく別種です。食べられません。間違えないように。


ちなみにこれが七草の「仏の座」です。全く似ていません。↓↓↓↓


画像はすべて借りものです。ああ、春が来たらデジカメ買おう。

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このところのお休みは、天気が悪かったり寒風が吹いていたりしたので出かけるのを諦めたけど、風もない昨日はやっと公園に行って読書ができた。

無精者で寒がりの僕は、ルームウェアの上にズボンをはき、ダウンを羽織って毛糸の帽子までかぶって出かけた。

ベンチに座って暖かいボトルの缶コーヒーを飲み、煙草を一本吸って文庫本を広げた。
読みかけだった「風の中のマリア」だ。読み終わっていないから感想は書かないけれど、なかなか面白い。

木製のベンチでお尻が痛くなったから、残念ながら一時間半ぐらいで読書を終えた。公園を一回りして、子供たちの声を聞き姿を見て少し満足した。幼い子供はかわいい。

あの子らは、時に憎たらしいし、時に天使だし、なにより未来だ。未確定だからこそ、かけがえのない未来だ。

公園の植込みを見ているうちに、無性に緑が見たくなって河原に向かった。願っていた通り、途中の道路の脇に菜の花が咲いていた。近寄って目を細めて眺めた。僕の大好きな菜の花。

坂を上り橋を渡り、河原を歩き始めた僕を迎えてくれたのは、いち早く春を告げるオオイヌノフグリだった。しゃがみ込み、わずか数ミリのコバルトブルーの花を愛でた。

あ……そうだった、午前一時から画像の投稿ができなくなる案内があったな。オオイヌノフグリの画像はお預けですね。

ハナニラも咲いていた。八重紅彼岸が咲くのもそう遠くはない。桃色をしたこの桜は心奪われるほどきれいだ。
仕事ばかりしている僕が、ふと我に返るそんな日。

日々/吉田山田


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少しづつ、ちょっとづつだけれど、季節は春に向かっている。いつも恋い焦がれる桜を、今年は待ち遠しく思わなくなった自分に少し驚きながら、その理由を考えてみる。

パッと咲いてはらりと散る。その変化の速さに、自分が付いていけないからなのだろうか。
それを潔いとは思えなくなった自分がいるのだろうか。

なぜだろう。どうしてだろう。
考えても答えは出ない。

凍える冬を溶かす春。
穏やかな春を焼き尽くす夏。
灼熱の夏を冷ます秋。
セピアの秋を覆う冬。

もしも明日風が吹くのなら、それは暖かな南風であってほしい。



まだまだ冷たい、風が吹く。

夢の途中/来生たかお


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『スパイ大作戦』(スパイだいさくせん、原題 "Mission: Impossible")は、1966年から1973年まで放送されたアメリカの人気テレビドラマ。1時間枠の番組。全171話。
日本でも、1967年4月よりフジテレビ系列で放送され人気番組となり、以後、幾つかの放送局で度々放送(再放送)されているテレビ番組。



「君、もしくは君のメンバーが捕えられ、或いは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。成功を祈る。このテープは自動的に消滅する」
ぷしゅぷしゅぷしゅう……。

声は大平透だったかなあ……調べてる時間がない。


まあ、内容なんてほとんど覚えていないんだけどね。
テープレコーダーから煙が出るシーンだけは、妙に覚えています。

自動的に消滅で、煙が出るって、昔だなあって感じ。
毎度煙が出て、テ……テープレコーダーは大丈夫か!

久々に826askaちゃんで
ミッション・インポッシブル


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