風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」 -108ページ目

「ううん、読まない」彩音は首を振ってソファに横になった。
「ねーヤマト。読まなくてもいいよね」胸に抱え込んだヤマトがみゃあと鳴く。

「苦しくなるから?」
「そう。読ませようとするってことは、引き受けるんでしょ」
バックパックを枕に美咲を見た。ゴロゴロと喉を鳴らすヤマトが甘噛みをする。

「そうね」
「正しいんでしょ? 正義なんでしょ?」
美咲はこくりと頷いた。

「生かしちゃおけない奴なんでしょ? ちゃんとリーディングしたんでしょ?」
美咲は再びこくりと頷いた。

「だったら余計に読まない。ねーヤマト」
彩音が認める美咲の能力に間違いはない。

物や人に触れて過去の記憶を読み取る能力者を、一般的にサイコメトラーと呼ぶ。これは残存思念を読むということになるのだろうか。



けれど彼女は触れもせずに、人や物の過去と現在を読み取る。

個人のブログを片っ端から読んで、綾音の能力と現在位置を知ったのはこの力によるものだ。
そんな彼女の突然の訪問を受けた人物が、もうひとりいる。 

そのとき、インターフォンが鳴った。
「川村君だ」彩音は立ち上がり、ヤマトを抱えたまま玄関に向かった。

「やあ、彩音」川村義人がガリガリ君を片手に微笑んだ。
「もう夏じゃないのに、何考えてんのよ」
綾音は、川村の手先で左右に揺れるガリガリ君を凝視した。

「ラーメンのどんぶりを持って立ってるよりましでしょ」
「なんて自虐的なレトリックを使うの、あんたって……」
ヤマトが綾音の腕の中で、同意するようにみゃあと鳴いた。


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「川村君はまだなの?」バックパックをソファに下ろし、綾音は乱れた髪を手櫛で直した。

「さっき電話があったから、もうすぐ来るんじゃないかな。あやはコーヒーにする?」
「ううん、いい。家で飲んできたから」
「そか」
口元で微笑みパソコンデスクの椅子に座った工藤美咲は、いつも通りの穏やかさだった。

街にイルミネーションが灯るある夜のことだった。コートからシャツからパンツまで、黒ずくめのスタイルで目の前に現れた彼女は言った。あなたをずっと探していたと。



その目は闇夜を纏(まと)ったように暗く、怨嗟に燃える炎(ほむら)を放っていた。

彼女は、会ったこともない私の、名前はもちろん素性までも知っていた。心底ぞっとしたことを憶えている。

「ヤマト」片桐彩音は黒い子猫を抱え上げ、ソファに腰を下ろした。
「あ・や・ね。かってに名前変えないでって……」パソコンのディスプレーから顔だけで振り向いた美咲は眉根を寄せた。



「だって、ちゃんと反応するよ。ねーヤマト」子猫の鼻に自らの鼻をくっつける。
「彩音のせいでしょう」
「チビクロって名前の方がよっぽど哀れだと思うなあ。いつまでもちっちゃいわけじゃないし」片桐彩音はショートボブをかき上げた。

「それより、依頼のメール読む?」美咲は椅子をくるりと回して彩音に向いた。肩に掛かるミディアムヘアに黄色いワンピース。おっとりとした顔。どこからどう見ても、穢れなき深窓の令嬢風だ。


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駅の階段を降りると、少しうねった緩やかな下り坂が伸びている。
私鉄沿線特有の小さなお店が連なる商店街を抜けると、道路はやがて平坦になり閑静な住宅地へと入る。

目印の教会の先を右へ折れると、美咲の部屋へ向かう少し急な上り坂が現れる。



片桐彩音は立ち止まり、坂の上を見上げた。

坂を登り切った向こうには海が開けているような気がしてならない。青く澄み切った海が。

そんな町で生まれ育ったわけではないのに、自分でも不思議な連想だと感じる。

GREGORY(グレゴリー)のバックパックを両手でひょいと担ぎ直して、彩音はうつむき加減に坂を上った。

秋の乾いた風が髪を乱し、再び立ち止まった彩音は空を見上げた。
青空をカンバスに、時に大きく、時に小さく、まるで龍の生まれ変わりのように揺れる枝葉は、ザワザワと音を立てる。
それは幼い頃に母の背で聞いた、木枯らしの音を連想させた。



この世の恐れというものをすべてなぎ払い、心までとろかすほどに、母の背は暖かだった。
手探る先にはいつも、揺るがぬ愛があった。

ママ……。

ふうっと息を吐き、気を取り直すように足元を見た彩音は、さ、と小さく呟き、また歩き始めた。

たどり着いたマンションのエントランスでオートロックの暗証番号を押し、携帯を掛けながら奥のエレベーターに向かった。

「あ、あたし。今エレベーターに乗るから。ポストにガスの請求書が入ってたから、持ってく」
「分かった。ありがと」美咲の柔らかな声が耳元で聞こえた。

またもや修羅が、目を覚ます……。

携帯をジーンズのポケットに押し込んだ綾音は、エレベーターのボタンを押した。


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あなたは知っていますか?

「今年の夏は、どこか南の海に行こう」といったあなたの言葉を、私がとても楽しみにしていたことを。
あなたの想像を遙かに超えるほどに、心待ちにしていたことを。




結局あなたに見せることはできなかったけれど、リボンのついたネイビーブルーの水着もビーチサンダルも麦わら帽子も買ったことを。そしてそれを何度も鏡に映したことを。

あなたは憶えていますか?

あの年が、猛暑日という言葉が使われ始めてそれほど経っていない夏の日だったことを。

焼け付くような暑さの東京で、あなたがこの世を去ったことを。
いえ、もっと正確にいえば、あなたが見知らぬ誰かに殺されたことを。

夕暮れ時の交差点で、歩行者用信号が変わるのを待っていたあなたを、飲酒運転の暴走車が突如襲ったことを。
そしてあなたは、即死したことを。

いえ、憶えていなくてもいいのです。そのほうがいいのです。
痛みすら感じずにあなたが逝ったと信じることが、唯一の救いなのです。

あなたにはまだ、私へのお土産のケーキを持ったままの、優しげな顔でいて欲しいのです。
あなたの顔が驚愕と苦悶で歪んだかもしれないと思うだけで、心が張り裂けそうなのです。




悲しみはやがて憎しみに変わり、私はその日から、修羅になりました。
あなたに会えなくなった8月に、血の雨を降らせるために修羅の道に入りました。

そんな愚かな私を、どうか叱らないでください。
馬鹿だなと、いつものように笑ってください。髪をひとつ撫でてください。

そのとき私は、普通の女に戻るでしょう。あなたが愛してくれた、普通の女に。




僕はふうとため息をついた。

修羅――阿修羅。
醜い争いや果てしのない闘い……。

修羅の下りを読む限り創作と思われた。けれど、容易に探せそうもないサイトにわざわざ物語を書くだろうか。
読者を排除するような作りのところに、あえて物語を……。

これは実話なのかもしれないと、僕は思った。

それは、「Vendetta 8月に降る雨は」というタイトルのブログだった。


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As You Like It
お気に召すまま。

ログイン画面をしばし見つめ意味を探った僕は、はたと煙草をもみ消し、SNSで使っているハンドルネームとパスワードを入力してみた。

はたして、僕の打ち込んだパスワードはたちどころに許可され、サイトが開いた。

何でも良かったのだ。これはたどり着きたいという人だけを受け入れる、見せかけの壁だったのだ。

経由した二つのブログと、パスワードの迷宮。僕はそこに、ただならぬ気配を感じた。



管理人と称する女性の上半身写真は座った姿勢で顔を背けている。というか、窓の外でも眺めているようにもみえる。
肩に流れるミディアムヘアを耳に掛け、シルバーのイヤリングが光っている。

顔はしかとは映っていないが、全体から受けうる柔らかな印象は、然るべき家柄のお嬢さんという表現が似合いそうな人だった。

僕は寂しくも激しいその文面に、引き込まれるように見入った。

これは、実話だろうか……。


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クリックして飛んだ先は、またもやブログだった。目線サングラスを掛けた自撮り写真が、アイコンに使われている。整った顔立ちをした若い女性だった。

プロフィールの欄に、GREGORY(グレゴリー)のバックパックを背負ってると、ランドセルと勘違いされるぞ! レディを愚弄する奴は燃やす♪ と書いてある。ちょっと男勝りでお茶目な女性のようだ。

記事の遥か下、誰もスクロールしないだろう位置にそれがあることを、僕は先に確認した。
同じく「Vendetta」

それから、記事を飛ばし飛ばし読んだ。天気やファッションや心模様……煙草をアイシーンからアイスパールに変えたこと、気が早いけど、来年の初詣はどこへ行こうかなということ。格別変わったことはない内容だった。

最新記事の終わりに、黒い子猫の名前はヤマトでいいよね~♪ と書かれている。

どうやら友人がつけた名前がお気に召さないらしい。前のブログの猫と同じだろうか、確かに黒い子猫だった。



Vendetta

僕はそれを、今度はためらうことなくクリックした。
現れたのは、逸(はや)る僕の心を挫くには充分な、よく見かけるものだった。

Username●●●●●●●
Password ●●●●●●●

そんなもの知るわけもない僕はそれを閉じかけたが、その下の一文に目がとまった。

As You Like It

シェークスピアの戯曲――日本語タイトルは、お気に召すまま……。


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日が短くなるとともに日差しは和らぎ、朝晩は肌寒さを感じるようになった。
猛暑続きだった日々が遠い昔のことのように思える。

晩夏をこの身に感じることさえなく、僕は秋のただ中に放り出されていた。



あれから時々、僕は亜里砂にメールを送った。けれど、それが届くことはなかった。彼女が送ってくれた文面は、今でも僕の携帯に残っているというのに。

もちろん、これは家族の誰にも伝えていない。いたずらに心騒がせることになるだけだから。

〈おにいちゃん('-'*)オハヨ♪ お誕生日プレゼントはなにかな? 奮発してね (´0ノ`*)ホッホッホ!!〉

暇さえあれば、僕はそのメールを読んだ。

そんなある日、僕がとあるブログを見つけたのは偶然だった。

内容は日常を綴った何の変哲もないブログだったけれど、ヒットしたのは、そこに検索したキーワード「パラレル・ワールド」が含まれていたからだった。



パラレルワールドはSFでよく知られた概念であるだけでなく、実際に物理学の世界でも理論的な可能性が語られている。
例えば、量子力学の他世界解釈や、宇宙論の「ベビーユニバース」仮説などである。
ただし、多世界解釈においては、パラレルワールド(他の世界)を我々が観測することは不可能でありその存在を否定することも肯定することも出来ないことで、懐疑的な意見も存在する

―Wikipedia―より


ブログの主の最新記事の最後は、煮干しはチビクロに食べさせておけばいいじゃない、と結んであった。煮干し風味のラーメンが口に合わなかったようだ。



パラレル・ワールドに関しては、すでに僕の手にした内容だったので参考にはならなかったが、その記事のほぼ欄外に不思議なワードが記されていることに気がついた。

「Vendetta」

復讐・報復・仇討ち――自称ちょっとだけ小太りという男が、ひとりでラーメンやスウィーツを食べ歩く記事には不似合いな言葉だった。

文字の色合いからリンクされていることが分かる。僕はそれをためらいがちにクリックした。


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恋愛の相談は友達にする?家族?自己解決? ブログネタ:恋愛の相談は友達にする?家族?自己解決? 参加中

私は自己解決派!


恋愛の相談って……相談する前に、それぞれ答えは持っていたりするんじゃないかなあ。
だから、友人の助言に「違う」って思ったり、「そうだ」って納得したりする。

押しとどめて欲しかったり、背中を押して欲しかったりするのはそのせい。
〝欲しい〟は思いをつかんで欲しいの〝欲しい〟、だから答えはいつも自分の中にある。

さっきACジャパンのCFが流れてた。相田みつおって、ちゃんと読んだことがない。でも、気になる言葉と映像だったから急遽書いている。

セトモノとセトモノとぶつかりッこすると
すぐこわれちゃう
どっちか やわらかければ だいじょうぶ
やわらかいこころを もちましょう
そういう わたしは いつもセトモノ




秋は深まり、冬が近づいてきました。
みなさま風邪など引きませんように。


ナレーションは吹石一恵らしい。おめでとちゃん。


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かつての我が家の表札は、当然のことながら違う名前になっていた。そう、ここに亜里砂がいるはずもないのだ。

それでも僕はインターフォンに目を移した。息が整うのを待って、少し震える指でそれを押した。

「はい」女性の声が返ってきた。
「こんにちは。山脇と申しますが、亜里砂ちゃんはいますか?」
「はい?」
「山脇ですけど、亜里砂ちゃんはいますか」
「家を間違えていませんか?」インターフォンは切れた。

何度も振り返り、やるせない思いを抱えながら、かつての我が家を後にした。

交差点で立ち止まり、メールを打った。けれど、それは届かなかった。

家を出た後、違う世界に僕が迷い込んだのか。妹が、というか、家族ごと僕のいる世界に迷い込んできたのか。いずれにせよ、僕たちは相まみえることのない元の状態に戻ってしまったようだ。

諦めきれない僕は公園に戻り、携帯を取りだし同じ文面を再び送った。
〈これから駅前のケンタに来られるかな? プレゼントになにか買ってあげるよ〉

はたして返事はすぐにやってきた。
〈支度があるから、じゃあ、30分後にケンタ前で。午後から用事があるからね〉

僕は駅前広場の花壇の縁に腰を下ろした。何度も目にする腕時計の針は、なかなか進まなかった。

時間が近づき立ち上がった僕は、ケンタッキーに向けて歩いた。歩行者用の信号が赤に変わり歩みを緩めた。

そのとき、僕の目は通りの向こうの亜里砂を捉えた。

遠目ではあるけれど、薄い黄色のノースリーブのワンピースを着たアリに間違いない。
僕は万感の思いでその姿を見つめた。

大きくなった。綺麗になった。とにもかくにも、そこにいる君は、何事もなく生きてきたのだ。

法廷のシーンが浮かぶ、母の無念の呟きが聞こえる、父のため息を感じる。亜里砂……ぐっと目頭が熱くなる。

早く会って言葉を交わしたい。声が聞きたい。笑顔が見たい。
気が急いて知らず知らずに足踏みをしている自分に気づく。

都バスが停留所に止まり、アリの姿を隠した。僕は思わず舌打ちをした。



青に変わった信号を僕は小走りになった。信号を無視した自転車にぶつかりそうになる。前から歩いて来るグループが進路を塞ぐ。

右に左に走り抜けた先を、僕は心から溢れる笑顔で見た。けれど、そこにアリの姿はなかった。

「あのーすみません」店内を通りがかった女性スタッフに声を掛けた。
「ここに黄色いノースリーブのワンピースを着た女性が立ってましたよね」
「ああ、すみません、気がつきませんでした」

それきり、メールは通じなくなった。

突然降り出した8月の雨に濡れながら、僕は駅に歩いた。
アリが立っていた場所をずっと見つめ続けた。

たとえ会えなくても、幸せに生き続けて欲しいと、君のただひとりの兄として心から願った。

―FIN―

話は徐々に本編に進みます。

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電車を乗り継ぎ、かつて暮らした町に僕は降り立った。本屋の前を通りがかったが、メールの件があったため立ち寄らなかった。

僕と妹が生まれ育った町並みに大きな変化はなく、亜里砂の面影があちらこちらに浮かぶ。

誰かの誕生日にはよく訪れた回転寿司、小さい頃はとても豪華な中華料理店だと信じ込んでいたラーメン屋。家族で訪れたことはなかったが、中学生だった僕の胃袋を満たした牛丼屋。

僕は店先を覗き、看板を見上げ、小さな交差点で立ち止まっては、家族が欠けることなく揃っていた頃の風景をなぞった。
けれどその間、僕はずっとメールのことを考え続けていた。

携帯を取り出し、僕は公園のベンチに腰を下ろした。そして、読み返す。

煙草に火をつけ空を見上げた。8月の空に白い雲が浮かび、一片の外連味(けれんみ)もない青がどこまでも広がっていた。吐き出した煙が風に運ばれ、雲の白に溶け込んでゆく。

手の込んだいたずらか。

がしかし、僕の周りにそんな悪質な人間がいるとは考えられない。そもそも、妹の存在を知らぬ人が大半だし、その名を知る人は皆無だ。

それに、すでに失われてしまったアリのメールアドレスなど誰が知ろう。
考えはまた、すでになぞった堂々巡りを始める。

ようやく決めた文面を、煙草をくゆらせながら返信する。それはとても短いものだ。

〈遅くなって申し訳ないね。今、どこにいる?〉
折り返しのメールは、すぐに僕の携帯を鳴らした。

〈返事遅ッ! (◎`ε´◎ ) まだ家だけど、おにいちゃんはどこにいるの?〉

おそろしいほど早く、返事は僕の携帯を震わせた。目にもとまらぬほどのスピードでメールを打つ亜里砂の指先に、舌を巻いたことがあるのを思い出した。

二本目の煙草に火をつけた僕は考えに考え抜いて、事実を送った。嘘なら見破れる返事を。

〈いつもの公園だよ〉
再び、またたくまにメールが着信する。

〈そこまで来てるんなら、なんで家に帰ってこないの? また本でも読んでる? それとも、ひとり寂しくブランコでも漕いでるの? このクソ暑い日にご苦労なこった o(@.@)o〉



嘘を見破るはずのメールが、あっさりと真実を証明した。

公園はいくつかあるし、そのすべてを僕たち家族は訪れた。家から最も近い区立○○公園。僕と亜里砂はここを、いつもの公園と呼んでいた。それも、二人だけに通じる言葉として。

それにもうひとつ、明確なメッセージ。
ブランコのある公園は……ここだけだ。

亜里砂はいる。以前の家にいる。僕は弾かれるようにベンチから立ち上がり、走り出した。

点滅する大通りの信号を駆け抜け、小さな通りに入る。息を切らせながら静かな住宅地をひた走った。射貫くような日差しに汗が首筋を伝う。ショルダーバッグがひどく邪魔だ。袈裟にかけ直したバッグを後ろに回し、走った。

僕らの家だったところはすぐそこだ。


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