「ううん、読まない」彩音は首を振ってソファに横になった。
「ねーヤマト。読まなくてもいいよね」胸に抱え込んだヤマトがみゃあと鳴く。
「苦しくなるから?」
「そう。読ませようとするってことは、引き受けるんでしょ」
バックパックを枕に美咲を見た。ゴロゴロと喉を鳴らすヤマトが甘噛みをする。
「そうね」
「正しいんでしょ? 正義なんでしょ?」
美咲はこくりと頷いた。
「生かしちゃおけない奴なんでしょ? ちゃんとリーディングしたんでしょ?」
美咲は再びこくりと頷いた。
「だったら余計に読まない。ねーヤマト」
彩音が認める美咲の能力に間違いはない。
物や人に触れて過去の記憶を読み取る能力者を、一般的にサイコメトラーと呼ぶ。これは残存思念を読むということになるのだろうか。

けれど彼女は触れもせずに、人や物の過去と現在を読み取る。
個人のブログを片っ端から読んで、綾音の能力と現在位置を知ったのはこの力によるものだ。
そんな彼女の突然の訪問を受けた人物が、もうひとりいる。
そのとき、インターフォンが鳴った。
「川村君だ」彩音は立ち上がり、ヤマトを抱えたまま玄関に向かった。
「やあ、彩音」川村義人がガリガリ君を片手に微笑んだ。
「もう夏じゃないのに、何考えてんのよ」
綾音は、川村の手先で左右に揺れるガリガリ君を凝視した。
「ラーメンのどんぶりを持って立ってるよりましでしょ」
「なんて自虐的なレトリックを使うの、あんたって……」
ヤマトが綾音の腕の中で、同意するようにみゃあと鳴いた。
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