愛は4年で終わる⑩-ヴォークルール | 風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」

 

ヴォークルール

 

 デュラン・ラクサール

 

 ジャンヌの叔父である「デュラン・ラクサール」は、その当時30代前半でした。ジャンヌが聞いたという「声」の話を最初に信じた人でした。

 

 彼女のために馬を買い与えたり、後年の「シャルル7世」の戴冠式の際には、ドンレミ村からジャンヌの両親を連れて面会をしています。

 

 1428年、キリスト昇天祭(Ascension)の5月13日ごろ、ふたりは「ヴォークルール」に到着しました。

 

 しかし、勇んで面会に行ってみれば、守備隊長の「ボードリクール伯」は、叔父ラクサールにこう言います。「平手打ちをくわせて追い返せ」と。

 

 ジャンヌは叔父の腕を引き帰ったと伝わります。




「ヴォークルール」

「ヴォークルール」に宿をとったジャンヌは、叔父とふたりで、何か月もの間「ボードリクール」守備隊長の元へと通い面会を求めます。

 

 王太子に神の声を伝えにいくことや、そのために、守備隊長の城主「ボードリクール」に手配りをしてもらわなければならないこと。

 

 ジャンヌは、近隣で一躍その存在を知られることになります。


 しかし、神の声を聞いたと訴えるジャンヌに「ボードリクール」は取り合いませんでした。

 

 翌1429年1月に再び「ヴォークルール城」を訪れたジャンヌは、ボードリクールに仕えるふたりの貴族と知己になりました。
 

 初めての戦友 ジャン・ド・メス

 

「ジャン・ド・メス」(ジャン・ド・ヌイヨンポン)はジャンヌに興味を示し、からかい半分で声をかけます。相手はなにしろ赤い服を着た少女です。しかし、その返答は彼を驚かせるのに十分なものでした。

 

 

「私はここ、王様の部下の町に来て、私を王様のところへ連れていくか、だれかに連れていかせてくれるようロベール・ド・ボードリクールに頼んだのです。しかし、彼は私にも、私の言葉にも関心を示しません。けれど、四句節の中日までには、たとえ足をすり減らしても王様の許へ行かねばなりません。実際フランス王国を復活させうるものは、国王にせよ、諸侯たちにせよ、スコットランドの王女にせよ、世界に誰もいないのです。私以外に王国を救う者はいないでしょう。が、私は貧しい母の許で糸を紡いでいる方がずっと良いのです。そんなことは私の仕事ではないのですから。けれどどうしても王様のところへ行って、その仕事をしなければなりません。私がそれをすることをわが主がお望みだからです」

 

 

 

 

 わが主とは誰かと問いかけたメスに、ジャンヌは神様ですと答え、このやり取りに感じ入った「ジャン・ド・メス」は己の従者の服を一式ジャンヌに与えます。

 

 ジャンヌ自身も男物の服の方がいいと答えたこともあり、男装のジャンヌ・ダルクがここに誕生します。

 

『そこで私 ─ここで証言しているジャン─ は、信頼の徴として私の手を乙女の手の中に置いて、神にかけて国王の許に案内しようと乙女に約束しました。

 そして私は、いつ出発したいのかと尋ねますと、

「明日より今日のほうが、明後日よりも明日のほうがよい(一日でも早く)」と彼女は応えました』

 

「ジャン・ド・メス」が自分の手をジャンヌの手の中に置いた行為は、彼女に忠誠を誓ったことを意味しました。

 

 

 預 言

 

 

 そのころには「王太子に神の声を伝えにいく」と決然とした態度を崩さないジャンヌの姿に、「ヴォークルール」の市民の間にも彼女の支持者が増えていきました。

 

「オルレアンで起こる戦いでフランス軍が敗北する」

 ジャンヌが受けた神からの預言を「ボードリクール」に伝えたのは、「ジャン・ド・メス」でした。前線からの報告でそれが的中したことを知ると空気が変わります。

「ニシンの戦い」は、「オルレアン包囲戦」の中で起こった、イングランド王国軍とフランス王国・スコットランド王国軍の戦いです。

 

 補給物資であったニシンが戦場に散乱したことから、後世、ニシンの戦いと呼ばれました。


 遠くオルレアンの地で起こる戦闘の勝敗を言い当てたジャンヌに、ボードリクール伯は驚き、シノン訪問を許可することになりました。

 

 

─To be continued.─