天使とキューピッド
どこか難解そうで近寄りがたいのが「旧約聖書」。読み通すには難物ですが、エピソードを辿れば内容が見えてきます。
本筋とは外れますが、「天使」について少し。
天使は「ユダヤ教」「キリスト教」「イスラム教」の聖典などに登場する神の使いです。
「キリスト教」がローマの国教になった4世紀ごろ、天使に翼がつきました。初期の宗教絵画のほとんどが男性で、翼がないと、ただのおじさんにしか見えないからです。
サモトラケのニケ
「天使の翼」は、勝利の女神「ニケ」(ニーケー)がモデルとされています。「ギリシャ神話」の12神「アテナ」(アテーナー)の随神として描かれる有翼の女神です。
「サモトラケのニケ」はギリシャ共和国の、サモトラケ島で発掘されました。頭部と腕は失われています。
「サモトラケのニケ」大理石で作られた彫刻作品。
分割したパーツで出来上がっています。(ルーヴル美術館)
紀元前200–前190年ごろの制作と推定されていますが、作者は不明です。空から船のへさきに降り立った様子を表現したものと考えられ、ギリシャ彫刻の傑作といわれます。
「アテナの手のひらに乗る随神ニケ」
「サモトラケのニケ」は、発掘した欠片と、新たに作られた部分で修復され、現在の姿になっています。
おなじみのスポーツメーカー「NIKE」は「女神ニケ」からきています。英語読みで「ナイキ」です。ロゴマーク「スウッシュ」は「ニケ」の翼をデザインしています。
NIKEとオニツカタイガーとアシックス
1968年「鬼塚喜八郎」により「鬼塚商会」が設立されました。創業時の「オニツカタイガー」(現アシックス)の、アメリカにおける輸入総代理店・販売代理店として立ち上げられたのが「ナイキ」です。オニツカからスニーカーづくりのノウハウを学びました。
「オニツカタイガー」のブランド名を持っていた鬼塚商会が、1977年スポーツウェアメーカーの株式会社「ジィティオ」、ニットウェアメーカーの「ジェレンク」株式会社(ともに日本メーカー)と対等合併した段階から、株式会社アシックス「ASICS」になりました。
2002年に「オニツカタイガー」のブランドが復刻し、世界で高い評価を受けています。
「アシックス」はスポーツウェアブランド、「オニツカタイガー」はアパレルブランドの方向性を強くしています。
「ニケ」にまつわるものはまだあります。
ホンダ(本田技研工業)のロゴも「ニケ」の翼をイメージしたものです。
初期のころのロゴはもっと複雑でした。
「1955年」
「ホンダ・ドリームSA」
ドリームが発売された1955年、日本の経済が戦前を超え、翌56年の経済白書では「もはや戦後ではない」と記されました。
キューピッドはヴィーナスの子供
芸術作品の天使は、それぞれの画家のイマジネーションによるため、その姿は固定されたものではありません。
翼を持つ天使というと、「キューピッド」を連想された方もいるかもしれません。しかし、キューピッドは「天使」ではなく「神様」です。
『詩の寓意、キューピッドたち』ブーシェ
ローマ神話の恋の神「クピド」の英語名が「キューピッド」で、ヴィーナス(愛と美の女神アフロディーテ)の子です。
姿は弓矢を持つ裸の少年で、その矢に当たった者は恋心を起こすといわれます。ギリシャ神話の「エロス」に当たる神です。
どこかで どこかで エンゼルは~♪
中村あゆみも57歳になりました。
寄りすぎです。
キューピーは1909年、米国のイラストレーター「ローズ・オニール」が「キューピッド」をモチーフに、イラストとして発表したキャラクターです。
「キユーピー」が日本ではじめてマヨネーズを製造・販売したのは、1925年(大正14年)の3月のこと。正式な社名・商標は「キユーピー」で「ユ」が大文字です。
カメラの「Canon・キヤノン」と同じですね。「ヤ」が大文字です。キャノンは試作機「KWANON・カンノン」(観音様)からきています。
ロゴマークの由来はキューピー人形です。イスラム圏では、キユーピーが天使と誤解されないように、2013年から羽のないキューピーが描かれているそうです。
偶像崇拝と誤解されないように、とのことです。マヨネーズで偶像崇拝……マヨラーは危険です。
《これらの災害によって殺されずに残った人々は、その手のわざを悔い改めないで、悪霊どもや、金、銀、銅、石、木で造られた、見ることも聞くことも歩くこともできない偶像を拝み続け、
その殺人や、魔術や、不品行や、盗みを悔い改めなかった。》
<ヨハネの黙示録 9章20-21節>
ヨハネの黙示録は「ハルマゲドン」で有名です。
一般的に「ハルマゲドンの戦い」と使われますが、「全能なる神の大いなる日の戦い」。神の軍勢と地上の悪の勢力との戦いを指しています。
人類絶滅戦争などではなく、悪の勢力に絶滅をもたらす「神の審判」、すべての悪の終わりの日です。
ちなみに「ハルマゲドン」は「メギド山」メギドにある山という意味です。メギドはイスラエルに実在する地名で、ガリラヤ湖の南西40キロほどの所にあり、世界遺産に登録されています。
偶像崇拝の禁止は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教でも同じです。
ウィリアム・アドルフ・ブグローの絵画
ブグローの絵画を何点か載せます。肖像画のほか、天使やキューピッドも多く描いている「ブグロー」の絵画は、どれも繊細で美しいものです。
キューピッドのお母さんです。
天使とキューピッドの違いは、弓矢を持っているか否かでわかります。手に持つものが松明(たいまつ)だったりします。ブグローの描くキューピッドは、弓矢を持たないものが多いので、わかりにくいです。
『歌を歌う天使達』ウィリアム・アドルフ・ブグロー
キリスト教三大天使
天使は神の使い
キリスト教では「ミカエル」「ガブリエル」「ラファエル」を三大天使とし、ヒエラルキーのトップ3に位置しています。
『愛の秘密』ウィリアム・アドルフ・ブグロー
「愛」のタイトルのため、これはおそらくキューピッドです。
天使に性別はありませんが、一般に両性具有もしくは男性として描かれることが多いようです。神も同じく性別はありませんが、絵画では男性です。
『エロスの誘惑に抗する娘』ウィリアム・アドルフ・ブグロー
恋の矢を放とうするキューピッドと、それを防ごうとする娘のようです。
『休息』ウィリアム・アドルフ・ブグロー
大天使ラファエル
大天使ガブリエル
聖母マリアに、聖霊によってキリストを妊娠したことを告げたのは大天使「ガブリエル」です。このガブリエルだけは、女性として描かれることが多い天使です。『受胎告知』カラヴァッジオ(大天使ガブリエルとマリア)
大天使ミカエル
『悪魔を地に伏せる聖ミカエル』ラファエロ
悪魔は「堕天使ルシファー」です。もともと大天使長として天使の全てをまとめる存在だった天使のルシファーは、自分の力を過信して謀反を起します。
その「ルシファー」を、大天使の「ミカエル」が地獄に追放しました。
大天使「ミカエル」のお告げがあったとして建てられたのが、フランスの「モンサンミッシェル修道院」です。
「モンサンミッシェル修道院」
─To be continued.─