0.1ミリも救いがないのに0.1秒も見逃したくない。


「レクイエム・フォー・ドリーム」

REQUIEM FOR A DREAM

2000年 アメリカ

だいぶ前にレンタルして見始めたところ寝落ちしてしまい、そのまま忘れてたんですが、昨日ネットで「鬱映画特集」というのがあり、そこに本作が入ってないことを友人がプンスカ怒ってたので、思い出させてくれたが吉日として、鬱は急げとして、旨いアロノフスキーは宵に食えとして観た次第。



ジェニファー・コネリーってこんなにきれいだったっけ?



とかのんきに考えながら観てた僕がバカだった。



希望などない。あるのは夢の中にだけ。

いい方向に向かいそうな場面など一切ない。

どこかに戻ってやり直せる時点が無いかを考えながら観てたけどそんなものどこにもない。

0.1ミリも救いがないこの鬱展開は映画史上屈指。


こんな頃もあったのに…


こんな頃もあったのに…



ドラッグの摂取という4人のルーティンを、超絶技巧を駆使してリズミカルに見せ、冷蔵庫を代表とする恐ろしい幻覚症状を天才的センスで可視化。それらがもたらす高い中毒性という点において、傑作としかいいようがない。まいった。



開閉のリズム。

注射のリズム。

服薬のリズム。

覚醒のリズム。

Be excited,Be be excited(観た人なら分かるやつ)


ラスト約15分の展開は筆舌に尽くし難い。でも映画的に、どうしようもなく目を見張って興奮してしまう。


洋服屋を夢見ていたハリーもマリオンも、親友タイロンも、この3人の若者には、誰か救いとなり得る人間関係がなにもない。

ハリーの母サラも、夫を亡くして一人暮らしの孤独を抱えていた。楽しみは怪しいTVショーに赤いドレスを着て出演する日だけ。でも、ご近所との関係はあった。


4人同時進行で奈落の底のもっと深い場所へ落ちていった時。

3人の若者には、相当やばい自分と自分のしでかしたことに自覚がある。

一方サラは、ダイエットピルだと信じて飲んでいたものが実は覚醒剤だっだという犠牲者。そんなサラが友人の顔さえ忘れてしまったほぼ植物人間に…4人中最大の悲劇で、これは辛い。きつい。病院の外で泣く友人たちの姿がまた辛い。


サラを演じたエレン・バースティンの演技が凄まじい。かつて、「エクソシスト」で娘リーガンの変わりゆく姿に恐れ慄いた彼女がリーガン超え。もっと評価し続けないといかん。


細部に至るまで監督が完璧にコントロールしてる映画がやっぱりおもしろい。

「ブラック・スワン」しか観てないアロノフスキーだったけど、デ・パルマみたいにスプリットスクリーンを多用したり、絵作りのセンスが独特でいまさらながら気になりはじめたので「レスラー」観ようっと。



スプリットスクリーン観てて思ったんだけど、ソーシャルディスタンスとかリモートワーク場面を映画化するならこれかなり有効な手段。さすがデ・パルマ、先見性あるな。アロノフスキーもか。




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