涼風文庫堂の「文庫おでっせい」475 | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<カーン、

ガターリッジ>

 

1430「異次元の陥穽」 

キャプテン・ケネディ・シリーズ➊

グレゴリイ・カーン

長編   小隅黎:訳  早川文庫
 
 
航行中の宇宙船が突如救難信号を発し、
そして消えた。
 
調査船が急遽現場にかけつけたものの、
一切の手がかりもなく、
その行方はようとして知れない。
 
しかも、
同一空域における類似の事件が
すでに三件も発生しているのだ。
 
この難問に立ちうちできるものは、
大宇宙広しといえどもたった一人――
 
第一級の科学者の頭脳を持つファイター、
キャプテン・ケネディをおいてほかにない。
 
変身自在のカメレオン人間ヴィーム・ケミル、
高重力惑星出身の怪力男ペンザ・サラトフ、
超一流の科学者ジャール・ルーデン教授
の三人をひきいるケネディは、
この未曾有の難事件解決に乗り出したが……!
 
                        <ウラスジ>
 
出ました。
堂々の ”パッチモン” 。
1973年作。
 
まあ、どこから見ても<キャプテン・フューチャー>の……。
 
 
 
そして――。
 
 
キャプテン・ケネディ = キャプテン・フューチャー
ジャール・ルーデン  = サイモン・ライト
ヴィーム・ケミル   = オットー
ペンザ・サラトフ   = グラッグ
 
にそれぞれ対応している始末。
 
まあ、
<キャプテン・フューチャー>は
<ドック・サヴェッジ>からインスパイアされたって言うし、
いろいろありますな。
 
それを踏まえてなのか、
この<キャプテン・ケネディ・シリーズ>の
プロモーションの文句がまた振るっています。
 
このシリーズは
SF専門のペーパーバック「DAWブックス」から
出版されたということですが、
その際の宣伝文句がこちら。
 
 
もしあなたが『宇宙大作戦』のような
宇宙ドラマをお望みなら……
もしあなたが『ペリー・ローダン』はちょっとばかり
偏執的――でしかも窮屈――だとお感じなら……
もしあなたが『キャプテン・フューチャー』は少々時代遅れで、
しかも子供っぽいとお思いなら……
もし『ドック・サヴェジ』は
ほんとうのSFではないという気がしたら……
 
DAWブックスの新しいスペースオペラ・シリーズ
『キャプテン・ケネディ』は
そういうあなたのためのシリーズです!
 
 
なんか怪しい謳い文句に聞えますが……。
 
<追記>
さてさて肝心の作者について、
この時点(1975年/昭和五十年)では
こう説明されています。
 
……作者のグレゴリイ・カーンについては、
このシリーズのためのペンネームという以外には、
何もわからない。
 
 
最初は<ローダン・シリーズ>みたいに
何人かの作者のリレー執筆かと
訳者の小隅黎さんは思ったらしい。
 
まあ小隅黎さんも ”コズミック・レイ(宇宙線)” から来てる、
柴野拓美さんのペンネームだもんね。
 
……とかなんとか素通りしていたら、
グレゴリイ・カーンの正体は、
のちに創元推理文庫から
<デュマレスト・サーガ>
と言うシリーズを山ほど(31巻!)刊行する、
E・C・タブ ってことが判明。
(と、言ってもわたくし、全く読んでおりません)
 
 
幼い頃、生まれ故郷<地球>を離れ、
遠い宇宙の一角で育った男、アール・デュマレスト。
彼は故郷を求めて苦難の旅に出るが、
<地球>のありかを知る者は誰ひとりとしていない。
――。
 
<デュマレスト・サーガ 1/『嵐の惑星ガース』解説目録より>
 
 
すべての題名に ”惑星” が付いており、
一話完結系のスペースオペラのよう。
 
『嵐の惑星ガース』
『夢見る惑星フォルゴーン』
『迷宮惑星トイ』
……
以下続く。
 
”故郷(地球)をたずねて○○光年”
 
って言ったところでしょうか。
 
ちょっと読んでみたい気がするけど、
これも廃刊の嵐に巻き込まれたようで……。
 
しかし個人でこれだけの作品量を上げるなんて、
相当ですね。
 
<余談>
ちなみに私の<キャプテン・ケネディ>探訪は
次の『サーガンの奴隷船』で終了いたします。
 
 
 
 
 
 

1431「ルーマニア潜入作戦」 

ミクロ・スパイ・シリーズ<1>

リンジイ・ガターリッジ
長編   村上博基:訳  早川文庫
 
 
人口爆発に対処すべく、
イギリスでひそかに研究されていた人間縮小計画。
 
その最初の実験に挑戦したのが、
情報部員ディルク、
若手生物学者、
プロハンター
の三人であった。
 
かれらの世界は一挙に三百倍に拡大され、
巨大な怪獣と化した赤アリやアリジゴク、
クワガタムシの昆虫と戦う、
厳しい訓練期間を終える。
 
そしてかれらが最初の任務として依頼されたのは、
極微であることを利しての諜報活動だった。
 
ところがルーマニアに潜入して
”ミクロ・スパイ” 作戦を開始するや、
そこにはガリヴァーの世界よろしく同じミクロの敵が、
眠れるガリヴァーを護っていたのだ!
 
                        <ウラスジ>
 
 
主人公マシュー・ディルク。
年齢ー37歳
頭髪ー後退。
云々。
 
「人体縮小はわれわれを二十世紀最大の脅威、
人口過剰から救ってくれるだろう」
ディルクはマシス教授の真剣な顔を思い出した。
<中略>
「率直にいおう。
われわれの技術は、動物実験では完成したのだが、
人間の縮小はきみが最初になる。
きみは先覚者集団の先頭、
飢餓と領土戦争のないあたらしい社会の
最初の人間になって……」
 
 
と、いうわけで、
前半は三百分の一の大きさになったディルクの
適応訓練の模様が描かれます。
 
空の薬のカプセルに入ってアリの巣に運ばれ、
隙を見てアリマキの尻から分泌物を吸い、
昆虫の肉や卵を喰らい――。
 
とファーブルもびっくりの昆虫世界の実物大フィールドワーク。
 
後半のスパイ作戦にもつながる
「武器」の扱いも、
ワラジムシの足でクロスボウの矢、
ミツバチの毒で毒矢の製造、
と冒険野郎マクガイバーなみのアイデアで
縮小世界を堪能していたんですが――。
 
後半は二人の仲間と
いよいよ当時東側だったルーマニアへ潜入。
(チャウチェスク時代か)
 
そこで相手側のミクロ・スパイ(いるんだなあ、これが)
と、なんだかんだあって、
仲間を二人失い、
表紙にも描かれている黒人の女性、
ハイアシンス(ウガンダ出身でブカレスト大学の学生)
とともに脱出。
 
ハイアシンス(多分ヒアシンスの事だろうと思う)は、
次回作『カナだ森林作戦』にも登場します。
 
ソ連とウガンダって蜜月時代があったんですね。
 
エスピオナージを読むなら
この辺の事情は知っとかなきゃいけないんだ。
 
1960年代はアフリカの年。
 
<余談>
ミクロ人間あれこれ。
 
➊『ミクロの決死圏』
映画 1966年
注射器に潜航艇が入るレベルの縮小。
のちにアシモフがノベライズ。
近日登場予定……か。
 
➋『インナースペース』
映画 1987年
こちらも潜航艇が注射器に入る縮小。
 
➌『ミクロキッズ』
映画 1989年
6㎜サイズに縮小。
 
➍『1/8計画』
テレビドラマ ウルトラQ 第17話
……1/8はかなり大きい。
 
➎『縮みゆく人間』
小説 リチャード・マシスン
 
 
➏『ミクロイドS』
アニメ・漫画 手塚治虫原作
 
 
<追記>
あとは中学の時、本屋で立ち読みした、
『小さくなあれ』(正しくは『小ちゃくなあれ!』らしい)
という漫画の残酷描写がトラウマになっています。
 
人間を小さく出来る能力を持った少年が
徐々に残虐非道になってゆく物語。
 
手足や首をもぎったり、尖った鉛筆の的にしたり――。
 
ラストにナチの実験と重ねていたような……。
 
うう。
えぐっ。
 
<余談>
表紙は角田純男先生。
いっとき<SFマガジン>の表紙を
担当されていたことでも有名です。
 
が、この表紙、
逞しい男の足もとにしなだれかかる美女――
 
この構図は、
アメリカのハードボイルドやスパイ小説の
ペーパーバックによく見られると
個人的には感じました。
 
よって、SFよりもそっち寄りの感覚で描かれたのかなあ、
と思った次第です。
 
はい。