涼風文庫堂の「文庫おでっせい」460 | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<梶山季之、

ハミルトン>

 

1388「赤いダイヤ」(上)鬼に金棒編

梶山季之
長編          角川文庫
 
 
小豆は天候に左右されやすい穀物の代表だ。
 
天候不順の年の小豆値は、
信じられないほどのバカ値をよぶ。
 
一攫千金を夢みる人たちは、
ダイヤモンドに魅せられるかのように、
<赤い魔物>の小豆にすい寄せられる。
 
――算盤づくで世の中を生きてきた
猪首の小男 木塚慶太は、
”アメ横” を根城にして活躍するブローカーだ。
 
金儲けができるところにはとんだ嗅覚を働らかせ、
ひょっこり現れるのでトランパー(不定期船)のあだ名がある。
 
その彼が商売に大失敗、
自殺でもしなければどうにもならないほどの
借金をかかえた。
 
28才の素頓狂な彼の人生もこれで終り。
 
遺書を書いて、
住みなれたアパートを後にしたのだが……。
 
著者会心の痛快長編小説の最高傑作。
 
                        <ウラスジ>
 
 
 

1389「赤いダイヤ」(下)猫に大判編 

梶山季之
長編   村上兵衛:解説  角川文庫
 
 
自殺に失敗して、
小豆の相場師 森玄一郎に救われた木塚慶太。
 
どことなく不敵な小男の第二の人生が始まった。
 
――小豆の主産地の北海道が霜害、
しかも台風の追い打ちをくらって、大凶作は決定的!
 
生まれついてのすばらしい金儲けのカンがたよりの嗅覚人間、
意気さかんな慶太が見のがすはずはない。
 
だが、
<赤いダイヤ>の恩恵にありつこうと、
鵜の目鷹の目の相場師の暗躍、
この世界はじまって以来の大波乱!
 
                        <ウラスジ>
 
 
商品先物取引の対象物って、
じつは結構色々あるんだけど
(他の農産物や金・銀といった金属まで)、
この作品のおかげか、
”小豆相場” 一択になってしまったぐらいの
観があります。
 
もひとつ、
”おいしょう(追証)” という言葉も
耳に残りました。
 
「これが払えないと、奥さん……」
みたいなサスペンス・ドラマが横溢してましたな。
 
さて、
この作品には
モデルとなる実在の人物が二人登場している、
ということです。
 
<ウラスジ>にもあった森玄一郎と、
 東京穀物取引所理事長の松崎辰治。
 
森玄一郎=吉川太兵衛
松崎辰治=山崎種二
 
……とか言われても、
わたし、そんなに詳しく知らないので、
たまたま読んでいた
『相場師』 生形要 (日経新書)
から抜き書きを――。
 
……やがて、大きな混乱とともに戦争も終わり、
統制経済のワクがはずされて、
昭和二十七年から大豆や小豆など
農産物の先物取り引きができることになった。
彼(山崎種二)は選ばれて、
東京穀物商品取引所の初代理事長になった。
<中略>
再開された農産物市場は、
主食の米から副食物の小豆に変わったとはいえ、
相場という本質的な流れに変わりはなかった。
こうして、
”赤いダイヤ” の仕手戦が展開された。
<中略>
昭和三十年五月ごろ、
東京穀物商品取引所開設以来最大の仕手戦が始まった。
買い方の主力は吉川太兵衛らだった。
そして、
売り方は当時理事長だった山崎種二らである。
 
 
この戦いは
児玉機関や国会まで巻き込んだ騒動となりますが、
最期は円満解決になったようです。
 
<余談 1>
厖大な数を誇る梶山作品ですが、
私は数作しか読んでいません。
『黒の試走車』
『赤いダイヤ』
『悪人志願』
あと、ポルノっぽい短編集。
 
このうち『悪人志願』もモデル小説っぽいんですが、
あまりにえげつなくて、
事実と虚構の配分にいささか問題があるのでは、
と思ってしまいました。
 
この『赤いダイヤ』も事情通からすれば、
そう感じてしまうのかも知れません。
 
<余談 2>
オンタイムではなく、
真夜中の再放送で見た白黒ドラマ、
『赤いダイヤ』。
主演は怪優・大辻伺郎さん
連ドラ初出演の野際陽子さん。
 
 
大辻伺郎さん。
……自殺しちゃったな。
 
野際陽子さん。
……この頃にはもう「キイハンター」のイメージが付いてたから、
ちょっと新鮮な感じで見ていました。
 
 
 
♫ 赤い 赤い ダイヤ 誰のもの ♫
 
主題歌を歌ってたのは尾藤イサオさん。
 
 
 

1390「恐怖の宇宙帝王」

キャプテン・フューチャー

エドモンド・ハミルトン

長編   野田昌宏:訳  早川文庫
 
 
太陽系政府ビルに突如現れた毛むくじゃらの大猿――
 
人間の服装をした ”それ” は、
必死で何かをしゃべろうとして、死んだ。
 
「木星……先祖帰り……宇宙帝王が……」
この奇怪な事件こそ、
現在わが太陽系最大の惑星に蔓延しつつある
原因不明の恐るべき疫病の
結果であることを見てとった政府主席は、
ついに意を決して北極の信号灯台より月面に合図を送った。
 
キャプテン・フューチャー、応答せよ!
貴下の出動を乞う!出動を乞う!
 
かくして極悪非道の姿なき魔人
<宇宙帝王>の正体を暴かんものと、
科学の天才にして正義の守護者、
若き英雄キャプテン・フューチャーの
痛快極まる大宇宙活劇が展開される!
 
                        <ウラスジ>
 
かの名高き、スペース・オペラの開幕。
 
「宇宙帝王」とは何者か?
 
と、それはさておき。
 
まずは文庫に収録されている、
イラストによる登場人物たちを。
 
 
 
ちょっと見えにくいかなあ……。
 
しばらくこのシリーズは続くので、
その際に個別に紹介していこうと思います。
 
ではまず、主人公。
 
 
<キャプテン・フューチャー>
 
幼少に両親を悪漢に殺され、
以後サイモン、グラッグ、オットーの三人に育てられた
天涯の孤児。
成人するや、宇宙の正義と平和のため
自らキャプテン・フューチャーと名乗り、
敢然と悪に挑戦する赤髪の若き天才科学者。
本名カーティス・ニュートン。
 
 
この文庫を引っ張り出すのは四十年振りぐらいなので、
本名の「カーティス・ニュートン」というのを
すっかり失念していました。
 
実の親以外に育てられた、いうと
「ターザン」や「スーパーマン」がいますね。
 
次回はサイモン・ライト。
 
<余談>
イラストは、
”アメコミ風” の画風で知られる
水野良太郎 画伯。
 
この感じ、鳥山明先生描くところの、
<スッパマン><パーザン>
に繋がりますね。
 
 
<追記>
「キャプテン・フューチャー」だけでなく、
これからしばらく ”スペオペ”(スペース・オペラ)ものが
続きます。
 
……「ローダン・シリーズ」
に手を出さなかったのが、今となっては救いかも。