<ハインライン、
ゼラズニイ>
1423「宇宙の孤児」
ロバート・アンソン・
ハインライン
長編 矢野徹:訳 早川文庫
人々はその<船>こそ
一つの世界そのものだと信じて、
種族ごとに集団生活を営んでいた。
森があり農場があり廃墟があり迷路があり……
そして森には恐るべき食人種を奴隷とする
双頭のミュータントさえいた!
だが実は、
これこそ遠い昔に
人類がはじめて恒星空間へ進出しようとした
最初の恒星宇宙船だったのである!
航行途上の反乱で航宙士のほとんどが死に絶え、
長い年月の間には<船>は
中世的迷信の世界に変貌してしまったのだ。
だがある日、
一人の青年が<船>内の探検に乗り出し、
はじめて埋もれた真相を掘りおこした……。
巨匠ハインラインが描く壮大無比の宇宙ドラマ!
<ウラスジ>
元祖(?)超巨大宇宙船。
”ひょっこりひょうたん島の惑星版”
と、言い変えてもいいかも。
アレクセイ・パンシンの
『成長の儀式』にて言及。
もひとつ。
次に紹介する『メトセラの子ら』と
ひっくるめたような作品が、
ライバーの『放浪惑星』。
……と思ったら、まだやってなかった。
ですから軽く内容を――。
不死の達成。
しかしそれは老人支配の世界。
それに反発する若者たち。
その若者たちが ”乗り込んだ” のが、
「放浪惑星」ということ。
はい。
<ハインラインの ”未来史” について>
ええ~。
この概要については、またまた
『世界のSF文学:総解説』に全面依頼。
【西暦二六〇〇年までの人類を描く
壮大な宇宙近未来史】
ロバート・A・ハインラインの<未来史シリーズ>には、
作者の初期の作品の多くがふくまれている。
各作品は『月を売った男』や『動乱二一〇〇』に
掲載されている未来史年表が象徴するひとつの未来史のうちの、
それぞれの年代に位置づけられている。
年表は、西暦一九五一年から二六〇〇年までをおおうが、
作者の言によれば、
それは最初からできあがっていたものではなく、
<新しい作品を書くたびに、
前作との齟齬を生じないように
ちびちびと書き加えて作りあげたもの>
である。
<中略>
現在(1980年)、以下の紹介する五冊が
未来史シリーズとして刊行されている。
『月を売った男』 1950 短編集 創元推理文庫
『地球の緑の丘』 1951 短編集 早川文庫
『動乱二一〇〇』 1953 長編及び中短編 早川文庫
『メトセラの子ら』 1958 長編 早川文庫
『宇宙の孤児』 1963 長編 早川文庫
<谷口高夫:『世界のSF文学:総解説』より>
……のちに早川文庫は、装いも新たに、
未来史① 『デリラと宇宙野郎たち』 短編集
未来史② 『地球の緑の丘』 短編集
未来史③ 『動乱二一〇〇』 長編&中短編
わざわざ ”未来史” と銘打って、
この三冊をを刊行しています。
『月を売った男』と『デリラと宇宙野郎たち』は、
微妙に収録作品が違っています。
その辺は『月を売った男』の時に詳細を。
<余談>
何はともあれ、
ハインラインの ”未来史” を
全部取りこんだ形となった早川文庫。
『宇宙の孤児』と『メトセラの子ら』には
”未来史” の表記がなかったけど、
その後どうしたんだろう?
再編成でもしたんだろうか?
1424「メトセラの子ら」
ロバート・アンソン・
ハインライン
長編 矢野徹:訳 早川文庫
医学がどれほど発達しようと、
人間にとって決して逃れられぬ運命――
死をまぬがれた人々がいた。
しかも、
その不死性は何ら意図的なものではない。
死をもたらすと同じように運命が彼らから死をとりあげ、
不死の遺伝子を与えたのだ。
だが、
ひとたびそうした ”長命族” の存在が普通人に知られた時、
全世界はねたみと憎悪のるつぼと化した。
そして、
”長命族” は対立を避ける唯一の道、
大宇宙への恒星間飛行へと旅立つのだった!
たえずSF界の話題を独占しつづけてきた巨匠ハインラインが、
ライフワークとして取り組んでいる
意欲的未来ドラマ・シリーズの劈頭をなす問題作!
<ウラスジ>
別名:「地球脱出」。
”メトセラ”
創世記第五章二十一節から登場。
エノクは六十五歳になって、メトセラを生んだ。
<中略>
メトセラは百八十七歳になって、レメクを生んだ。
メトセラはレメクを生んだ後、七百八十二年生きて、
男子と女子を生んだ。
メトセラの年は合わせて九百六十九歳であった。
そして彼は死んだ。
長寿の象徴。
日本で言えば武内宿禰かな。
メトセラの孫は重要人物(?)なので、
も少し続けます。
レメクは百八十二歳になって、男の子を生み、
「この子こそ、主が地をのろわれたため、
骨折り働くわれわれを慰めるもの」
と言って、その子をノアと名づけた。
メトセラはノアのお祖父さん。
”方舟” までは生きられなかったか。
も一つ、
メトセラ関係で言うと、
バーナード・ショーの
『メトセラへ帰れ』
(「思想の達し得る限り」
原名:メトセラ時代に帰れ)岩波文庫
があります。
第一部 第一幕エデンの園から、
第五部 紀元後三一九三〇年の
長寿人間の理想世界までを描く、壮大なユートピア劇。
<岩波文庫:ウラスジ>
こっちも相当だな。
<追記>
『メトセラの子ら』の主人公ラザルス・ロングは、
1973年刊行の
『愛に時間を』
にも登場――
堂々の主役を張っています。
ゆえに、
『愛に時間を』を未来史の一つに含むこともあるようです。
1425「アンバーの九王子」
真世界シリーズ①
ロジャー・ゼラズニイ
長編 岡部宏之:訳 早川文庫
アンバー ――
それは唯一の真の世界。
地球を含む他のパラレル・ワールドはすべてその影にすぎない。
このアンバーの空位となった玉座を狙い、
九人の王子たちの間に骨肉の争いがおこった。
権謀術数の嵐はアンバーだけでなく
他の世界をも巻きこんでいく。
その動乱のさなか、
王子コーウィンは敵の術策に陥り記憶を消された後、
影の世界 ”地球” へと追放された。
だが、
交通事故を契機に少しずつ記憶の戻ってきたコーウィンは、
故郷アンバーへと向かった。
海底の迷宮、竜、異形の影の軍勢――
華麗なイメージと流麗な筆致で
幻想の真世界アンバーを描くシリーズ第1弾!
<ウラスジ>
ゼラズニイ、初登場がこちら。
”あとがき” で紹介されていたオールディスの言葉
(国は違えど、”ニュー・ウエーブ” の同志?)
「ゼラズニイはあらゆる神話を
SFに翻訳しようと意地になっている」
この言葉を敷衍する
訳者・岡部宏之さんの文章が後につづきます。
彼の作品には神話や伝説を素材にしたものがたくさんあります。
例えば、
『わが名はコンラッド』はギリシャ神話、
『光の王』はインド神話、
『地獄のハイウェイ』(未読)は西部劇、
つまりはアメリカの神話、
そして、本書はオベロン伝説、
といった具合です。
<岡部宏之:あとがきより>
<オベロン伝説>
シェイクスピアの『夏の夜の夢』で扱われた、
欧州ではよく知られた妖精譚(らしい)。
妖精の王・オベロンと妖精の女王・タイタニアが
取り替え子の養育をめぐって夫婦喧嘩となり、
騒動を巻き起こす、という話。
とは言っても、
実際、シェイクスピアを読むまでは
詳しいことはわかりませんでした。
ただ、
いろんな作家がちょこちょこ取り上げていることがあり、
註釈で簡易解説してあるものもあるので、
オベロン及びタイタニア(ティターニア)の名前ぐらいは
聞き及んでいました。
ゲーテの『ファウスト』にも、
悲劇の第一部のラスト近く
ワルプルギスの夜の夢
別名 オベロンとティタニアの金婚式
<高橋健二:訳>
という記述が出て来ます。
で、もっと詳しく、
と思って読んだスペンサーの
『妖精の女王』――
しかし、
これアーサー王伝説をもとにしたもので、
オベロン伝説とは全く関係ありませんでした。
それはともかく。
<真世界シリーズ>全5巻。
この『アンバーの九王子』は序章であり、
追放され記憶を失った主人公コーウィンが復活し、
自分をこんな目に合わせ、アンバーの実権を握った兄エリックに
うちなる決意で宣戦布告する場面で幕を閉じます。
軽妙な口調とミステリアスな構成、
つぎつぎに明かされる意外な事実。
『アンバーの九王子』に始まる<真世界>シリーズは、
巧妙な筋運びで読者をきらびやかな宮廷に誘いこむ。
<三村美衣:SFハンドブックより>
もう一方で、
このレビューとは真逆の評価も存在するんですが、
それは次回作『アヴァロンの銃』も含めてのことなので、
その回にお披露目したいと思います。
(忘れなければ……)







