<ニール・R・
ジョーンズ、
光瀬龍>
1405「放浪惑星骸骨の洞窟」
ジェイムスン教授シリーズ<2>
ニール・ロナルド・ジョーンズ
連作短編集 野田昌宏:訳 早川文庫
目次(収録作品)
第一部 水球惑星義勇軍出撃の巻
1.水の惑星
2.大魚の腹の中で
3.空洞世界
4.反乱
5.義勇軍決死の活躍
第二部 教授なつかしの四千万年昔へ戻るの巻
1.タイムマシン出発!
2.世界創造
3.生命の河
4.時の流れに
第三部 放浪惑星骸骨の洞窟の怪の巻
1.放浪の惑星
2.骸骨の岩窟
3.敵意
4.伝説の怪物
5.大崩壊
四千万年の眠りの後、
宇宙人の手で機械人間 21MM-392
として甦ったジェイムスン教授は、
助けてくれた彼らゾル人達と共に宇宙探険の旅に出た。
次々出くわす奇想天外な冒険の数々、
さて今回は――
陸地のまったくない
ただ一面水の惑星に到着した一行が、
水底深く、地殻内部に住む凶悪種族相手に
決死の奴隷解放作戦を繰り広げる
「水球惑星義勇軍出撃の巻」、
タイムマシンを手に入れたゾル人達が
持ち前の旺盛な好奇心を発揮して
過去の地球へ戾ってみると……?
「教授なつかしの四千万年昔へ戾るの巻」
等、
スペースオペラ史上最高の人気者シリーズ
ますます快調!
<ウラスジ>
ガチャガチャ ガシャガシャ。
機械人間、大宇宙を行く。
(ゾル人たちの唯一の生きがいは宇宙探険なのである)
今回の教授の道連れは、
前回登場した三脚人たちです。
……四人の三脚人が、
予備に積まれてあった体を使って、
機械人へ生まれかわったのだ。
グルルグ、ラヴルト、ジブフ、そしてブルルクス――。
彼らはそれぞれ、
88ZQ-4
92ZQ-153
5Zq-35
45ZQ-42
となって宇宙探険へと出かけます。
……それにしても……
こうやって機械人間は増殖してゆくんですな。
無理強いではなく、あくまでも好意として。
タイムマシンで地球を観察する以外は
色んな星で、大阪で言う<いっちょ噛み>に走って、
思いっきりの内政干渉三昧。
第一話の ”義勇軍” なんてその最たるもの。
で、味方がやられると、
即座に機械人間化する――。
これが次回作に大きく響いてきます。
1406「惑星ゾルの王女」
ジェイムスン教授シリーズ<3>
ニール・ロナルド・ジョーンズ
連作短編集 野田昌宏:訳 早川文庫
目次(収録作品)
第一部 悲恋! 惑星ゾルの王女の巻
第二部 弔合戦 ―― 惑星ミュムへ出撃! の巻
第三部 教授危うし! 金属喰い怪物あらわる! の巻
機械人間の故郷、
惑星ゾルの王女ゾラは、
宇宙艦隊指揮官である恋人ベクストが
仇敵ミュム人に捕らわれたことを知るや
復讐の鬼と化した。
さっそく 21MM-392こと
おなじみ元地球人ジェイムスン教授をはじめとする
特命救助隊が、
不可視被膜に覆われた二隻の宇宙船にうち乗って
敵星深く潜入するが――
いまだ生身の肉体を持つ有機人ベクストは
巨大な広場の中央にさらし者にされたまま、
まさに風前の灯の命……。
群がる敵の真只中で
恐るべき金属分解銃の攻撃に満身創痍となりつつも
教授一同、
必死の大市街戦を開始する!
痛快スペースオペラの決定版シリーズ第三巻!
<ウラスジ>
惑星ゾルの王女ゾラは――
彼女は生身の肉体と感覚とそして血をもっているゾル人であり、
今や脳だけとなっている機械人たちの代表なのである。
脳を機械の体に移植するべく
公式に定められている時期がくるのは、
ゾラ王女にとってまだまだはるか先のことであった。
<中略>
彼女は六本の触手を優雅にくねらせながら――
<中略>
ありていにいって、
四千万年昔の地球人の目からすれば
ゾラはたしかに怪物としか見えないだろう。
しかしそのなだらかに波打つような体の線と優雅にくねる
その触手の動きはまことに調和のとれたすばらしいものであった。
彼女の上半身の両側に二つずつある突起から伸びている触手は
すらりと長く先細りになっており、
その突端はごく小さい。
さらに二本が体の前後から一本ずつ、
側面の触手と直角に伸びていて、
上半身にある六本の付属器官を形成している。
この上部につづく下半身は、
まるで花瓶を思わせるような形で、
その下部から四本の短いガニ股の足がつき出ていて
先端は三本の指になっている。
<本編より>
教授と歓談する王女。
……何故か笑える……(15P)
それにしても藤子(藤本)先生の苦労が窺えます。
このあと王女の顔の描写がありますが、
それはご想像にお任せします。
バルザックほどじゃないけど、
かなり緻密に記してあります。
で……
話は進み、
ミュム人(彼らも機械人間)になぶり殺しにされた
王女の恋人ベクストを見るや、
「姫君! おやめなさい! 自殺行為です!」
姫君乱心。
機械化によって蘇ったベクスト、
しかし、
生き返ったベクストは、
かつての体が持っていた本能や衝動のたぐいを
まったく喪失していたのだ。
今やかれは自然を超えた存在であった。
ゾルの機械人のみが持つ
あの整然として無駄のない思考と行動の原理を
いとも見事に身につけているのである。
王女ゾラは、
もはやこの12W-62(ベクスト)を
愛して行くことはできないことを
さとったのだった。
(キージーの『カッコーの巣』じゃないけど、
”ロボトミー手術” を施されたよう)
こうして――
ゾル対ミュムの本格的な戦争が始まった!
女の復讐、
って聞くと
真っ先に思い出すのが
『ニーベルンゲンの歌』
のクリームヒルトだなあ……。
夫ジークフリートの仇討ちとは言え
実の兄を手にかけるなんて……。
あとはウールリッチの
『黒衣の花嫁』。
第三話は
オーブという巨大なナメクジ、「金属食いメタルイーター」のお話。
なおこの話では、
王女ゾラはすでに機械人<119M-5>となっています。
<追記>
これで機械人間ともしばしのお別れ。
最後の一冊、
『双子惑星恐怖の遠心宇宙船』
はいつ現われるのやら。
ガチャガチャ ガシャガシャ。
1407「たそがれに還る」
光瀬龍
長編 石川喬司:解説 早川文庫
茫々の大宇宙を包んで迫り来る謎の危機!
太陽系の全域を征服し、
他の恒星まで文明を推し進めようという人類だったが……
大宇宙船団が辺境でコントロールを失って
空間漂流をはじめた時、
すでに危機は地球文明をのみこもうとしていたのである!
光瀬SFの粋をあつめた本格宇宙小説!
<1986ハヤカワ文庫:解説目録>
光瀬龍の<未来叙事詩三部作>の魁となる作品。
まずは順番どおりに読まなかったゆえの
フィードバックを。
一筋縄ではいかぬストーリーなので、
<虎の巻>に全面協力してもらいます。
時は三〇〇〇年代の終わりに近く、
惑星経営機構調査局員シロウズは、
辺境航路八一四便に乗船して
太陽系辺境星区に赴こうとしていた。
この便には太陽系連邦副主席チャウダ・ソウレも乗船していたが、
ソウレはシロウズに、この頃、
辺境でしばしば発生している
宇宙船の行方不明事件について意見を求め、
それが太陽系外生物の活動に起因している
という説のあることに言及する。
ここからまず、
変事が起こったという金星へ。
そして――。
荒廃した未知の巨大な建造物の「幻覚」を体験し、
「滅びの声」を聞くことになる。
そこから冥王星へ。
直径五〇〇メートルの巨大な宇宙船が発掘される。
四五〇〇メートルの地下に一二〇〇万年も埋まっていたそれは、
実は自らをサイボーグ化し、
宇宙船にした異星の生命体であった。
その内部に入ったソウレの口を借りて、
遥かむかし、二つの星間文明が戦ったことが語られた。
だがさらに、
星間戦争などよりももっと強大な力を持った何かが
彼らを滅亡させたことが暗示される。
また地球でも、
一九〇八年のツングースカ隕石落下地点の近くから、
もう一つの星間文明の宇宙船が発見されたが、
船内からとり出された電子頭脳には、
二つの星間文明の闘争の様子と、
より大きな破滅の到来が記録されていた。
二つの種族を滅ぼすほど強大な力とは何か。
<中島梓:『世界のSF文学・総解説』より>
(わ。中島梓さんが書いてたんだ)
レオーネの作品じゃないけど、
”むかしむかし太陽系で……”
って話になりそう。
とにかく、
この時間の振れ幅の大きさ、
未来の話ではなく、
大昔の過去に起因するものが
いまに繋がっているという結論めいたもの――
これはひたすらに「諦念」を形づくっていきます。
ソウレはついに今すべてを喪ったことを知った。
すべてを――
そうだ、
このとき人類はその明日のすべてを喪ったのだ。
ソウレは黙って立ち上がった。
彼はそれでもなお新しい別な方法を考えなければならなかった。
デッドエンドでたそがれる――。
北欧神話のラグナロク――
<神々の黄昏>にも通じるところがあるのかも。
<追記>
光瀬龍(流) 未来叙事詩はもう一冊。
三部作の最後、
『喪われた都市の記録』
はいつ現われるのやら。