<カミュ、
サルトル>
1367「シーシュポスの神話」
アルベール・カミュ
短編集 清水徹:訳 新潮文庫
収録作品
1.不条理な論証
不条理と自殺
不条理な壁
哲学上の自殺
不条理な自由
2.不条理な人間
ドン・ファンの生き方
劇
征服
3.不条理な創造
哲学と小説
キリーロフ
明日をもたぬ創造
4.シーシュポスの神話
神々がシーシュポスに科した刑罰は
大岩を山頂に押しあげる仕事だった。
だが、
やっと難所を越したと思うと大岩は突然はね返り、
まっさかさまに転がり落ちてしまう。――
本書はこのギリシア神話に寓してその根本思想である
”不条理の哲学” を理論的に追究したもので、
カミュの他の作品ならびに彼の自由の証人としての
さまざまな発言を根底的に支えている立場が明らかにされている。
<ウラスジ>
【不条理】……absurude
ところで、普通のフランス語としては、absurdeとは
「なんとも筋道の通らない」「意味をなさない」「荒唐無稽な」
つまり、論理や常識を破っているばかりか、
それ自体として矛盾しているため
とても考えられないような状態や行為について
言われる言葉である。
それは「不合理な」とか「非論理的な」
というものともちがう。
たとえていえば、
水に濡れないつもりで川のなかに跳びこむ――
それがabsurdeな行為なのだ。
<訳者付記より>
まずは基本的なところを押えといて。
*精神の第一歩は
真であるものを偽りであるものから区別することだ。
*「わたしの活動領域、それは時間だ」
とゲーテは語った。
これはまさに不条理な言葉だ。
不条理な人間とは実際なになのか。
永遠を否定しないが、
永遠のためにはなにもしないひとのことだ。
*思考するとは、なによりもまず、
ひとつの世界をつくることだ
(あるいは、結局同じことになるが、
自分の世界を限定することだ)。
評論集というよりも
エッセイ集と言った方がいいこの本。
作家や哲学者の先達者を挙げながら、
一種、エピグラムの集積回路のような体ををなしています。
違う言い方をすれば、
どこを切り取っても<箴言・警句>っぽくなる――。
読み易い部分と読みにくい部分が交互に登場し、
その中をカミュの代名詞でもある<不条理>が飛び交います。
誤解を恐れずに言うならば、
「不条理」と「理不尽」は紙一重。
1368「カリギュラ・誤解」
アルベール・カミュ
中編 渡辺守章/鬼頭哲人:訳
新潮文庫
収録作品
1.カリギュラ (渡辺守章:訳)
2.誤解 (鬼頭哲人:訳)
暴君として知られた実在のローマ皇帝に題材を得て、
絶対的な自由を求めて不可能性を追い、
自滅する権力者の悲劇を描いた
『カリギュラ』。
暗い故郷の風土を嫌い
南の国に焦がれる娘マリヤの兄殺しを軸に、
人生の不条理を追求した
『誤解』。
生涯を通じて演劇に情熱を注ぎ、
作家、エッセイスト、思想家であると同時に
劇作家としても高い評価を受けたカミュの
代表的戯曲2編を収める。
<ウラスジ>
『カリギュラ』と聞いた日にゃ、
すわ、各最低映画賞を総なめにした
ポルノ大作『カリギュラ』(1980年)の原作か、
疑われました。
まあ、ポスターでも窺い知れるこの俳優陣、
マルコム・マクダウェル (『時計じかけのオレンジ』)
狂気の悪役。わたくし的英国の ”モッズ男優” 。
ヘレン・ミレン (『クィーン』でアカデミー主演女優賞)
とにかく、若いときは脱ぎまくっていたな。
ピーター・オトゥール (『アラビアのロレンス』)
大作と言えばこの人。『ラスト・エンペラー』にも出てた。
ジョン・ギールグッド (『ミスター・アーサー』で
アカデミー助演男優賞)
オリヴィエ、リチャードソンに続く ”サー” 男優。
これだけの布陣を持ってして、
<プレイボーイ>のヒュー・ヘフナーと並ぶ
アダルト・マガジンの名物社長、
<ペントハウス>の社長ボブ・グッチョーネが作り上げた
一代ポルノ絵巻。
当然ながらオンタイムでも見ていないし、
今でも観ようとは思いません。
ポルノで二時間半もあるなんて……。
”カリギュラ効果”
という言葉を残したのでも有名か。
”禁止されると欲求が高まる” っていうやつ。
上映禁止がヒットにつながったようで。
……なんか本編が印象薄くなっちゃった……。
ま、いいか。
<余談 1>
不条理劇って言うと、
ベケットの『ゴドーを待ちながら』
の方が絶対王者だもんな。
<余談 2>
ローマ皇帝。
この作品のお蔭で、
ネロ以外にもとんでもない奴がいたってことが分りました。
<追記>
カミュはまだ続く……。
1369「悪魔と神」
ジャン‐ポール・サルトル
長編 生島遼一:訳 新潮文庫
誇大妄想狂の<私生児>ゲッツ、
悪魔と同居している破戒僧ハインリッヒ、
農民の娘ヒルダ、
革命的農民ナスチ……。
十六世紀ドイツの農民戦争勃発の直前に時期をとり、
これら個性的群像を配して、サルトルが現代の観点から、
人間の善と悪、霊と肉などあらゆる人間倫理の問題に
独特の方法論で鋭いメスを入れ、実存主義的道徳ともいうべき
新しいテーマを提示した戯曲大作。
<ウラスジ>
「不条理」のお次は「実存主義」。
しかし、ちょっと前にやったジュネとかカミュとか、
一応、<実存主義作家>の部類に入るんだろうけど、
他の ”キャッチフレーズ” が強すぎて
いまいち<実存主義作家>のレッテルまで
辿りつかない感じがします。
曰く、
カミュ……不条理作家
ジュネ……男色・犯罪者・刑務所内作家
そんなこんなで、
取りあえず、サルトル初登場の回から。
代表作は文庫以外で。
今は大作『自由への道』が岩波文庫から出ています。
全6冊。
きつそうだけど、サルトルの小説って
ことのほか読みにくくは……。
<追記>
サルトルは一応これでおしまい。
オルヴォワール。
ボーヴォワール。