涼風文庫堂の「文庫おでっせい」  215. | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<小松左京、

スピレイン、

安部公房>

 

682.「果しなき流れの果に」

小松左京
長編   石川喬司:解説  早川文庫
 
 
巨大な剣竜や爬虫類がいた六千万年も前の中生代の岩層から、
奇妙な砂時計が発見された。
 
その砂は、いくら落ちても減らず、
上から下へ間断なく砂がこぼれおちて、
四次元の不思議な世界を作り出していた。
 
常識では考えられない超科学的現象……! 
 
さらに不可解な事件が起きた。
この出土品の発見場所の古墳へ出向いていた関係者が、
次々と行方不明となり、変死を遂げてしまったのだ――。
 
強大な内なる闇に対抗するための、
遥かな時間と空間を超えた壮大な戦いを、
迫力に満ちたイマジネーションで描く日本を代表するSF長編作。
                        <角川文庫版:ウラスジ>
 
 
 
早川文庫版には<ウラスジ>がなかったので、
角川文庫のものを拝借させていただきました。
 
何と言う反則技。
ただし、この時代あたりから、角川が何故か突然、
日本のSF作家を大量に囲い込み始めました。
 
それまで、
”早川こけたら、みなこけた” (筒井康隆さんの言葉)
などとあざ笑われていたSF作家が大挙して
角川に、角川文庫に移ってきました。
 
星新一さん、筒井康隆さんはさほどでもなかったのですが、
小松左京、光瀬龍、眉村卓、豊田有恒、半村良 (敬称略)
といった大物が角川文庫で、旧作・新作含めて再登場し出したのです。
 
なかでも、圧倒的な冊数を誇ったのは平井和正さんだったと思います。
『幻魔大戦』 全20巻、及び<ウルフガイ>シリーズ。
 
小松左京さんも、『復活の日』 が映画化されましたね。
 
いま、何かと、<コロナ禍>と結び付けられて、その名を聞きます。
 
カミュの 『ペスト』 か、小松左京の 『復活の日』 か。
 
はたまたクライトンの 『アンドロメダ病原体』 か。
 
もとい。
 
『果しなき流れの果に』
これは先輩の下宿で、<一気読み>をした覚えがあります。
BGMはプログレ。
イエスかキング・クリムゾンか。
先輩曰く、
『こんな環境でその本は読めんだろう』
 
確かに。
一章、二章ぐらいまでは、事件があって、謎があって、
その謎解きが仄めかされて――と言う感じで
落語の枕のように引っ張られて行ったんですが、
その後が怪しくなる。
 
”悠久の時を経て” に連なる話は、
どこか全体像が見えにくくなって、
破綻しがちになる。
 
この作品がそうだとは言いませんが、
知識・雑学・蘊蓄モンスターの小松さんが、
確固たる理論と、
それを具象化する大まかな発想で、
無理やり捻じ込んできたイメージを、
「ほら、こういう現象は、こういうことにつながるかも知れへんのやで」
と、読者側に投げ出された感じがしないでもない。
 
と言う訳で、ここから先は
<世界のSF文学総解説>から
抜萃していきたいと思います。
 
『10億年の時空の中で、
”人類と文明” の意義を問い直した本格SF』
 
ジャンル:<時間・次元テーマ>
 
プロローグは、何者かに連れ去られた、
N大理論物理研究所の野々村の話。
 
時は移り、さらに果てしない時間がひろがっていく。
 
「ポーカー・ダイス計画」
超科学研究所は、歴史の上に点々とバラまかれた遺物を
所有する五基の電子脳衛星に厖大なデータとして記憶させ、
静止軌道上に配列して、”討論” させて、
遺物にこめられたメッセージを解読しようとしていた。
 
その結論は、”未来からの干渉”。
 
未来から何かを訴えようとするものと、
それを妨げようとする、二つの干渉のパターンがあるということ。
 
やがて何者かによって、衛生は爆破され、
「ポーカー・ダイス計画」は中止を余儀なくされる。
 
ここまでは大丈夫ですか?
 
ここから先はキーワードとなるものを順を置いて並べていきます。
なんせ、”果しない流れ” の一環を取り出すんで。
 
* 21世紀半ば、『太陽嵐』により地球の滅亡迫る。
* 数千隻の大宇宙船団、突然現る。
* 宇宙人は人類の救済を申し出、人類はそれを受け入れる。
* 人類は異星から来た宇宙船に乗り移る。
* その宇宙船団は超空間に入り、
   いずことも知れぬ目的地へ飛行し始める。
 
もう少しで、久々の主役が登場します。
 
* 宇宙船の中で、「選別」がはじまる。
* 宇宙生命種を管理する上部の階梯の知性体アイは、
   上の階梯へ進みうるものを選びながら、人類の一部が救出寸前、
   別の組織によって奪われているのを知った。
 
ここでまた舞台は1968年のニューヨーク。
 
* そのニューヨーク基地が、襲撃され消滅する。
* 襲ったのは、「ルキッフ」と呼ばれる存在から指令を受けた
   <N>だった。
* 「ルキッフ」は宇宙生命の進化を管理する存在に対して
   反逆する存在だった。
* 一方で火星の観測員だった松浦が登場し、上の階梯へ上る過程で
   <知性体アイ>と融合し――。
 
ええ。
ここまでを踏まえて、残りをお楽しみ下さい。
 
作品の中にバラまかれたSF的 『ガジェット』 が、
徐々にひとつところに集まり始めます。
 
 
<追記>
この作品でも重要な役割を果す<ルキッフ>。
 
”変化のベクトルへの抵抗の形象化” 
とされるその存在意義は、
『結晶星団』、『ゴルディアスの結び目』にも登場してくる、とあります。
 
二つとも読んではいるんですが、
この手のテーマものは長編でないと
なかなか記憶に留めにくいもんで……はい。
 
その回が来て、再び手に取るまでは、全くの白紙状態です。
 
 
 
 
 

683.「復讐は俺の手に」

ミッキー・スピレイン
長編   平井イサク:訳  早川文庫
 
 
戦友との再会を祝した酒は、
一夜明けるとにがい死の媚薬と化した。
私立探偵マイク・ハマーは
戦友のウィーラーに誘われるままにホテルに泊りこんだが、
目を醒ますと彼は死んでいたのだ。
 
手にはマイクの拳銃を握りしめて……。
 
彼には自殺の動機も殺されるいわれも全くない。
 
それをどこかの野郎がぶち殺してしまったのだ。
 
こみ上げる怒りを抑えて友人の前日の行動を洗い始めたマイク――
 
が、その彼の行く手にも
見えざる敵の消音ピストルの銃口が待ち構えていた!
 
スリルとスピーディな展開を身上とする
スピレイン・ハードボイルドの雄篇。
                               <ウラスジ>
 
またもや<戦友>。
これじゃ、マイク・ハマーの戦友だったってことで、
<死亡フラグ>が立ってしまいそう。
 
マイク・ハマー物のレギュラー陣と言えば、
秘書のヴェルダ(のちに恋人になる)と
刑事のパット・チェンバース。
 
秘書との関係もどうかと思うが、
この作品でもありそうな、”容疑者候補” となった時、
他のハードボイルド探偵なら警察と一悶着ありそうだが、
マイク・ハマーものでは多くない。
 
それと言うのも、殺人課の警部パット・チェンバースが
マイクの友達だからである。
 
だから、ここでストレスがかかることはまずない。
この辺が逆に受けたのかも。
 
 
 
 

 

684.「第四間氷期」

安部公房
長編   磯田光一:解説  新潮文庫
 
 
現在にとって未来とは何か?
 
文明の行きつく先にあらわれる未来は天国か地獄か?
 
万能の電子頭脳に
平凡な中年男の未来を予言させようとしたことに
端を発して事態は急転直下、
つぎつぎと意外な方向へ展開してゆき、
やがて機械は人類の苛酷な未来を語りだすのであった……。
 
薔薇色の未来を盲信して現在に安住しているものを
痛烈に告発し衝撃へと投げやる異色のSF長編。
                                <ウラスジ>
 
 
『第四間氷期』と『山椒魚戦争』。
 
これは高校時代の地学の先生が、授業そっちのけで、
紹介していた作品でした。
 
以前にも書いたので、その辺はこちらをどうぞ。
 
 
 

 

 

ええ。

これもまずは<世界のSF文学>の紹介文を丸パクリで。

 

『第四間氷期』 1959年

ここで設定された舞台は、現在の地球の状態を

第四氷期(ウルム期)と次に来るべき第五氷期の、

いわゆる第四間氷期としてだけではなく、

5000万年に一度訪れる「地質大変動期」としてとらえ、

その仮説のもとに、

来たるべき苛酷な未来で人類がどう生きられるかを描いている。

 

前半をミステリー風に、後半を壮大な未来予想図で描いた本書は、

日本におけるSFの先駆的作品として評価が高い。

               <奥野健男:世界のSF文学総解説より>

 

 

前半のミステリー部分というのは、

まったく偶然の産物で、

ヒッチコック作品をを思わせるテイストです。

 

そこから、<胎児掠奪>というロビン・クック風の流れになって来て、

次に人体改造、<水棲人間>へのすみやかな移行。

 

ショッカーかドクター・モリス風の話へと進んで行く。

 

『水中都市』を科学的に説明した感じ。

 

 

 

片方で、

<未来からの声>が、主役の勝見の

生殺与奪の権を握る事になるのだが、

勝見に死刑を宣告した人物というのが……。

 

最後の文章。

 

ドアの向うで、足音がとまる。

 

……これ、死刑執行人の足音かな。

 

しかし、この死刑宣告はやりきれない。

 

だって・・・・・・。