涼風文庫堂の「文庫おでっせい」193 | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<ヴォネガット、

ブローティガン、

ボーム>

 
 

610.「猫のゆりかご」

カート・ヴォネガット・ジュニア
長編   伊藤典夫:訳  早川文庫
 
 
私の名はジョーナ。
いまプエルト・リコ沖のサン・ロレンゾ島にいる。
 
”パパ” モンザーノの専制政治に支配されるこの島で、
『世界が終末をむかえた日』の著者となるべき私は、
禁断のボコノン教徒となったのだ。
 
”目がまわる、目がまわる”
世の中は複雑すぎる。
 
愛するサン・ロレンゾ一の美女モナが、
世界中のありとあらゆる水を氷に変えてしまう<アイス・ナイン>が、
柔和な黒人教祖ボコノンが、
カリプソを口ずさむ私のまわりをめぐりはじめる――
 
独自のシニカルなユーモアにみちた文章で定評のある著者が、
奇妙な登場人物たちを操り不思議な世界の終末を描いたSF長編。
                               <ウラスジ>
 
……<ウラスジ>も
話の【スジ】を追うことを放棄したようですね……。
 
扉を一枚捲るとこうあります。
 
本書には真実はいっさいない。
 
そして開幕。
 
わたしをジョーナと呼んでいただこう。
 
……と、アメリカ文学をちょっと齧っている連中にはわかる、
メルヴィルの 『白鯨』 の出だしのモジりから始まります。
 
そして、どっかで読んだような記憶のある、このレトリック――。
 
わたしが若かったころ――
今を去ること妻二人前、
タバコ二十五万本前、
酒三千クォート前……
 
そして再び、本書についての言及。
 
「わたしがこれから語ろうとする様々な真実の事柄は、
 みんなまっ赤な嘘である」
ボコノン教徒としてのわたしの警告は、こうだ。
嘘の上にも有益な宗教は築ける。
それがわからない人間には、この本はわからない。
わからなければ、それでよい。
 
300ページ弱の本編に127の章。
一章およそ2ページの積み重ね。
登場人物も多い。
 
無論、SFの体裁を取っていますから、
話もクライマックスに向けて、進んでゆきます。
 
が……。
 
ヴォネガットに関しては、単行本も含めてここで一段落。
次のブローティガンも一緒に、このリンクでお確かめ下さい。
 
ヴォネガットは、ここからしばらく単行本が続きます。
 
ハイホー。
 
 
 
 

611.「愛のゆくえ」

リチャード・ブローティガン
長編   青木日出夫:訳  新潮文庫
 
様々な人が自由に書き上げた作品を受け取り、
登録し、保管するという風変わりな図書館に勤めるわたしのもとに、
ある日、ヴァイダという若い娘が訪れた。
 
彼女はあまりにも美しい自分の肉体に嫌悪をいだいているという。
 
彼女とわたしの奇妙な関係は、その日から始まった……。
 
やさしく、内気で、文明社会とは絶縁した人びとの
ファンタジーの世界を、おかしみと哀しみをこめて描く。
                               <ウラスジ>
 
 
原題の 『The Abortion』 は、『中絶』 のこと。
 
で、当然のように、
丸山健二さんの 『その日は船で』 と
ヘミングウェイの 『白い象のような山々』  を
思い浮かべました。
 
 

 

 

まあ、愁嘆場こそないものの、

『その日は船で』 も 『白い象のような山々』 も、

ウエットな方向性に傾いていることが窺われますが、

この 『愛のゆくえ』 はちと違います。

 

何か淡々と事が進んで、

落ち着くところに落ち着く、といった感じ。

 

あと個人的に気になったところ。

最後の方の音楽を聴くシーン。

 

ヴァイダはプレイヤーにレコードをかけた。

それは 『ラバー・ソール』 というビートルズのアルバムだった。

私はビートルズをいちども聞いたことがなかった。

それくらい長く、図書館にいたことになる。

「あなたに、これをまず聞いてもらいたかったのよ」 ヴァイダはいった。

わたしたちはその場に静かにすわってレコードを聞いた。

「だれが歌ってるんだ?」 わたしはいった。

「ジョン・レノン」 ヴァイダが答えた。

 

さて、『ラバー・ソウル』 で

ジョンのヴォーカルと言ったら、

『ノルウェーの森』、

一択でいいんでしょうか?

 

いやいや、

『ひとりぼっちのあいつ』 もあるし、『イン・マイ・ライフ』、

『ガール』 もある。

あっと驚く 『浮気娘』、とか。

 

こういう答えの出にくい無駄話って、楽しいんですよね……。

とくにビートルズなんかに関しては。

 

 
 
 

 

 

612.「オズの魔法使い」

ライマン・フランク・ボーム
長編   佐藤高子:訳  早川文庫
 
たつまきに巻き込まれたドロシーがたどりついた所は、
ふしぎな美しさに満ちた魔法の国――オズ。
 
彼女は大魔法使いオズの力を借りてカンサスの家に帰るために、
 
愛犬トト、
脳のないかかし、
心臓のないブリキの木樵り、
臆病なライオン
 
たちを道連れに、
オズ様の住んでいる<エメラルドの都>を目指して旅に出た。
 
オズの国で展開するドロシーたちの奇妙な冒険を描いて、
世界各国の少年少女たちには多くの夢を、
童心を忘れた大人たちには、
ひとときの安らぎを与える幻想小説の名作!
                                  <ウラスジ>
 
終わり方がちょっとねえ……。
魔法使いの正体が、○○○だってえのは何とも、消化不良でして。
 
だからと言う訳じゃないけど、
[オズ・シリーズ]は、
続編である『オズの虹の国』だけにとどまらず、
[シリーズ・11]まで読んでしまいました。
 
[オズ・シリーズ]は、14巻で完結ですから、
頑張って残りの3巻を見つけて読了したいと思っています。
 
 
 
【涼風映画堂の】
”読んでから見るか、見てから読むか”
 
今回は断然、これ。
 
 
◎「オズの魔法使(い)」 THE WIZARD OF OZ
1939年 アメリカ MGM 
制作:マーヴィン・ルロイ
 
監督:ヴィクター・フレミング
脚本:ノエル・ラングレー/フローレンス・ライアーソン
    エドガー・アラン・ウールフ
撮影:ハロルド・ロッソン
音楽;ハーバート・ストサート
    ”Over the Rainbow”
       M)ハロルド・アーレン
       L)E・Y・ハーバーグ
原作:ライマン・フランク・ボーム
出演
ジュディ・ガーランド
フランク・モーガン
レイ・ボルジャー
バート・ラー
ジャック・ヘイリー
ビリー・バーク
マーガレット・ハミルトン
 
* ヴィクター・フレミングって言うと、
   『風と共に去りぬ』 じゃなくて、
      この 『オズの魔法使い』 なんだなあ。
* 両作とも1939年作、っていうのが物理的にむずかしそう。
* やっぱ、『風と共に去りぬ』 はジョージ・キューカーあたりが
   大部分を撮っていたんだろうなあ。
* あと、『ジキル博士とハイド氏』(これはもうすぐ出て来る)なんかも
   そうだけど、スペンサー・トレイシーとそこそこ組んでる。
 
* ハロルド・ロッソン、『雨に唄えば』。
* 名曲中の名曲、『虹の彼方に』。
* 今じゃ原題の ”オーバー・ザ・レインボー” の方が通りがいい。
* リッチー・ブラックモア。
 
 
 
* ジュディ・ガーランド。
* 享年47歳。
* 彼女のまわりには、常に薬物があった。
* しばらくは、ほぼ忘れられていた状態。
* 70年代初頭に、ちらと名前が出たのは娘のおかげ?
* その頃は、娘であるライザ・ミネリが 『キャバレー』 で
   一世を風靡していた時代。
* 娘の人気に嫉妬しておかしくなったとか言う噂もチラホラ。
 
* 歌えるし、踊れるし、落ち着いた演技も出来るし、
  いい女優さんでした。
 
 
 
何はともあれ、必見の映画です。