ウェンディアンドピーターパン 感想③
①、②はこちら↓
①ネバーランドがあの世だった件&フック船長が大人代表だった件
いい加減これで最後かな。
考えるこがたくさんあって、面白い舞台でした。
最後に、キャラクターや素晴らしいキャストさんについても少し。
ウェンディは黒木華さん。
いや、さすが。すっっっごいお芝居の巧い方でした。
なんか舞台と空間をガッシリ掴んで自由自在に操ってるような落ち着きというか、安定感、貫禄感じた。
テレビにもよく出てるけど、やっぱり舞台向きの人なんだろうな。
12歳の女の子で子供らしさがありながら大人になりゆく絶妙なとこが、あぁ~上手いなって。
子供たちのお母さん役をやらされて怒鳴るところとかトムを必死に探してるところは、強くて頑張ってるけど余裕の無さが見える芝居が良いし、
後半、女として強くあろうとするところなんかは、心も体も強い感じがハッキリわかるし、ウェンディが強く大人になっていくのがとてもよくわかった。
だけどあくまで12歳に見えるっていう。
ピーターに恋する女の顔を少しして見せたり、お母さんに甘える顔もあったり。
ウェンディの大人の顔も子供の顔も、成長していく様も、しっかり表現されてた。
「私嘘ついたら豚になっちゃう!…ンガ!!」とか、超しょうもないけど、面白くてうまかったな(笑)
あと、これもしょうもないけど、ティンカーベルのマネをして「あ~~~!パッ!!(妖精の粉を振るマネ)」ってするとこ可愛くてめっちゃ好き。
なんか、大事なシーンいっぱいあるのに、しょうもないとこがツボでごめん。
ピーターパンは中島裕翔さん。
Hey!Say!JUMPの人みたいですが(よく知らない)
元から舞台俳優の人と言われてもビックリしないし、逆に、え、アイドルなんや!?そっちのがビックリ!みたいな感じで、お芝居がうまいったら!!
身体能力がすごく高い。
(そういうのはさすがアイドルなのかな!?飛び慣れてるのかも?)
ワイヤーで飛んだりアクロバティックな動きはもちろん、シュサササッ!!って俊敏な動きがピーター結構あって。
そういう、動き面でほんとリアルピーターパンだった。
ハーモニカもたぶん自分で吹いててうまい。
ピーターパン役がリアル男性なのは大きなポイントだと思うんだよね。
普通の(ブロードウェイ版?)は、子供の男の子ってことで女性が演じていると思うんだけど。
リアル成人イケメン男性が演じている。
この、かっこよくて、大人で、ヒーローのハズのピーターパンが、最終的に、前回書いた
『(本当は大人なのに、そして相手の女が大人になるのに)大人になれないクズ男』
を絶妙に彷彿させるのが、よくできてる!!
ジャニーズのイケメンが出てきてさ、かっこよく飛び回ってさ、あーんカッコイイ♪ってなるでしょ、ウェンディとの恋を期待してさ、で、最後はあのバーンと寂しげに部屋を見つめる影で幕で、見た後に残るのは、
「え???ピーターパン、なんか残念???」
ですよ。
その落差狙ってるんでしょ。
あの見た目で、無邪気な子供になりきってて、飄々としてウェンディが何を言っても今一つ響かない感じは凄い。
だけど、マストの上で語り合うところとか見ても、実は思うところはあるんだろうな、大人な部分もちょっとだけはあるんだなって思う。
私は、本当は大人な部分もあって、だけどあえて子供らしく生きているのかな、という風に見えた。
もっと残酷に解釈するなら、本当は大人なのかもしれない。『大人が頑張って芝居して子供を演じてる』のかもしれない。
ピーターパンが、子供な大人でなくて、本物の子供、しかも未来ある子供だったら、どんなに救われただろう。
って、そんなことを考えさせられちゃう絶妙な芝居がすごいなって思ったのでした。
すごく難しい役だったと思う。
それで、すごく細かいことだけど、本来ピーターパンが主役だけど、タイトルの並びも写真の並びもウェンディを前にしていることに、こだわりを感じる。
ウェンディとピーターパンがセットで、大人になっていく少女と大人にならない少年、という対比あってこその、ピーターパンだと思う。
ピーターパン症候群は心が子供であるピーターパン目線では描けない。ウェンディの目線から見て初めて見えること。
だから、ウェンディが重要なんだ。
(なんか話が前回記事の内容に戻ってんな…)
フック船長とミスターダーリングは、堤真一さん。
本当に、トップオブ凄い役者さん!!
舞台の締まりが違うううう!!!
もう先に①と②に書いちゃったから略すけど、本当に、フック船長は特に、セリフの一つ一つに重みがあって、一言一言に意味があるような感じがした。
お父さんとフック船長が一人二役なのが、ミソでございました。
ミセスダーリングは石田ひかりさん。
良妻賢母の鑑のような素敵なお母さん。石田ひかりさん可愛かった~!
トムを失くすところ、トムを思うところは、母親の立場として感情移入して泣いてしまった。。
このお母さんが、ただ夫を立てて家事育児をするのではなく、芯の強さがあって、女性としての自立が最後に描かれていて良かった。
「とっとと失せろジョージ!」は名セリフ。
「妖精の粉がついた指ぬきね」
ってなんなん!?なんで妖精の粉しってるん!!
サラッと気になること言っちゃったよお母さん。
後述するけど、妖精の粉は、ティンカーベルがふる「子供の心であるための粉」だと思う。
だから、お母さんは、妖精の粉がかかってるってことは、何かを子供の心で隠したものだろうって察しがついたのかな。
ジョンは平埜生成さん
海賊に憧れる長男。
ネバーランドでは子供らしく遊びまわるけど、海賊船との戦いのときに、タイガーリリーに恋をする。
彼は、タイガーリリーが『アイロンをかけてくれる人になるんじゃないか』って、想像する。
お嫁さんをお母さんと思ってるところがまだまだ子供だけど、ネバーランドから「帰ろう」とウェンディに言って、現実に帰っていくあたり、とても大人びて見えた。
これから大人になるのかなって、成長に期待できる。
なんと言っても夢は海賊だからね。子供時代を倒せるはず。
マイケルは前原滉さん
生物に興味のあるオタク。
闘うのは得意ではなさそうだけど、新種の蛍(だったかな??)の力で、海賊を倒すのに貢献して、一回り成長して帰っていく。
トムは下川恭平さん。
すぐに死んでしまうので出番は少なかったけど、カーテンコールで、みんなの真ん中でピルエットぐるぐるを披露したり、床でちょっとブレイキン的な踊りをしたり、見せ場があった!
ティンカーベルは富田望生さん。
ちょっとふくよかな…思ってたイメージと違う、ズンズンズン!!って貫禄のあるティンカーベル!!これもアリなんだ!って思ったしインパクト強くて良かった。
懐中電灯があちこちで光って鐘の音が鳴って、本当は小さい妖精のティンカーベルがあちこち飛び回ってるように見せる演出が面白かった。
ピーターパンがロストボーイのリーダーみたいだけど、本当はティンカーベルがネバーランドの主なんだろうな。
ウェンディに嫉妬して、ピーターパンを取られたくないと思っている。つまり、ピーターパンを大人にしたくない。
そして、妖精の粉を振って飛べるようにしたり、子供であることを受け入れ、ロストボーイを守ってくれたりする。
子供を子供たらしめてるのはティンカーベルの妖精の粉なんだろう。
タイガーリリーは山崎紘菜さん。
原作ではインディアンの女の子だけど、和風、くノ一風でびっくりした!!
めっちゃカッコいい系美人で、すらっと背も高く、刀を何本も振り回して剣の達人風で、強くてめちゃめちゃカッコイイ!!!
自立した女性の象徴みたいな感じで描かれていて、女から見てカッコイイ女。
なんか、ティンカーベルといい、タイガーリリーといい、ちょっとイメージと違う感じで攻めてくるなー!(ピーターパンやフック船長もだけど)
ロストボーイたちは、新名基浩さん、田中穂先さん、中西南央さん。
柿食う客、厨房男子でもおなじみの穂先さんが出てます!!!!
ほんとに、なんというか超個性的で大好きなんだよね~~
他の2人も、ちょっと雰囲気が似てるというか、個性的という点で。
実際は3人ともいい大人だし、別に小柄というわけでもないけど(しかも穂先さんはでかい)、あえての子供役、徹底した子供役!!
ピーターパンと違って、本当に何も考えていない本物の子供役。
ってのが、凄かった(笑)
そう!そう!子供ってこんなんなの!!!ってウンウン思える芝居、演出がいっぱいで。
純粋に楽しそうだなって気持ちもあったけど、この子たちは大きくなれずにずっとこのままなのか、って気持ちになった。
キスも知らない(ズボンのチャックっていうてたw右と左を合わせるってことね)、シェイクハンドが握手でなく手をふりふりすることだと思っている、文字も知らない。
それで幸せなのかもしれない。だけど、大きくなれないのね…って思う私は大人なんだろう。
(②で書いた通り、海賊になって大人になる説もあり)
あと、海賊のみなさんや、他に、シャドウと言って、ピーターパンの影であるダンサーさんたちが6人います。
実は、私の、推しは!
こちらのおひとり、乾直樹さん。
海賊と二役されていて、海賊で出てきてセリフもあって、おお!!と思ってたら、ものの数分でフック船長に斬り殺された!!
えぇーーーーーーーーー乾さん!
海賊に、「死なないで!!うそでしょ!!」って思ったのは初めてだ(笑)
ちょっとチャラくて思慮浅そうな海賊だったな・・・
前も乾さん見にコクーンに来たけど、殺されてたし、なんかデジャヴ・・・(キレイのカウボーイ)
シャドウはピーターパンの影として、ピーターパンと一緒に現れて同じ動きを俊敏にしたり、時々勝手に行動したり、ウェンディの部屋に取り残されちゃったり(忘れた影を探しにピーターパンがやってくる設定)。
あるいはピーターパンのやることを補佐したり(飛んだり、飛ばせたりするのを手伝ったり)、セットの転換をしたり海賊船を押して動かしたりとかも!!
いやもう、見てたら、めっちゃ海賊船手押しで回してるやん、半分大道具さんやん!!って思ったけど。
でもこの大道具さん(笑)たち、動きが本っっ当に綺麗なの。みんなが乾さんと同じコンテンポラリーダンサーかどうかはわからないけど、そういう動きがめちゃめちゃ生きてる。
女性ダンサーさんも2人いるんだけど、特にきれい!!!
こんなに綺麗で自然に、ネバーランド感ファンタジー感をまとって、舞台転換やピーターパン特有の飛ぶっていう作業を支える存在があるだろうかって。
音楽に合わせていかにもダンスって感じに踊るのではなくて、なんだろうな、自然に存在して世界観を支えてるっていうか。
凄い人たちでした。
あと、セットなどについては、映像がとってもきれいでした。ロンドン上空を飛ぶ時や、星空が、とてもとても。
いかにもスクリーンに映画うつしました!みたいなんじゃなくて、本当にそこにあるように映してあって。
あと、基本のセットはウェンディたちの子供部屋なんです。
脇に、子供部屋の家具とかがあって、天井の枠?の装飾とかも子供部屋で、それは場面が転換しても動かない。
セットは完全には変わらない。
中央部分にある、ベッドや窓だけが片づけられて、そこにネバーランドの木のセットや海賊船のセットが出てきたりする。
なんかそれが・・・本当に完全に違う場所に行ったわけでなく、本当は、子供部屋の中での出来事、彼らの心の中での出来事なのかもな、ネバーランドは子供の心の中にある場所なのかな、と思わされた。