After tone -4ページ目

墜落

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出来ない事を数えるより
出来る事を数えた方がいい


けれど
出来ない事の数ばかりが増えて行き
私の元気は奪われて行く


忘れられた約束を嘆くなら
約束を信じる事をやめようかな


そんな事を考えていたら
私がとても可哀想になった


我慢する事が増えて行き
平気なフリをする力が尽きて行く



忘れる努力をしてみる

無かったことにしてしまえばいい


それさえ出来る心が潰れて行き
溢れるようにこぼれる涙が止まる事を知らない



言葉なんて…
所詮 消えてなくなるもの

みんな同じ
結局同じ







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魔女


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朦朧とした意識
うつらうつらと曖昧な視覚

熱い身体
遠い聴覚


その杖を一振りして 見えない魔物を連れてくる


私のアタマの中にそぅっとそっと入り込み
縦横無尽にうごめいて そこら中を突きまくる


引き摺り込まないで 闇の中に
纏わりつかないで  絡みつく思考

見るもの全てが色を無くし
思い付く全てが沈んでいく



闇の中から現れて
闇の中に落として行く



そんな場所から見下ろして
私の苦しみを嘲笑うのか




小さな力を振り絞り
その杖を折ってやる


翔べない魔女に 力は無い

闇の中に突き落としてやる
2度と纏わりつかないように







朦朧とした意識の中
うつらうつらと曖昧な感覚

見えないはずの魔物は今
土砂降りの春の雨に消えて行く














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喧嘩

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発した言葉が迷走し 彷徨って墜落する

砕け散ったカケラが鋭利な刃物となって鈍い光を放つ

牙を剥いた刃(やいば)

武器となった50音が 冷たく並んで行く



違う
そうじゃない


心と裏腹に打ち込まれて行く くさびのような叫び
 

違う
そうじゃない


速くなる脈
締めつけられる胸
呼吸困難
洪水のような涙…

 
言葉に意味を持たせる事の恐怖
表現することの力の無さに沈み込む


違う
そうじゃない


言葉の綻びが亀裂を生んで
悲しみの果てに凍って行く心



ただ…愛しているだけなのに
ただ…愛されたいだけなのに


失うことの恐怖に怯える夜

二人での思い出が 走馬灯のように渦を巻いて
涙の渦潮の中 もがく力もなく沈んで行った






愛しているだけなのに
愛されたいだけなのに












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