アニメ【烏は主を選ばない】 第20話「黄金の烏」感想・雪哉の決意 | 占いworld♡エンタメ部

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北領霜原。母親の初音に会いに来た小梅は初音の部屋に通されます。狭い一室には色とりどりの着物が並んでいました。初音は閂で戸を塞ぎます。部屋には男物の着物も。猿と取引していたのは初音だと迫る小梅。「自分は手を汚さずにお父さんひとりを働かせて仙人蓋で大儲けして。邪魔になったから切り捨てたんじゃないの?」何を言っているかわからないと言う初音に小梅は『あんたを突き出すつもりはない。これから自分はひとりで生きていかなきゃならない。少しくらいいい目を見させてくれない、お母さん』

 

小梅のため着物を物色する初音。小梅の質問に答えながら。女の子を猿に食わせる度胸は治平にはない。治平には訳ありの荷物を運ぶよう依頼しただけ。治平は訳ありの荷物が猿だとは知らなかった。猿だと知った最初の仕事から帰った時に二度とご免だと言ったけど、結局栖合も引き受けてくれた。地下街に目をつけられたため、親子ともども猿に食われたことにしてどこか田舎へ逃げようとした。

 

栖合に行くように仕向けたのは初音じゃないのかと小梅は言います。挙句の果て治平に全部押しつけ、自分ひとりの仕業だと文に書くよう命令したんでしょ。初音は「あの文は治平があんたのために書いたのよ。両親ともに人殺しじゃ小梅がかわいそうだ。悪党は俺ひとりでいいってね。あれがあったから地下街も手を引いたのよ。最後まで治平はあんたのことばかり考えてた」

 

小梅に着物をあて、男が帰ってきたら3人で美味しいものでも食べに行こうと言う初音。「触らないで!」と初音を拒絶する小梅。「あたしの親はお父さんだけよ。あんたなんて母親じゃない。絶対に!」

 

小梅の拒絶に初音も態度を変え、小梅の首を絞めにかかります。「親なら子供を殺す訳ないって思ってんでしょう? 甘いのよ。私は、父親に売られたの。13の時、たまったツケの代わりにね。一度じゃない。何度も何度も。冬のある日、父親が外で酔いつぶれてた。明日は雪になるって晩で、だから締め出してやったの。そしたら朝には冷たくなってた。治平に見初められた時は嬉しかった。やっと家族を持てたと思った。治平は私を大事にしてくれてねぇ。けど、あんたが生まれてまた私はひとりになった!そうね。私は人殺し。なんでこんなことになっちゃったの。私はただ幸せになりたかっただけなのに」

 

 

初音も小梅も父親はろくでなし。初音も小梅も生活のため、子供なのに働きに出なければならなかった。ただ、小梅の父親治平は稼ぐことはダメでも小梅を愛し大切にした。初音の父親はたまったツケの代わりに男たちに娘を売った。初音はその後、治平に愛されることでその傷が癒されたけれど、治平の愛は初音から小梅へ移り、治平の一番でなくなったと感じた。初音には誰よりも一番に愛されることが必要だった。

 

意識を失う小梅。戸が破られる音。小梅を呼ぶ雪哉の声。意識を取り戻した小梅。

 

若宮「雪哉からだいたいのことは聞いている。今までひとりで辛かったろう」

雪哉「本当にごめん。ひどいことをたくさん言って」

小梅「雪哉は来てくれると思ってたわ。あたしのこと疑ってたから」

 

私を心から信じてくれる人はもういないと父を思い泣き崩れる小梅。「後から来なさい」と小梅と雪哉を置いて、若宮は初音を連行します。そこに初音の男が帰って来ました。「あんた、助けておくれ!」と初音は叫びますが、男は仙人蓋で正気を失い烏に転身。部屋から小梅と出てきた雪哉を襲い、小梅を嘴でつかみます。雪哉は猿に襲われた時と同じ状況と烏の首に飛び乗り、若宮に刀で退治させようと仕向けます。若宮は刀の柄の方を烏に投げ、みねうちで気絶させるのでした。

 

そして、若宮の背後を初音が自分のかんざしで刺し、若宮はその場に倒れます。必死に声をかける雪哉。大烏が意識を取り戻し、再び雪哉たちに襲いかかろうとした時、上空から別の烏が舞い降ります。澄尾です。澄尾が暴れる大烏の息の根を止め、続いて山内衆も駆けつけて逃げ出した初音を連行。

 

 

北家本邸。血に染まった水の桶と血だらけの手ぬぐいが女房に渡されます。御簾の向うに横たわる若宮と付き添う浜木綿の姿が。

 

 

雨が強まり大雨に。北家本邸外廊下で座す雪哉。浜木綿が外廊下に姿を現すと、土砂降りの中を走ってくる人が。澄尾です。雨に打たれながら平伏し「俺の責任です。申し訳ありません」浜木綿は裸足で庭先に降り、澄尾の首根っこをつかむと右こぶしで澄尾を殴ります。倒れ伏す澄尾。「処罰は済んだ。だからバカなことは考えるんじゃないよ。これは命令だ」

 

長束様の取り調べによる初音の自供。涸れ井戸の底の声から若い女を求められ、治平が断固拒否の姿勢でいた際、初音が井戸へ向かって言います。「女の肉なら別に私でなくてもいいんでしょ?」「あぁ構わない。お礼にもっとたくさんの仙人蓋をやろう」

 

治平の文では治平が女の子を殺害して井戸へ投げ入れたと書かれていましたが、実際に女の子を襲って殺害したのは初音ってことですね。

 

初音「もう、いいでしょ。縄を外してくれない?痛くて」

長束「そんなものではないはずだ。犠牲になった哀れな同胞にお前が与えた痛みと苦しみは」

初音「誰が同胞だって?あんたたちに世話になった覚えはないけど。そっちが仲間だって言うなら、ここから出してもらおうかしら。(笑う)」

長束「貴様!」

初音「誰も助けてくれなかったわ。哀れとか同胞とか、綺麗な言葉を並べて近づいてくる奴はとくにね。でも、猿は嘘をつかないし、お金をくれた。おかげで夢のような贅沢ができたわ。今だって猿に感謝してるわよ」

長束「くっ!」

初音「それで?私を殺すんでしょ?いいわよ。許してあげる」

 

引き立てられる初音。

初音「こんな世の中、長くは続かないわ」

 

夜の外廊下を歩く長束様と路近。

長束「わからん。私にはあの女が理解できん。いや、女には同情の余地もない。理解する必要もないのだ」

路近「おそらく女は惨たらしい形で処刑されるでしょうなぁ」

長束「自業自得だ」

路近「えぇ。その通りです。長束様」

長束「だったらそのしたり顔を今すぐやめろ!」

 

長束様が初音を理解できないのは分かる。でも、理解できないけれどモヤモヤというかしこりみたいなものを感じてしまうのは長束様の良心かなと思います。必死に初音の自業自得と自分に言い聞かせてる感じがします。長束様は本来、問答無用に初音を一刀両断できる立場にある。宗家として金烏を守る役割だけでなく、弟愛が深い長束様個人としても。大事な弟奈月彦を殺そうとした初音。この取り調べの最中も奈月彦は生死の境目にいる。


初音は不幸な娘時代に心身ともに傷つき、心が空虚なんだろうと思う。心が空虚なので人の痛みを自分の痛みとして感じることができない。愛されることを実感させてくれるべき肉親によって手酷く傷つけられ、自分の中で愛を育てることが出来なかった。だから小梅の母親になれず家を捨てた。一番助けを求めている時に誰も手を差し伸べてくれなかったから、他人が信用できない。何かの価値を与えてくれる等価交換みたいな関係しか結べないのかもしれない。


「誰も助けてくれなかった」と言いつつ「私を殺すんでしょ?いいわよ。許してあげる」とも言う初音。これらの言葉に長束様は動揺し理解不能のモヤモヤを感じたのじゃないかと私は思います。

 

近頃、Web漫画を読みまくってるのですが、ちょくちょく初音のような心が歪んだキャラが登場するんです。全部が全部じゃないけど、初音みたいな悲しい過去を持ってたりするとどうしても引っ張られますね。


長束様は初音の過去はおそらく知らない。でも、何か引っかかりを感じるのでしょうね。得体のしれない路近みたいな人が長束様に付き従うのは長束様のそんな部分が関係しているのかも。そして私が長束様が好きなのもここにある気がします。言語化が難しい。考えがこなれてきたらいずれ書くことになるかもです。

 

やまない夜の雨に打たれる澄尾。浜木綿に「殿下が刺されたのは僕のせいです」と言う雪哉。「たやすく猿を倒せるなら、大烏も一撃で殺せるだろうと」

 

浜木綿「いや、お前のせいじゃない。真の金烏とはなんだと思う?雪哉、奈月彦はな、八咫烏を殺すことができないんだ」

 

金烏にとって全ての八咫烏は慈しむべき対象。たとえ相手が自分の命を取りにきた奴であろうと。真の金烏には心がないとも言われている。心というより感情かな。実際、あいつ自身もそう言っている。嬉しいとか悲しいとか感情を持った記憶がない。君主が正しい判断を下そうとする時、個人の心は邪魔なものでしかないからだろうって。けどね、奈月彦に感情がないというのは絶対に嘘だと私は思っているよ。それでもあまりに大きな金烏の使命を前にすれば、あいつの心も水に濡れた紙みたいになってはかなくなって、本人も気づく前に、溶けて形を失くしてしまうんだろうね。

 

若宮。いい奥方をもらったね!真赭の薄も后の役割を果たすことができると思うけど、ここまで若宮を理解して寄り添えるのは浜木綿しかいないと思う。そして、先のことを考えるととても切なくなる。

 

夜が明け、雨が上がり「殿下がお目覚めになったぞ!」若宮の手を取る浜木綿。涙をにじませ「よかった、よかった」とつぶやく長束様。御簾を上げて駆け寄る澄尾。「奈月彦!俺だ。わかるか?」澄尾の言葉に応えうなづく若宮。若宮の足元で泣き崩れる澄尾。雪哉は澄尾の男泣きを外廊下で聞きながら「神様」と、涙をぬぐいます。

 

夜の山中を歩く若宮と雪哉。崖の先に見える不知火。ビルや集合住宅から発せられる光の群れ。

 

雪哉「なぜこんなに?」

若宮「私が伏している間に綻びが広がったようだ」

 

次々と矢を射る若宮。不知火は人間の作り出す光だ。人間は闇という闇を照らさずにはいられない生物だ。その勢いは凄まじく、こうして山内のそばまで迫っている。いや、既に辺境の村がいくつも飲み込まれ消滅した。遠からず猿どもはまた現れるだろう。山内の水は枯れ、民の心は荒れる。綻びもますます広がり、そしていずれは人間も。崩壊の真の姿は私にもわからない。だが、確実に来る。真の金烏は常にその時代に望まれる力を備えて送り出される。乱世には癒しの力を、災害の世には生き抜く叡智を。そして私は、山内の崩壊をくい止める力を。

 

雪哉「僕はどうすればいいのですか?」

若宮「垂氷に戻り、家族を守るのであろう」

雪哉「じゃあ、あなたは。ひとりで山内を守るんですか?これからも誰も知らない所で、綻びを繕い、自分の感情を押し殺して」

若宮「私は全ての八咫烏の長。一羽を救うために全てを捧げる。それが私の喜びだ」

 

 

雪哉「殿下。あなたを守るということは、山内を守ること。すなわち、僕の故郷を守ることだ。つまり、これからもあなたのそばにいて支えることが最良の選択です」

若宮「雪哉」

雪哉「真の金烏は仕事はできても、自分の面倒はからっきしでしょ?あぶなくてほっとけませんよ」

 

雪哉「金烏陛下に伏してお願い申し上げます。これより後、わたくし垂氷の雪哉はこの命尽き、身体朽ち果て、魂の最後の一辺が消えてなくなるまで、あなた様に忠誠をお誓い申し上げます」

若宮「いずれお前は私の懐刀になろう。だが、そのために辛い思いもすれば、苦しいこともあると思う。必要になればお前を切り捨てるかもしれないし、時に私は最良の主ではないかもしれない。それでも構わないか?」

雪哉「どうか配下の末席に加えてください」

 

少しは削ろうかと思ったけれど、削れない!とうとう雪哉が若宮を主としてお仕えすることを決意しました。感動のシーンです。十二国記の麒麟の誓約が頭をよぎりました。

 

勁草院。院生たち。「今年はやばい奴がいるらしいぜ」「あぁ、大貴族の御曹司だろ」「俺は若宮の近習って聞いたけど」

 

市柳「ここは勁草院だ。いやしくも金烏をお守りする山内衆の養成所。腕っぷしが全てだぜ。御曹司だろうが、近習だろうが、この市柳様が骨の髄から鍛え直して、あ?」

 

雪哉が満面の笑みで市柳に近づいてきます。

 

雪哉「お久しぶりです。市柳先輩!」

市柳「なんだお前、勁草院には来ないって」

雪哉「あぁ、ちょっと気が変わりまして。山内衆になるのも悪くないかなって。ま、どうぞお手柔らかに」

 

嘆く市柳。笑顔で市柳たちから去り、そして真剣な表情になる雪哉。

 

この終わり方!次は「空棺の烏」だ。先々、深刻度が増す八咫烏シリーズですが「空棺の烏」はかなり楽しいので、期待してお待ちしております。

 

最終回、とてもよかったです。感動シーンてんこ盛りな気がしてならない。小梅ちゃんのところ端折ってしまいましたが、小梅ちゃんはひとりでも強く生きていくと思う。お母さんのような悲しい人生はきっと送らない。結局、山内には格差や差別が色濃く残っている。治めるべき貴族たちは自分たちの利権を守ることに必死。山内の外、現代人間社会と同じなんですよね。なんてことをつらつら考えながら、第20話の感想を終わりたいと思います。