中央どこかの宮の一室。横たわる遺体にかけられた血だらけの布をめくり、小梅ははその遺体が父・治平であることを知ります。さらに布をめくろうとする小梅の手を雪哉は「見ない方がいい」と制止します。
明鏡院。治平は吊るされる前、生きたまま皮を剝がされたようだと語る長束様。地下街容赦なくて怖い。無法地帯の所以なのでしょうね。ただ、アニメの治平の死顔はさほど苦痛の表情ではないように見えました。それだけがちょっと救いかも。治平の遺体には治平の文がくくりつけてあり、皆は治平の最後の声として文の内容を確認することになります。
治平の告白。中央山の井戸が涸れ、水売りからの商売替えもままならず、妻は家を出ていき、幼い娘が働きに出た。治平は酒と博打に明け暮れ、まれな幸運でお金を得た際、まだ水が湧くとの話を信じ古い井戸を買った。藁にも縋る思いで水を戻してもらうよう涸れ井戸に酒を注いだ時、「お前、八咫烏か」と井戸の底から声がした。水は戻せないが、うまいものをもってきてくれたらお礼にいいものをやると、涸れ井戸の底から小さな巾着が投げられた。「薬師のところへ持っていけ」治平が巾着の中を覗くと白いかけらがあり、薬師からお金を受け取ることができた。治平は神の恵みと思い涸れ井戸の底からの声に応じ続けた。声から渡された白いかけらが仙人蓋だとわかるのは少し後のこと。
最初の捧げものは酒や野菜、果物。それに、鶏や魚が加わり、ついに声は『お前から妻か娘か若い女の匂いがする。それを食いたい』と言い始めた。それだけはできない、と言う治平に、声は「他の女でも構わんよ。もっとたくさんの仙人蓋をやろう。それでお前の大事な女を喜ばせてやるのはどうだ?」と猿の姿を現した。娘には自分の所業を知られたくないと、治平は若い娘を襲い、涸れ井戸へ捧げた。
声は一度にたくさん獲物を捕る方法として、声の仲間の猿を狩場へ案内するよう言ってきた。手引きをした北領で人の姿をした八咫烏を食らう猿の光景を目撃した治平は、手を切ることを決意。ちょうど地下街が仙人蓋の売人を探している噂が流れていて、北領栖合を最後にしようと娘を連れて行くことにした。この仕事が終わったら娘と中央を離れるつもりで。うまくいくはずだったのが、ふたり(若宮と雪哉)が現れ、小梅を連れて逃げることができなくなってしまった。
以上の内容により、長束は、地下街と朝廷に目をつけられた娘の無実を晴らすため、治平は覚悟の上で姿を現した。全ては治平の仕業で「この文は治平の懺悔だ」と言います。それでも、なんとなく微妙な空気の面々。納得できていない感じです。
声がした涸れ井戸に酒を注ぐ雪哉と澄尾。話しをする猿をおびき出すため。御前会議の前にこんなことをしていいのかと若宮に言う雪哉。
若宮「会議になれば早急に井戸を塞げと老人たちが騒ぎ立てるのは目に見えている。声の正体を確かめるなら今しか機会はない」
あの文をどう思う?と若宮に尋ねられた雪哉は『治平に同情はしない。娘のためとはいえ八咫烏を化物に差し出した。小梅も栖合に同行したふたりの男のことを黙っていた』と不信感いっぱいの様子です。
井戸の底から「そこにいるのは誰だ?」と声がします。
声「我らの仲間を殺したのはお前か?」
若宮「八咫烏を殺した者は殺した」
声「お前、もしや八咫烏どもの長か?」
若宮「私は真の金烏だ」
声「そうか、真の金烏か。また会えて嬉しいよ。いや、初めましてと言うべきか」
若宮「お前はどこから来た。猿の一味か。であれば、なぜお前だけ言葉を話す?なぜ八咫烏を食った!」
声「そう焦るな。わしはとても長く生きている。お前らのこともカァとしか鳴けなった頃から知っているぞ。八咫烏どもは都合の悪いことは忘れて生き延びてきた。だが今、そのつけをはらう時が来ているのだ」
若宮「なんのことだ」
声「山内の崩壊の話さ。わからんか?己の欠けた所に手をあて考えろ!」
去ろうとする声を追い、若宮は松明を持ち、涸れ井戸へ舞い降ります。逃走する猿の姿を確認しますが、通路は岩の壁に塞がれ、言葉を話す猿をそれ以上追うことはできませんでした。
招陽宮。桜花宮より浜木綿と真赭の薄が訪れます。小梅を預かろうと申し出てくれた人がいる。その人は垂氷の梓。雪哉ママは桜花宮から小梅を引き取って垂氷に帰りたいと言ってくれている。「小梅は猿に垂氷を売った男の娘なのに」と納得できない雪哉。梓が『だからこそ見捨てられない。罪人の子の肩書は小梅には重すぎる』と言っていたと、浜木綿は雪哉に伝えますが『小梅はまだ何か隠している。母に話して考え直してもらう』と、飛び出そうとします。
「今のお前が行ったところでまともな話ができるとは思えない」「僕は冷静ですよ」「お前がそう言って冷静だったためしがあるか?」と再三の若宮の制止にも耳を貸すことなく、ついに雪哉は捨て台詞を吐いて飛び立っていきます。
雪哉「俺はあんたに忠誠を誓った覚えなんかない!」
出た!雪哉の若宮あんた呼ばわり。僕から俺になっているし、相当イラついているようです。
北家朝宅。庭先にいた小梅に雪哉は「垂氷には来ないでください。僕は君が信用できない」と小梅に言います。小梅はそれに対し『自分は誠実でなかった。でも栖合のことも、父親がしでかしたことも本当に知らなかった』と返します。
雪哉「霜原に女の売人がいたそうです」
小梅「霜原」
雪哉「ええ。中央から栖合への通り道にある町ですよ」
小梅「(はっ)」
雪哉「女は仙人蓋をたくさん持っていた。用心深く顔は隠していたようですが。右目の下に黒子がふたつ並んであったそうです。ちょうど君みたいに。お父上のしていることを君は本当に知らなかったんですか?」
「それは私じゃない」と言う小梅。小梅がその女だと思い込んでいる雪哉が「嘘を言ったってすぐに!」と語気が荒くなったその時、梓ママが登場し、雪哉に声をかけます。そして。
梓「ふたりで何を話していたの?」
小梅「いえ、なんでもありません。あたし、そろそろ失礼します」
雪哉「待て。まだ話は!」
小梅「じゃあね。雪哉(と言って去る)」
雪哉「(振り返って)母上は騙されています!」
雪哉は梓ママに言います。最初から小梅は母上の善意を利用していた、父親に全ての罪をきせて、何食わぬ顔でいい暮らしを手にいれようとしている。猿の犠牲になった垂氷に住むことをねだるなんて!と息巻く雪哉に、梓は「垂氷に来るよう小梅に勧めたのは私です。それもさっき断られてしまったけど」
梓の回想。
小梅「父がしたことを私はわかっているつもりです。娘としての責任を知らなかったと免れるとは思っていません」
小梅「父は私には優しかった。とんでもないろくでなしでしたけど。雪哉にももう、会うことはないと思いますから、よろしくお伝えください。ありがとうございました」
「今のあなたは怒りで目が曇っている」と梓ママに言われる雪哉。若宮と同じようなことを言われてます。感情的になり、思い込みのあげく決めつけて、冷静に見ることができなくなっているんですよね。雪哉自身は冷静だと思ってましたが。それにしても梓ママは本当に器の大きい素晴らしい御仁だと思います。雪正が惚れるのも無理はない(笑) 梓に比べるといささか考えが足りない感じもする雪正ですが、女性を見る目は確かだったのは間違いないですね。
梓ママの言葉でようやく目が覚めた雪哉。行方知れずになった小梅を探しますが見つかりません。澄尾は「小梅が売人だとはっきりした」と言いますが、雪哉は冷静さを取り戻していますので、当初の目の下の黒子程度では証拠にならないと考えを巡らせ「自分のことを疑う僕を利用して(私を追いかけて来いと?)」と思うに至ります。そして招陽宮に走り、若宮に言います。
雪哉「殿下!僕は大事なことを見落としていたかもしれません」
北領霜原。酒徳利を運ぶ初音という女性に「お客さんだよ」と声がかかります。「あんたの妹かね?」頭に巻いていた手ぬぐいをとった初音の右目下にはふたつの黒子。
小梅「見つけた。久しぶり。お母さん」
治平と小梅を捨て、家を出て行った母親。小梅と姉妹に見えるくらい若々しく、30歳過ぎくらいなのでしょうけど、この年齢は実際女っぷりがよくてかつ充分に若い年代ですよね。個人的に一番女性的な美しさが輝く年代ではないかと思っています。
一方、仙人蓋を直接遊女に売っていたチンピラ風の男が、売人は目の下に黒子がある女とチクっていましたね。自分が売人のクセに。おそらくは初音ではなく、小梅に罪をきせようとしてのことなんだろうと思うのですが、次回どのような展開になりますでしょうか。
さて、次回はタイトル「黄金の烏」です。これまでのパターンを考えると、次で最終回なのかなぁと思ってるのですが、どうなんでしょうね。本編は9月21日に放映ですが、次回が1シーズンの最終回だとすると9月28日のこの枠、何を放映するのだろうか。「烏は主を選ばない」の外伝をやってくれるとか?それとも「チ。」の事前特番?
「チ。」も超絶楽しみではあるのですが「烏は主を選ばない」が終わるのはとても寂しい。「チ。」が終わったら、その次は「キングダム」かもしれないし。「キングダム」も好きなのでそれはそれでいいんですけどね。いずれにしても次回でいったんの決着がつくと思っています。覚悟しつつ、楽しみにしています。