第13話の感想に入る前に。まずは新章「黄金の烏」放映おめでとうございます!(狂喜乱舞)これが、NHKで放映される強みですね!「進撃の巨人」「キングダム」と同様に最後までシリーズが続くのだと確信できて嬉しい事この上ないです。昔々に放映された「十二国記」はそもそも本編が完結していない関係でか何なのか、途中で終わっていますけど、現行の「八咫烏シリーズ」は本編連載継続中の「キングダム」と同じ扱いなのだろうと信じています。
では「烏は主を選ばない」の第13話「烏に単は似合わない」の感想に入りたいと思います。
若宮よりこれまでの謎解きが開始されます。あせびが嘉助(かすけ)宛てに書いた文を読んだ女房うこぎは衝撃を受け、文を手から落としてしまいます。その文を手に取り読み上げる雪哉。
雪哉「誰にも言わず私に会いに来て欲しい」
目印は赤い着物。赤い着物が飾られていたのは西殿。あせびは東殿に赤い着物を飾ろうとした。でも、女房うこぎが着物を取り上げてしまった。それが予想できなかったはずはないと言う若宮にうこぎは、あせび姫がわざと西殿へ侵入させるようにしたはずはないと主張します。
若宮の謎解きは続きます。山烏下男のかすけは字が読めなかった。早桃はかすけにあせびからの文を読み聞かせ、返事も代筆していた。かすけが字を読めないことには考えが及ばないあせびでしたが、文の仲介をした早桃の様子がおかしいことにはすぐ気づき『下男を呼んだことを知られたら宿下がりになってしまう』と藤波に泣きついたのでした。
前回、若宮から「男と文を交わし、密会するのは重大な掟破り」と言われた際には「ごめんなさい。下男だから問題ないと思って」とあせびは悪びれずに答えていました。息を吐くように嘘をつき、自分へ好意を抱く者を自分の利になるよう誘導する。これらは計算と言うより、もはや細胞レベルのあせびの性質ではないかと私は考えています。思考での行動ではないので、かすけが文字を読めないことには考えが及ばない。でも自分に好意を持っているとか、疑惑を感じているかなどは敏感に察知する。感情の読み取りに長け、本能レベルで相手の感情を意のままに操っているような印象を受けます。
若宮はもう一通の文を手にします。若宮は四家の姫、全員に文を出しましたが、返事が来たのはあせびからの一通だけ。浜木綿は桜花宮からの逃走時に、文を盗んだのは自分と言っていましたが、真赭の薄は『桜花宮宛ての文は全て藤花殿に留め置かれ』浜木綿や他の姫が他家の文を横取りする余地はないと言います。
藤波に冷たい視線を向ける若宮。
藤波「ご、ごめんなさい、お兄様。バカなことをしました。私はただ、あ、あせびの君はお兄様の后にと」
若宮「文を隠すなど些細なことだ。藤波。お前の犯したもうひとつの罪に比べれば」
あせびに泣きつかれた藤波は下男のことは他言しないよう早桃に言って聞かせると約束しますが、それでは安心できないあせび。藤波から気持ちを離すことで彼女をコントロールしている感じを受けました。恐るべし、あせび。長束が、彼を金烏にしようとする周囲を監視し、自分は直接手を下さずに粛清していたのと少々似ているかもしれません。ただ、長束は意図的にそれをやっていたけれど、あせびは意図してやっていたとは私には思えません。「東家は腹黒」と言われています。表面上は警戒心を抱かせずに自分の思うような結果を得る。でも、いわゆる策略とは違う気がします。あせびの得体のしれないこの感じは、おそらく母の浮雲の血によるものなのではないでしょうか。
藤波の回想。早桃に櫛を渡し、桜花宮を去ることを命じる藤波。早桃が持っていた櫛はあせびではなく、藤波から渡されたものだったのですね。
早桃「あせび様ですか?あの方はあなた様が思っているような方ではありません!卑怯な手で他の后候補を陥れようと!お願いです、どうかお耳を!」
藤波「夜が明けた。今すぐ飛んで行きなさい。山烏なのだから飛べるのでしょう」
早桃を高欄から突き落とす藤波。早桃は墜落し、命を落とした。藤波は着物を着た状態では鳥形に変化できないことを知らなかった。
若宮「お前も同罪だ、滝本。逃げ回るだけのかすけの首をはね、盗賊の汚名を着せた上、早桃は仲間割れの上に殺されたなどと、真実を捻じ曲げた。己の主を守るために」
恐慌状態に陥る藤波。「藤波様、お可哀そうに」とあせびはつぶやきますが、自分は全く預かり知らずの他人事な風情の態度。
若宮「早桃の件はどうだ。あなたが宿下がりを口にし、藤波に助けを乞えばあれがどんな行動を起こすのか考えもしなかったというのか?」
あせび「私が誤解を招くような言い方をしたから、まさかあのような恐ろしいことをなさるなんて。全ては私のせいなのね。藤波様のご厚意に私が甘えてしまったばかりに。ごめんなさい。藤波様。早桃もかすけも死ぬことはなかったのに。なんて不運な巡り合わせでしょう」
若宮「私はあなたの悪意を証明できない」
あせび「若宮様。私はずっとあなた様のことを」
このタイミングでそれを言うのか。怖すぎるよ、あせび。
若宮「だが、悪いな。私はあなたが嫌いだ」
藤波が哀れです。同じ母を持つ兄妹と言えども、若宮は金烏。普通の烏とは視点が違い、藤波の求めるものを素直に与えることができない。前回、若宮の真赭の薄への物言いに「ふざけんな!」と怒りの感想を書きましたが、若宮は情がない訳ではなく、たぶん普通の情とは次元が違うだけなんですよね。そのあたりは非常に水瓶座っぽい感じがします。凡人には理解しにくい情愛(笑) 一方の藤波はただ愛されたい普通の子供。ベタに分かりやすい愛情が必要なのだと思いますが、それが得られずに震える幼い子という印象があります。もちろん、かすけと早桃はもっと哀れです。
こうして、3人の后候補が全滅した後、若宮は真直ぐに女房の姿に身を隠した浜木綿の元に進み「待たせたな、すみ」と声をかけます。
二人きりになった若宮と浜木綿。浜木綿は『真赭の薄を后にしろ』と迫りますが、若宮はスルー。
若宮「私が求める后とは責務を果たせて、なおかつ四家の力関係に影響を及ぼさない女人だ」
浜木綿「分からんこともないがね。そんな都合のいい女がどこに。は?」
若宮は真赭の薄とほとんど同じ言葉で浜木綿に求婚。でも、真赭の薄の時と受ける印象が全然違う。真赭の薄の時は無駄にムカつきましたが、浜木綿への言葉には愛を感じる(笑) 声優さん(入野自由さん)って凄いですね。
浜木綿「お前の母親を殺めたのは」
若宮「知っている。でも、問題はない」
この若宮の言葉。これこそが金烏の証のように思います。
浜木綿「ひとつ条件がある。お前の死に水は私に取らせて欲しい」
若宮「わかった。約束しよう」
そして、浜木綿は若宮をグーパンチ!
若宮「なぜだ?お前は私にすっかり惚れていると思ったのに」
浜木綿「これからは乙女心を学ぶんだね」
そして、原作「烏に単は似合わない」の序章のシーンの種明かしです。あせびが少年若宮を初めて見た時に若宮の傍らにいた少年。「すみ」って呼んでいたから、幼馴染の「澄尾」だと思うじゃないですか。実はこの少年が浜木綿だった、と。もう、絶対狙っていますよね(笑)
かくして浜木綿が若宮の后となりましたが「黄金の烏」の不穏な空気を感じさせる中、雪哉は垂氷に帰ることに。
原作は現在、第二部の「烏の緑羽」の途中まで読み進めています。それは大変に面白いのですが、巻を進めるごとに非常にハードになっていく印象があります。本当に、かなり深刻です。通常ルールを軽く超えてきてないですか?という気すらします。予想の斜め上を行くのが「八咫烏シリーズ」なのかもしれません。そして「烏に単は似合わない」「烏は主を選ばない」の時点から、先の展開までずっと繋がっているのに感心しきりです。
ということでまだ先は長いですが、今後も「烏は主を選ばない」を楽しんで参りましょう!