本来ならば后選びは入念な準備の上で行われるものと思われますが、事前の連絡なく突然桜花宮に現れた若宮。若宮はこの后選びで何かをやろうとしている様子です。何を考えてのことかを尋ねる近習の雪哉にも「さてな。鬼が出るか、蛇が出るか」と答えるだけ。
桜が舞い散る花見台。先ず、声がかかったのは白珠。登殿の1年をねぎらう若宮に「入内はあたくしの義務。そこにあたくしの心など入る余地はありません」と答える白珠。
若宮「白珠殿。あなたは一度でも自分で選ぼうとしたことはあるか?私はこうしたいと意志を示したことは?生まれに縛られ、縛られたことを言い訳にあなたはただ人に言われるままに生きてきた。我が身の不幸を嘆きながら。自己犠牲と言えば聞こえはいいが、要するに怠慢だ」
きつい物言いに思わず雪哉は「そんな言い方しなくても」と口を挟みますが、若宮はそれには全く構わず「で、その子はどうするおつもりだ?」と爆弾発言。騒然となる花見台の面々。
若宮「どうする、白珠。返答如何ではあなたを后に迎える用意があるが」
しかし、白珠は「あたくしがこの子を守る。誰が入内などするものですか。あたくしはもう、二度と一巳を失う訳にはいかないの!」と若宮の申し出を断るのでした。
若宮「やっとご自分で選ばれたな」
若宮の「我が身の不幸を嘆きながら。自己犠牲と言えば聞こえはいいが、要するに怠慢だ」との言葉は確かに厳しいかもしれませんが、至極真っ当なことを言っていると思います。若宮の言葉で今度こそ自分の意志で選択した白珠。その彼女を見守る若宮の嬉しそうな表情が印象的です。選択には責任が伴い、その選択の結果は自分で負うしかありません。周囲の声に流され、闇雲に従うだけでは己の生きる責任を放棄しているに等しいのではないでしょうか。だから若宮は「怠慢」と言い切ったのだと思います。
雪哉に肩を借りた一巳が現れます。藤宮連滝本に斬首されたのは一巳とは別人。若宮は山烏夫婦の貧しくとも肩を寄せ合う姿を語ります。
雪哉は「はったりでしょう?白珠様の御子のこと」と若宮に聞きます。白珠は混乱して一巳の子がいると思い込みましたが、もちろん子などいるはずはありません。若宮は「白珠は自分が信じたいと思う方を選んだのだろう」と雪哉に返すのでした。
次に声がかけられたのは真赭の薄。彼女は若宮に浜木綿が若宮の命を本気でとろうとしていたとは思えないと「浜木綿の名誉回復を」と迫りますが「なぜ今そのようなことを」と若宮は問い返します。
真赭の薄「そうすべきと思うからです。見て見ぬふりはわたくしの誇りが許しませんの。さもないと、もしわたくしがこの後后に選ばれたとしても」
若宮「不要だ。本人の申し開きもないまま名誉回復もあるまい。それにあなたの誇りとやらにも私は興味がない」
若宮が1年も桜花宮を訪れなかったこと、姫たちに会わずになぜ后を選ぶことができるのかと問う真赭の薄。
若宮「桜花宮はお前たちのままごと遊びのためにあるのではない。私が女を選ぶためだ。そして私が妻に求める資質はただひとつ。待つこと。ただ、それだけだ」
若宮の言葉に「あてもなくただ待つことがどんなに苦しいか」と怒り気味の真赭の薄。
若宮「その気もないのにせっせと通えばよかったと言うのか」
若宮、すっごい塩対応。「全て受け入れる覚悟があるのなら、私の妻に迎えてやる」ですって。若宮は雪哉を側仕えとして迎える際にも『お前が全力か全力でないか、そんなことに興味はない。要は私の役に立つかどうかだ』と言っていましたね。
情を訴える真赭の薄にこの言いよう。西洋占星術で言うならば、エレメントでは風強過ぎじゃないですか感。『情?興味ないが』は水瓶座が強すぎる感じ。または若宮・山羊座テイスト対真赭の薄・蟹座テイストか。ちなみに真赭の薄がこだわる誇りは水瓶座の対局、獅子座の管轄です。山羊座には情はあるものの、権威的な立場や役割を優先する嫌いがあります。脱線ついでに仮に私が真赭の薄ならば「あなたの妻など固くお断りします」と言いたいです! すみません。どうでもいいですよね(笑)
真赭の薄は懐剣で自慢の御髪をばっさばっさと切っていきます。
真赭の薄「若宮殿下。せっかくの求婚ですが、お断りさせて頂きますわ。たとえご命令だったとしても、たった今山神さまに仕える身になりましたのでそれも叶わなくなりました」
若宮「徹底しているな。別にそこまでしなくてもよかったのに」
真赭の薄「わたくし自分が思っていた以上に意固地で単純にできているようです。けれどそれは、わたくしが誇りとともに生きていることの裏返し。あなたの求める女にはなれませんでしたけど、いっそ晴々した気分ですの。殿下にはお礼申し上げますわ」
若宮「お役に立てたなら何よりだ」
真赭の薄、素敵です。上のセリフからは獅子座を強く感じます。登殿当初は高飛車なお姫様の印象で、若宮の言うように性格に難ありな感じでしたけど、彼女には自分の非を認めて改める潔さがある。使命感を持って臨んだだけに、この登殿で成長著しかったのは真赭の薄かもしれないと思いました。
最後に残されたのはあせびの君。
あせび「覚えていらっしゃらないと思いますが、幼き頃、あなた様と私は」
若宮「覚えている。あなたは桜の精のようだった。今も変わらず。(立ったままで視線をあせびに合わせない若宮)宮中は血の歴史そのものだ。后になるとはその宮中でずっと暮らしていくということだ。あなたはそれに耐えられるのか。1年の間に二つもの命が失われたこの桜花宮で、尚もあなたは私の妻になりたいと願うか」
あせび「あさましいと思われるでしょうが、私は何があろうと若宮様の妻になりとうございます」
若宮「何があろうと、か」
若宮は早桃が亡くなる前、あせびが早桃を使い文を交わしていた相手を問いただします。あせびは「東家の下男ですわ。名をかすけ、と」と答えます。母親のことが知りたかったけれど、かすけは文にはできないと言うので「なら、話せばいいじゃない」と桜花宮に呼びつけたことをなんのてらいもなく告げるのでした。
若宮が、桜花宮に上がった姫が男と文を交わし、密会するのは重大な掟破りと言うと、あせびは「ごめんなさい。下男だから問題ないと思って」と返し「結局、かすけは来なかったんです」と悪気のない風でつぶやきます。
若宮は告げます。滝本に斬首された桜花宮の侵入者はかすけだったと。
若宮「しかも初めてではないな。あなたがかすけを呼びつけたのは」
第8話「侵入者」で若宮自身が殿下の使いとして東家に赴き、一の姫から直接聞いた登殿辞退の本当の理由が明かされます。
一の姫・双葉『新年の宴が催されておりました。側仕えはみんな出払い、この部屋にはわたくしだけ。いつものことでした。わたくしはにぎにぎしいのが苦手ですので。女房が戻ったのかと思いました。あの声が、生臭い息が、体中にしみついて。その者はわたくしの耳元で何度も。嬉しい。ようやく呼んで下さった。二の姫様と』
衝撃が走る花見台。
若宮「本来なら今ここにいるのは東家一の姫である双葉殿のはずだった。しかし事件を誰にも打ち明けられぬまま痘痕を理由に登殿を辞退。代わって選ばれたのが東家二の姫あせび、あなただ」
あせびを庇う女房うこぎ。姫は悪意で人を陥れることのできる人ではない。侵入者の烏がかすけである証拠はなく、文の仲立ちをしていた早桃の話を聞くこともできない。全ては憶測ではないかと若宮に訴えます。
若宮「よかろう。では、お前に教えてやろう。愛する姫がお前の知らぬ間に何をしていたか」
うこぎにかすけ宛ての文の束を見せる若宮。驚く面々。ぽかんとした表情のあせびを映し第12話は終了です。
今回冒頭で幼少期の若宮との出会いがあせびの回想で描かれていましたが、この出会いのシーンもなかなかにトラップです。第13話の予告に「残る后候補はあせびただひとり。清く美しいその瞳には何が映っているのか」とのフレーズがありました。あせびは純真、イノセントなイメージが強いです。侍女うこぎが、あせびは悪意で人を陥れることのできる人ではないというのも間違いではないと思います。でも、その悪気のない無邪気さが曲者。次回、あせびの本性が明らかになるかと思いますので、その際にあせびの感想を語りたいと思っています。
さて、私は第12話で終了するかと思っていたのですが、次回第13話タイトルが八咫烏シリーズ第1巻目の「烏に単は似合わない」ですので、第13話が第一シーズン最終回になるのでしょうか。アニメのHPを見てもその辺が明確ではないですね。もちろん、このままずっと続けて頂けたら有難いことこの上ないです。期待していますので続けて下さい。是非お願いします(笑) ということで第12話の感想を終わりたいと思います。