温寧と大根を売りに夷陵の町へ降りてきた魏嬰。江澄に誘われ、婚姻を控えた江厭離と再会します。江厭離は婚姻に出席できない魏嬰に婚礼衣装を披露するため訪れたのでした。魏嬰に、まだ生まれていない息子に字を考えて欲しいと言う江厭離。魏嬰は『金如蘭』と名づけます。江厭離は魏嬰と江澄の好物の汁物も持参しており、江澄に締め出された温寧にも汁物を渡し、乱葬崗での魏嬰の様子を伺うのでした。江澄は変わらず痛烈な物言いですが、彼なりに魏嬰を心配していることが伝わってきます。
乱葬崗伏魔殿。温氏一族と食卓についている魏嬰。どこか心ここにあらずの魏嬰が気になる温情。その後、伏魔洞でひとりになった魏嬰は、江澄との双傑の約束、藍湛と一緒に誓った天灯の祈り、窮奇道で藍湛に告げた言葉、昼に再会した江厭離を回想するのでした。
後日。温情は無謀にも「乱葬崗で蓮を育てる」と言っていた魏嬰に蓮の種が詰まった袋を渡すのでした。
江厭離との再会で魏嬰は里心がついたのでしょう。乱葬崗で蓮を育てようと思ったのもおそらく雲夢の郷愁からかと。そして、ようやく芽がでた蓮を阿苑が摘み取ってしまい、魏嬰は阿苑を泣かせてしまいます。阿苑に「羨お兄ちゃんはお姉さんが恋しいの」と告げる温情。阿苑は魏嬰に謝りに行き「小鳥さんになってお姉さんに飛んで会いに行けばいいよ」と言います。魏嬰は鳥の真似をする阿苑にまだ見ぬ金如蘭を重ねているのではないかと感じました。
金鱗台。金子軒と江厭離の婚礼準備に余念のない金光瑤。その様子を伺う金光善と金子軒。
金光善「見たところ、よく尽くしている」
金子軒「実は私も驚いています。阿瑤は身の程をわきまえ、金家に尽くしています。あまり疑う必要はないのでは?」
金光善「わきまえているほど、返って心配になる。いずれにせよ、子軒。将来の当主の地位は必ずお前が引き継ぐのだぞ。何があろうと正統の血筋ではない家臣の手になど渡してはならない。よいな」
金子軒「はい。父上」
金光善は自身が腹に一物のある人物だけに、金光瑤に同じ匂いを感じとっているのではないでしょうか。だからこの時期、金光瑤を重用していても心からは信用しない。金光善と金光瑤はある意味似た者親子と言えるのかもしれません。金光善が言う『正統の血筋ではない家臣』とはたぶん金光瑤のことだと私は思っているのですが、例え自分の血を引いていたとしても、母親が妓女の金光瑤は家臣に過ぎず、それでいて彼が有能だからこそ、金光善の心配と警戒が大きくなるのかもしれないな、という気がしています。
1年後。夷陵の町へ温寧を訪れた魏嬰は5日前に江厭離に子供が生まれ、名を金凌、字は如蘭と名づけられたことを知ります。
金鱗台。金光善に抱かれ、金光瑤にでんでん太鼓であやされている赤ん坊の金凌。金光善は待望の孫が可愛くて仕方がない様子です。沢蕪君と含光君の来訪を知らされた金光瑤は金光善にそのことを告げ、金光善に代わり金凌を抱こうとしますが「抱かせられるか。落としてしまったらどうするんだ」と金光善に拒絶されます。平常心を装いつつも憤懣やる方ない様子の金光瑤。
金子勲「含光君。それは本気なのか?もう一度言ってみろ」
藍湛「宴に先達たちを全員呼ぶのなら、魏嬰も先達にあたる」
金子勲「つまり含光君は魏無羨が先達だから四大世家を敵に回していても招待しろと言うんだな」
魏嬰「敵ではない」
金子勲「敵ではない?では味方だと?含光君は記憶力が悪いのか。窮奇道のことを忘れるとは。この私が思い出させてやろうか?」
くーっ、腹立つな金子勲。金子勲の物言いはいつも無駄に偉そうで本当にムカつきます。私は金光善は諸悪の根源だと思っているけれど、彼はさすがに老獪なところがあって、その言動にはもちろん腹は立つけれど、金子勲ほどの傍若無人さは感じないです。金子勲はまるで虎の威を借りる狐で、知恵も実力もないのにただ威張り腐っている馬鹿者にしか見えません。
金子勲「叔父上、ご存知ですか?含光君が何と言ったか」
金光善「どういうことだ」
金子勲「含光君が提案したのです。阿凌を祝う宴に魏無羨も招待しろと」
金光瑤「含光君の善意でしょうが、それはやはり妥当ではありません」
金子勲「私が思うに含光君にとっては願ってもない機会なのです。聞くところによると含光君は乱葬崗に行ったとか。いったい何をしに行ったんだろうな」
藍湛「旧友を尋ねた」
金子勲「魏無羨は人を虫けらのように殺す悪党だぞ。そんな男が旧友だと?」
藍湛「いつ虫けらのように人を殺した?」
金子勲「何?」
金子軒「もういい。父上。魏無羨は金氏の者を少なからず殺しました。ですが、含光君の言う通り、この1年は大人しい。江氏から追放されましたが、厭離もとても会いたがっています。ですからこれを機会に彼を連れ戻しましょう」
そうだ!金子軒。金光善に進言できるのは君しかいない。時既に遅しの感はあるけれど、ここで裏の謀略さえなければよい流れになっていたかもしれない。この先の展開は分かっているので、言っても詮無いことではありますが。
沢蕪君と金光瑤の「宴に魏無羨を招待して皆で彼を説得しましょう」との提案により、魏嬰を金凌の宴に招待することとなり、藍湛は招待状を魏嬰に書くことを任されます。金子軒からそのことを聞かされた厭離も歓喜し、赤ん坊の金凌に話しかけるのでした。かつてのツンツンぶりはもはや影も形もない金子軒。江厭離と金凌との一緒の姿がとても幸せそうで、返す返すも残念でなりません。
脱線しますが、なんだかツンデレキャラの出現率が高い気がするのですが、他の中華BLとか、中華ドラマもそうなんでしょうか。他をチェックする余裕がないのが実情なのですが、うん、嫌いじゃない。かなり好きだわツンデレさん(笑)
一方、金子勲は胸を押さえ、苦しんでいる様子。金光瑤は彼に「魏の若君に恨みでもあるのか」と聞いたところで第30話は終了です。
今回で、金光善に家臣として利用されるだけなのを、金光瑤自身も(金凌の件で)痛感したのではないかと思われます。金子勲については、名家出身の沢蕪君や藍湛に平気で無礼な振る舞いをするくらいなので、彼が下僕認定した者への態度がいかに酷いかは容易に想像できますよね。なんなら金光瑤にもかなりぞんざいな態度ですし。
以上の流れで皆が与り知らぬところで策略がめぐらされることになり、次回第31話「予期せぬ悲劇」へ続くことに。今回は忘羨ちょっと薄めでしたね。魏嬰の回想での「藍湛に殺されるなら悔いはない(脳内変換済み)」くらいかな(笑) ということで第30話の感想を終わります。