【魔道祖師・陳情令】周密著「BLと中国」感想・BLからブロマンスへ | 占いworld♡エンタメ部

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周密著「BLと中国」を読みました。日本の「耽美」から始まり中国BLへの変遷、中国の男性同性愛の歴史上の実態、現代中国での社会事情などについて解説されていて、実に興味深く、大変面白かったです。とくに「魔道祖師」と「陳情令」で深く関わる検閲事情を日本語で読むことができるのが本当に有難いなと感じました。

 

日本は歴史的に男色に寛容な文化だと思いますが、本書を読む限り、中国も日本ほどではなくても、近年までは概ね寛容な歴史だったようです。日本から伝わったBLムーブメントは中国で独自の発展を遂げますが、中国のお国事情によるBL作家の逮捕事件や検閲の経緯、検閲制度の中での文字や画像、映像コンテンツと音声コンテンツとの違い、表現方法をBLからブロマンスへどのように改変しているかの具体的な解説など、とても興味深く読ませて頂きました。

 

第5章の「日本読者から見る中国BLの魅力と不足」が小説「魔道祖師」のレビューからの考察なのですが、私にはとくに面白かったので少し詳しく書いてみたいと思います。


ここで筆者は要点を三つにまとめています。日中BLの相違点としてストーリー性とブロマンスの二つと、三つ目が共通点として文化的基盤です。

 

まず、相違点の一つ目であるストーリー性。大河ドラマ、群像劇のニュアンスが強く、BL恋愛要素を強く求めて読んだ場合には挫折する内容になるかもしれません。次に相違点二つ目のブロマンス。筆者は、小説「魔道祖師」は「セックスはオマケ程度」の描写しかないが、日本のBLは性的表現が多いと述べています。そして、ブロマンス作品のアニメ「魔道祖師」や「陳情令」を観てからの、小説「魔道祖師」の読者レビューより、ブロマンスになることでの感動を主張する読者と、BLであることの必要性を語る読者の両方がいるとの記述があります。

 

三つ目の共通点としての文化的基盤ですが、筆者は「文化的基盤から中国のBLを読むことを選ぶ日本の読者が少なくない」「中国の伝統文化や歴史的題材にした作品を好んで読んでいる」と記述しています。

 

以上の説明は、私が「魔道祖師」「陳情令」にハマった要素が全て書かれていると思いました。まず、ストーリーが優れていること。BLとして読者を限定してしまうのが惜しい深みのある世界観。次にブロマンス。日頃から「陳情令」を充分BLでしょ?と主張している私ですので、性的描写がなくても楽しめるし、感動します。でも、小説の性的表現もそれはそれで楽しめますし、感激もするのです。私は媒体が異なれば根底のテーマは同じでも、違う作品と思っているので、性的表現のありなしは気になりませんし、どちらも成立するという認識です。筆者によると、いわゆるBLとしては小説「魔道祖師」の性的表現はオマケ程度らしいので、露骨な表現はちょっとね、と思う私には(性的表現ありの)BLとしても中国BLの控え目な塩梅がちょうどいいのかもしれません。

 

最後に文化的基盤。私は歴史が好きです。そして日本文化は中国と非常に強くつながっています。日本や日本の歴史を理解しようとするなら、中国の歴史と文化を素通りすることなどできませんし、私は占いに携わっているので、古代中国の歴史や文化を知ることは必須項目とも言えます。


また「十二国記」や「薬屋のひとりごと」「キングダム」「烏は主を選ばない」が好きなことは「文化的基盤から中国のBLを読むことを選ぶ日本の読者が少なくない」「中国の伝統文化や歴史的題材にした作品を好んで読んでいる」につながるのだろうと思います。

 

「BLと中国」は中国BLを取り巻く検閲事情の理解を助ける良書だと思います。実は今、この本を読んだことで「千秋」という作品に興味津々です(笑) ということで、書籍「BLと中国」の感想を終わります。