ホーチミンを訪れてから
もう10年。
ベトナムの最初の一歩は
あえてハノイにはしなかった。

私の指向として
政治都市よりは経済都市へ、
という流れがあるのかも知れない。
たとえば、中国。
訪問回数は圧倒的に北京より上海。
台湾も最初に滞在した街は
台北ではなくて台南。
さて、ベトナム。
開高健の著作のおかげで
ベトナムのイメージはまずはサイゴン。
今のホーチミン。
となれば、やはり首都より経済都市。
ホーチミンの中でもチョロン。
いわく、ベトナム最大のチャイナタウン。
いわく、サイゴンの心臓。

サイゴンの初心者は
私を含めてその中心は
サイゴン川近く、
ペンタイン市場とかコンチネンタルホテル、
マジスティックホテルのあたりだと
思ってしまう。
しかし、サイゴン河畔から
路線バスに乗り30分。
朝の凄まじいバイクラッシュを
やり過ごした先にあるチョロンの活気は
生半可なものではなかった。

チョロンのバスターミナルの
その大きさもさることながら、
次々に入って来るバスと人の波と。
サイゴンのバイタリティー、
ベトナムのバイタリティーを体感した。

ターミナルからそぞろ歩きで
チョロンの市場を時間の許す限り
うろついてみたが
とにかく、
アジアナンバー1の喧騒とるつぼのなかに
たたき込まれたように思えて来た。
まさに『人パワー』全開である。

その帰り道、
ホテルに戻る路線バスの中、
その視線の先に
小柄な老人。
気になって仕方がない。
ベトナム人には見えない。
もちろん、東洋人にも。
ベトナム戦争以後も
サイゴンに居座ってしまった、
離れられなくなってしまった
そんなフランス人なのでは。
異国の旅先では
要らぬ妄想が
湧き上って来るものなのかもしれない。
2015 初夏 ホーチミン


