この区間ではトップランナーとのすれ違いで力を貰う。
「ナイスラン!!」
112キロのトップを行くのは連覇中のあの人。このコンディションでもキッチリ先頭を行くのはあっぱれとしか言いようが無い。
(速くて強い…)
ある意味理想の姿だ。俺は果たしてあんな凄い人に少しでも近づく事ができる日が来るのだろうか?
手を叩いてすれ違うランナーを応援するとともに己を鼓舞する。疲れているはずなのに、声を出せば不思議と力が湧いてくる。多分、声なんか出さずに手なんか叩かずに黙々と走れば消耗は抑えられるのかもしれないが、そんなつまらない事をするためにここに来たのではない。
下りで一気にまくると、精進湖周回に突入した…。
上がったテンションは下がるもの。精進湖周回では続々と後続に抜かれて行く。しかしここは短い距離だ。
(すぐに本栖湖へのすれ違いゾーンに再び入るはず)
そう思って前を見ると
『湖南ナンバー』の出身男と見覚えのあるハッタマンの中身汁の人が!
「焼肉ない?」
「焼肉もビールもないよ」
ここで知り合いに逢えると勇気100倍!
「いやあ、地下足袋いいでしょ!」
から始まり、どれだけ過酷なレースかを思わず説明。ガッチャがいいペースで進んでいること、このままだと結構制限時間厳しそうなことなどなど話して別れを告げる。いい気分転換になったデビルは再びすれ違いゾーンへ。
「ナイスラン!」
下がったテンションは再び上がるもの。本栖湖までの道のりを一気に駆け抜けるとほぼ70キロ地点のエイドまで予定よりも20分程遅れで到達した。
「ロスタイムはないぞ!」
カステラを一切れと水分を補給すると休む間もなく112キロだけが味わえる本栖湖周回へ突入していった…。休憩は無いに等しいのだ。
《続く》

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