デビルがかなり無理をしてあげたペースがガッチャごんにとっては軽いアップのペースなのだ。そんな事は判っている。デビルがどれだけ頑張ってもあの領域にはまだいけない…。
しかし、鋭利な刃物で切った傷は治りが早いのだ。ガッチャが通り過ぎた後に再び復活を遂げるデーモンがいるのは間違いない。デビルはそんな再生力を持った強力なデーモンの息の根を止めるために後方に退く…。
「宿の晩飯の時間までに帰らないと嫁にしばかれるから先にいくね~」
正義のヒーローも嫁には弱いらしい…。
山中湖に向かう途中からデビルは単独走行に。それでもキロ6分よりも早いペースを維持して進む。彩湖の経験からキロ6分で50キロまでは押していき、70キロまでは8時間以内、そのあとは失速しても時間内にゴールまでいく。
これがデビルのレースプランだ。
やがて、山中湖に到着。
天気もよく、富士山もよく見える。3年連続天候に恵まれたチャレンジ富士五湖。去年は小枝デーモンにご自慢のデビルウィングを破壊されたが、今年は細心の注意を払って進む。デビルスピーカーから流れるミュージックは『デーモン小暮』閣下が歌う『マイレボリューション』に変わっていた…。
17キロ近辺、早くも100キロの部のトップランナーにパスされる。
また、山中湖では『TBRC』の監督『BruceIkemizu』氏にもパスされる。流石に毎日朝ハーフを実行しているだけのことはある。肩が少しあがった特徴的なフォームで快調に走っていった…。
それでもデビルはここまでは割と順調に来ていた。デーモンが囁くまでは…。
「デビルマン、山中湖は富士五湖の中で最大の面積を持っているんだぞ。湖面の標高は富士五湖の中では最も高い位置にあって日本全体でも第3位だ。そんな山中湖を舐めていないか?」
次の瞬間、右膝裏に激痛が!!
スタートから約20キロ過ぎ、ここから右膝裏に未だに経験した事のない痛みがデビルが襲う。おかしい、こんな筈はない、こんなことはあり得ない…。
応援に来ていた『maika』姉さんにも弱音を吐く。ごめんね姉さん…。
ここから脚を引き摺りながらデビルは走る。それでもまだだましだまし走れるうちは良かった。山中湖を過ぎ第1関門のエイドに向かう途中で完全に走れない状態に。
リタイアか…
時間は朝の7時過ぎ。長く苦しいウルトラの闘いはまだ始まったばかりだった。
《続く》

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