渡夢太郎家の猫 -13ページ目

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

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ヘリコプターで三島N大附属病院に着いた
五郎と小妹を院長が待っていた。
「緑川先生、お久しぶりです。現役復帰ですか?」
「ええ。まあ、それより患者さんは?」
「はい、隔離室に入っています」
「ありがとうございます。すぐに対応していただいて」
「飛んでもありません」

五郎は隔離室のまで防護服に着替えて
担当の看護師に聞いた。
「バイタルは?」
「体温が39度。血圧80、心拍数60です」
「白血球がかなり・・・」
「採血しているんですね」
「はい」
五郎は緒方の血液を顕微鏡でみた。

「違う!これはあのウイルスの亜種だ!、それより原種に近い」
五郎は興奮していた。
「それでどうなんですか?」
同じく防護服をしていた小妹が五郎に聞いた。
「うん、出来たばかりで臨床実験をしていないがこのワクチンを使おう」
五郎はポケットからボトルを取り出した。

「大丈夫?」
小妹が五郎の耳元で囁いた。
「大丈夫だ。亮君のレシピ通りに作った」
「なら大丈夫だね・・・」
小妹はニコニコと笑った。
「小妹さん、亮君は私の誇りです」
緒方に注射を打った、子供のいない五郎は亮を我が子のように思っていた。
「うふふ」
小妹は亮を思う五郎のほころぶ顔を
見てうれしかった。

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亮は井の頭線渋谷駅の出口で美喜を待っていた。
「亮!」
美喜は久しぶりに2人きりで会った亮に抱き付いた。
「美喜さん、今からお買い物をしましょう」
「本当!」
「まず109で洋服を買ってファッションモデルの幸
田美喜になって欲しい」
「うふふ、そう言われるとゾクゾクしちゃう、キュロットが良い?
ショートパンツが良い?ミニが良い?」

「ミニ・・・」
「えっ?聞こえない!」
「ミニチュカート」
「はいはい、チュカートね」
美喜は笑いながら亮と腕を組んで109に入って行った。
「そう言えばじっちゃんは?」
「ええとスカウトに行ったわ」
「スカウト?」
「ええ、海猿を観ていて感動したらしく国際救助隊に必要だって」
「なるほど確かにサンダーバードみたいに5人じゃ無理だ。

それにあれは2026年の話だし、でもちゃんと考えているのかな?」
「亮はまだ行っていないからわからなようだけど、本気で作っているわよ」
「そう、知らなかったなあ。飯田さんも教えてくれなかった」
「秘密基地だったからじゃない?」
「秘密基地なら大工さんはどうなんだって昔からの話がある」
「あはは、本当ね」
現役を離れて3年以上経っても元モデルの美喜は
どこでも目立ち後ろから女性たちが羨望の眼差しで見ていた。
そして、脇にいる亮にも女性たちは目をやり
こっそりと写メを撮っている女性が居た。

「美喜さん、ここ中々良い物がありますね」
「そうでしょう、安くておしゃれでしょう」
「やはりスタジオのニューブランドは必要ですね」
「そう、コンセプトに合わせて最低でも5つ以上のブランドは必要ね。
その方が販売が伸びるわ。チャイルド、スポーツ、フェミニン、エッジー、
アメリカン、そして亮の好きなガーリーなティーン・カジュアル、
あれOL系も好きだったわね」
「勉強になります」
亮は黙って頭を下げた。
「はい、F電機の社長に野田さんに返り咲いてもらって
 O駅の工場跡地の計画を押し進めてもらいます」
「じゃあ、何が何でも野田さんに社長になってもらわないと
 亮がさっき話していたドライアイス
発電は実現しないわけね」
「そいう事です」
「そうか・・・」
キャシーは上を向いて何かを考えた。

「それから、甲山六助さんに黒崎
グループの中枢に戻ってもらいます」
「そうね、彼は立派な人だわ。私に協力できる事ない?」
「1つあります」
亮はキャシーの耳元で囁いた。

「團さん、お客様です」
亮が話をしてキャシーがうなずくと
一恵が案内して甲山六助と徳田康夫が部屋に入って来た。
「お久しぶりです」
亮は徳田に深々と頭を下げた。

「やあ亮君。噂は聴いているよ。
随分立派になったね」
「いいえ、飛んでもありません。こちらが
東京第一不動産と合併してできた
ランドエステートジャパンの会長。
キャサリン・ランドさんです」

「ハジメマシテ。キャシーと呼んでください」
亮が徳田を紹介するとキャシーは片言の日本語を話し
白く長い手を徳田に差し伸べた。
「新大阪不動産の徳田です。よろしくお願いします」
英語が苦手な徳田は緊張してキャシーに名刺を渡した。
「甲山さん、後は正一郎を今の席から引きずり落とし
F電機の大株主の関西ステート銀行のお力をお借りたいんです」
「もちろんです」
六助は力強く答えた。

「一恵さん、今日はみなさんに
同行して通訳をお願いします」
一恵は秘書らしく甲山と徳田に
向かってゆっくりとお辞儀をした。
「新村一恵と申します。よろしくお願いします」
「ああ、一恵ちゃんね。こちらこそよろしく」
徳田は美人の一恵を見て親しく挨拶をした。
そこへ亮のスマートフォンに送られて来た写真を
見た亮はニヤニヤと笑った。

それは新幹線のホームで田代悦子に紙袋を
渡す正一郎の写真と会議が行われる
ルーセントホテルの写真だった。
「黒崎正一郎さんが岡村幹事長と昼食を取っています」
亮は六助と徳田に写真を見せた。

「まったく、こんな人と会って
いったい何のメリットが・・・」
六助は経営者が政治家や総会屋と付き合う事を嫌がっていた。
「僕も同感です。会社経営を政治家に
頼っていけないと思っています。
 知識が乏しく資質に問題があり黒い噂のある
 政治家とは避けるべきです」
亮は二度も毒ガステロの現場に姿を現し、
命を狙われいる様子の岡村に
胡散臭さを感じていた。

「この岡村幹事長は先代が亡くなってから
 正一郎と親しく付き合っています。かなりの献金を
 していますがその見返りもあるんでしょう」
「政治家との癒着は許せません。真面目に研究開発している
小さな企業の新技術のは政治家を通さないために、
なかなか採用されません。何のための入札制度があるんでしょう」
亮はそう言いながら中小企業の営業サポートシステムを考えていた。

「ところでこの写真誰が送って来たんですか?
 ホテルのレストランじゃないですか?」
六助は首を傾げていた。
「あはは、頼れる仲間がいるんですよ」
亮が言うと一恵が写真を撮ったのが
玲奈だと知ってクスッと笑った。

亮は美喜に電話を掛けた。
「美喜さん、高井戸に居ますよね」
「はい、先生は小妹を連れて行きました。
 どうしてわかったんですか?」
「彼はかなりの愛妻家で怪しげに見える行動を取りませんから」
「うふふ。良かった。私嫌われているかと思った」
「それで渋谷に来てくれますか?」
「はい?」
亮は美喜を渋谷まで呼び出した。

「甲山さん、徳田さん。僕は仕上げに行ってきます」
「また後でお会いしましょう」
甲山達は期待を持って亮を見送った。
亮は仁木と三雲と小妹と美喜がどうしているか
心配だった。
「体が鈍ると言ってこちらの格納庫で訓練しています」
「小妹かマギーか美喜さんをボディガードに連れて行ってください」
「分かりました」
五郎の声は心なしか上ずっていた。

亮が電話を切ると来島幸子が呼びに来た。
「團さん、ピーエヌエーの取締役会で
 アメリカンウエブの買収が承認されました」
「了解です。それでいつ打ち合わせを?」
「私たちが今からピーエヌエーに出向いて交渉します」
「お願いします」
亮は自分が勉強を教えた幸子が渉外弁護士として
仕事を成功させた事がうれしくて親指を立てて合図した。

部屋に戻ると美咲とキャシーと2人と刑事が笑っていた。
「あれ、どうしたんですか?」
「キャシーが日本語を話していたの?」
美咲が笑って答えた。
「どんな?」
「ナイショ」
キャシーが人差指を口に当てて笑った。

「團さん、原警視から詳しい話を聞きました。
 現場に居た2人の素性も分かりましたので、
 姿を消した小針茂蔵を手配する事になりました、
それから宇佐美で捕えられた2人の聴取の結果は
後ほど連絡をいただくことで・・・」
「そうですか、それで良かった」
亮は仁木と三雲が手配されずホッとしていた。

芹沢、阿見刑事が帰った後、亮が美咲に聞いた。
「美咲さん、2人に何を話したんですか?
急におとなしくなったけど」
「あなたがハイジャック事件を解決した
有名な秘密捜査官Rだと言っただけよ」
「ん?それは僕の事?」
「ええ、警察組織の中ではヒーローよ」
「知らなかった・・・」
亮はハイジャック事件を解決したのが
秘密捜査官Rと呼ばれていたと初めて知った。

「それは本人だからよ。あの事件の後に
 世界中をヒーローは誰かと言う情報が飛び交って
 すごかったんだから」
キャシーは嬉しそうに体を揺らした。
「ああ、そうか。確かにその頃は別の世界に居た」
「じゃあ私、警察庁の方に戻るわ」
美咲が席を立つと亮が神妙な面持ちて美咲に言った。
「美咲さん、僕捜査官を辞めようと思っています」
「えっ!どうしたの急に」
美咲は驚きのあまり血の気が引いていた。

「話せば長いけどそろそろビジネスに打ち込もうと思っています」
「ええ、それはわかるけど・・・」
「今急にではなく、茂蔵の事件が解決するまでと言う事で」
亮は美咲に嘘をついた。
「たぶん、父は慰留すると思うけど亮の言っている
 意味は分かるわ。
 こんなに仕事が忙しいんだもの」
美咲は亮の立場を理解して答えた。

「約束通り警備会社を作ってOBの受け入れはします。
 その警備会社株をお母様の名義で5000株をお渡しますので
 お父上の警視総監に成る為の資金にお使いください。
 変なお金は仕事柄まずいでしょう」
「あ、ありがとう・・・」
亮が簡単に言ったが美咲は5000株が
どれくらいになるか想像がつかなかった。

「亮、どうすればいいの?」
「資金が必要になったら買い取ります。
 上場まで待っても良いですけどね」
「とにかく、私たち亮の力が必要なのもう少し考えて」
「はい」
亮は仕方なしに美咲に微笑んだ。

美咲が帰るとキャシーが亮の手を握った。
「亮、東京第一不動産とランド不動産合併、
 ピーエヌエーの買収が終わったら
 次は何?」