インフレ時代にダイヤモンドの輝きを楽しむ

今以上に、男は男らしく、女は女らしいことが求められた時代。

例えば1910〜1920年代。

グレート・ギャツビーやDownton Abbeyの時代

女性のファッションからコルセットを開放したモードが流行し、少しずつ、女性がおしゃれをのびのびと楽しめるようになった時代です。

グレート・ギャツビーより

ただ、宝石、特に真珠のお値段は、養殖真珠が出回る前で、１本のネックレスが豪邸が建てられるほど高かった時代でした。

しかも今のように粒が揃っているものは少なく、ほとんどがバロック真珠でした。

その名残でココシャネルのパールはややバロックなのでしょう。

そのため、それを身につけるには、当時アメリカに許されていた女相続人でもない限りは、大金持ちの男性に買ってもらうしか術はありませんでした。

女性が一人立ちして簡単にビジネスができる時代ではありませんでしたから。

男は男らしく、女は女らしくという枠を外れるととても生きにくい時代だったはずです。

また、当時、優雅と贅沢は一握りの階級に属する人たちだけに許されていたものでした。

とりわけ、

現代ではアンティーク以外にはあまり見かけなくなったルビーやエメラルドの美しさを最大限に引き出す宝飾品が、イヤリングや首飾り、ブレスレットだけではなく髪飾りまで丹誠こめて作られた時代。

全てが庶民では絶対に手が出ないお値段で売られていました。

そんな中で淑女を魅了したのはダイヤモンドの輝きでした。

その永遠に変わらない輝きを生かす当時のモダンなデザインは、現代のわたしたちをも魅了してやみません。

１００年以上が経過しても、ダイヤモンドの輝きは廃れることがありません。

けれど、もしわたしたちがその時代に生まれていたとしても・・・
たった一握りの階級に属するチャンスがなかったとしたら・・・

ダイヤモンドや真珠、宝石類には一生ご縁がなかったことでしょう。

その不公平に革命を起こしたのが養殖真珠であり、キュービックジルコニアやラボでつくられる人造ダイヤモンドでした。

ダイヤモンドとほぼ同じ屈折率を誇り、硬度もサファイヤやルビーに次いで高い特性をもちながら、とても廉価に製造できるため、限りなく本物に近い「模造ダイヤモンド」として登場したのです。

おかげで現代のわたしたちは、かつて大金持ちの淑女たちだけに許されたものに限りなく近い輝きを日常に楽しめるようになりました。

わたしの友人たちの中には、代々譲り受けた宝石をお持ちの方も何人もいらっしゃるのですが、彼女たちは、現代のCZダイヤモンドで遊んだり、本物とミックスすることを恐れません。

それぐらい質に差がなくなってきています。

一方、ここ２、３年でダイヤモンドの値段がとんでもなく上がっています。

簡単には手が出なくなっています。

いつ買えるかわからないけれどずっと待つか

それとも、

今とりあえずアレルギーフリーの精巧な「なんちゃって」を楽しむか。

小さいため、もしかしたら、失くしてしまうかもしれないのがアクセサリーの宿命です。

だからこそトラベルジュエリーというコンセプトが定着したのかもしれませんね。
わたしも旅行先で盗難に遭って以来、旅行には、指輪以外はトラベルジュエリーしか持参しません。

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