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#Lincoln Blvdの記憶

チェックインが遅かったその日は、夕食を簡単に済ませる事にした。


同じブロックにテイカウェイがあったのを思い出したからそこにしたんだ。
フラリと入るとエントランスと不釣り合いに広すぎる店内で、青年がモップがけをしていた。


深夜0時も近かったがレジ前には何組か並んでいた。

その中に日本人もいたが、空港も近いこのエリアでは珍しい事じゃなかったので僕はボンヤリとメニューを見上げお腹と相談していた。


すると「ドッドガーズ、ドッドガーズ」と話してるのが耳に入ってきた。


なんの事かと思ったらどうやらDodgers(ドジャース)が読めずに「ドッドガーズ」と 言っているようだった。

恐らくドジャースとドッドガーズが一致していないのだろう。


するとカウンターの女性が問題の二人に向かって「Ok, next!」と叫んだ。



さて、長くなりそうだ。



LAPDのスクワッドカーがサイレンを鳴らして通りを走り過ぎた。

一瞬僕の顔が青く照らされたのがわかった。


#Lincoln Blvdの記憶

#ウェインの記憶


日曜日の朝一で寮に届け物を頼まれ、眠たい目をこすりながら地元のカレッジに向かった。


今日はフェイクコップがいる日だ。
僕達は警備員をそう呼んでいた。


カレッジに着くと入り口の詰め所からフェイクコップが出てきた。
大したチェックもせずめんどくさそうにゲートを開ける。


曜日によってゲートは解放されているからいったい何の為のチェックなのか疑問だ。

寮の前につくとクラクションを鳴らし、テキストメッセージを送る。
返事がないので、ラジオで流すからと頼まれたていたCDをポストに投げ込むと『dickhead』とだけテキストを送信し、帰路についた。


中途半端な時間だし、このまま帰るのももったいないのでダウンタウンのスケートショップに寄り道をした。


日本と違い、日曜の街は閑散としている。 
お店の営業時間も短く、早い所はお昼過ぎで閉めたりする。 

日曜は家族とゆっくりと過ごすようだ。


だいぶ前からダッシュボードに転がっていたシリアルバーをかじりながら店に近付くとシンナーのような臭いがした。


店の中を覗きこむと何やらしゃがみこんで作業をしてるようだ。


やぁウェイン、おはよう。なにやってるんだい?


するとダースベーダーのようなマスクを付けたウェインが振り向いた。

ヘイワッツアップ、ルイ。 今業務用のワックスをフロアにかけているんだ。前みたいにシャイニーになるよ。


店の奥を見ると、大きな扇風機が床に向けられていた。 日本では考えられない日曜の営業時間中にワックスがけ。


大変そうだね、何か手伝おうか?と言うと トキシックだから俺一人でやるよ、このマスクを付けてないとハイになっちゃうぜ と目玉をきょろきょろさせながら立ち上がった。

毎週末なってるじゃないかと僕は肩をすくめてみせた。
コーヒーを買ってきたから休憩しようよウェイン と湿気ったシリアルバーをくわえたまま紙袋を指さした。


店の入口に寄りかかりながら そのマスク超クールだね、見せてよ と言うと 今朝ハードウェアストアで買ってきたんだ、これを付けてれば完璧さ と言いながらマスクを外して渡してくれた。

マスクを口の辺りに持っていき ルーク、私がお前の父親だ とスターウォーズのセリフを言いながら紙袋ごとコーヒーを彼に渡した。


ハハハと笑いながら何気なく目に止まったマスクの注意書きを見た。するとどうやらそのマスクはホコリやチリ等専用の物で、有毒な気体は防げないとガイコツのマークの下に書いてあった。


ヘイ、ウェインこれ見てみろよ と注意書きの部分を指差した。

それを見るなり オーシット!今までアレを胸いっぱい吸ってたんだ、なんか具合が悪くなってきたよ。 外へ出よう。 とフラフラ歩き出した。


僕はエイミーにちょっとウェインを休ませてくるよと笑いながら言うと店を出た。
エイミーもやれやれと言った表情で二階から下りてきた。


ワックスは途中までだ。
テキストメッセージの受信を知らせる音がポケットの中から聞こえた。

#ウェインの記憶

【Undeniable Fact 】


なんの世界にも「プロ」というものが存在する。


一概には言えないが日本にはそのプロに対する取りきめやルールが多い。

ある一定のレベルを維持するのには役立っているのかも知れないが、その枠に収まっていないと業界や団体から公認してもらえず、活動しづらくなるという本末転倒な事になったりもする。


一方欧米諸国では「俺は今日からプロだ」と言った日から貴方はプロになれる事が多い。


あとは周りが決めるのだ。

スケートボードやスノーボード業界にはプロモデルがリリースされている等のボンヤリとした線はあるが、ようは「ソレ」でお金を稼いでいるか、飯を食っていけるか行けないかが判断の大きな基準となっている。

いくら自分で「プロだ」と言っても周りが認めなければ鼻で笑われるだけである。


プロモデルのリリースの無いトップアマだってプロ達と変わらないリスペクトをキッズから受けているし、プロよりスタイリッシュなアマチュア達もゴロゴロいる。


あとは『人柄』も大切なエレメントだと著者は考えている。

職業上、国内外のトッププロ達と接する機会があるが、彼等は一様に魅力的でコミュニケーション能力に長けている人達が多い。

これは自分がしてきた事や、経験に裏打ちされた自信が人としての余裕を作り出している部分が
大きいのだと思う。


話を戻すが、日本は『全員80点気質』が強く、残念ながらズバ抜けた天才が生まれにくいシステムが出来上がってしまっているのである。

破天荒な天才がいても無理矢理、規則やノルマと言った枠に押し込め、手枷足枷をつけた未完の大器を生み出しているのだから規格外のスーパースターは出て来れないのだ。



短所をカバーし平均化を図る日本式も悪いとは言わない。しかし、長所を徹底的に伸ばしてあげられるオプションも用意してあげるべきではなかろうか?

今後様々な局面で欧米諸国からだけでなくアジア各国から遅れを取る事になるのは、明白である。


著:ルイテック

#コンゴバーガーの記憶


いつのまにか広いスタジオには僕一人になっていた。
冷めたカフェオレをゴクリと飲んで伸びをすると集中の糸が切れるのがわかった。


あとはポートフォリオを仕上げるだけだったから、息抜きにちょっとダウンタウンまで車を走らそうと思いつつ、やたらと深いシンクで手を洗う。

時間は2時過ぎ位だったと思う。小腹が空いたからサテ―チキンライスでもテイクアウトしようとパーキングに止めた。


その時フト、最近オープンしたばかりのコンゴバーガーという名前のバーガーショップで友達が働いている事を思い出し、結局バーガーにしたんだ。



平日の2時過ぎという事もあり店内は閑散としていた。


やぁフィオナ。その変な帽子が最高に似合ってるよ。調子はどう?
彼女はテキストメッセージをしていたのだろう、少し驚いて携帯を置くと顔を上げた。


あら、どこのゆでたまご野郎かと思ったらルイじゃない。アサイメントは終わったの?もう助けてあげないわよ。


そう、彼女にはレポートやプロジェクトの度に色々と助けてもらっている。
それは困るとおどけて見せると、いつものように今度ビールをおごるからとか適当なエクスキューズを付けて、店の名前が付いたコンゴバーガーとチーズバーガーを頼んだ。


フライズとソーダは?の問いに今からトニーの所に行くから別で買うよと答える。


カウンターから見える調理場の鉄板からジューと言う音と共に、ビーフパテの焼けるいい匂いが店内に立ちこめた。



僕はスツールに寄りかかりながら店の外に目をやった。 子供が泣いていた。


カウンター越しに週末のパーティーの事や、先生の悪口を話しているとお待たせと言いながら大きな紙袋を渡してきた。


明らかにオーダーより多い。


それを言いかけると彼女はウィンクしながら見えないように奥の部屋を指さした。
どうやら奥にはオーナーがいるようだ。


僕はOKと小さく答えると黙って紙袋を受け取り、そのまま店を出た。
風が少し冷たくなっていた。


振り返ってウィンドウを覗くと、彼女はまだこちらを見ていたので手でピストルを打つ仕草をしてみた。

すると彼女は笑いながら中指を立ててきた。



子供はまだ泣いていた。


とりあえずまたビールをおごる事になった事は確かだった。




#コンゴバーガーの記憶

#サンディエゴの記憶


その日は移動と日程の都合上、一日ポッカリと空いたんだ。
午前中はホテルの部屋で少しゆっくりしていた。


するとルームクリーナーの陽気なおばちゃんがノックしながら入ってきた。


僕が部屋にいる事を確認すると、あらごめんなさい!と言って部屋を出て行こうとしたから、今出るところだからかまわないよ、ミセス。と伝え、僕はシャツを着た。


あらそう?と一応は言ったものの、彼女はすでに清掃用のカートを部屋に半分入れ、ドアを止めていた。


やれやれ、ずいぶんせっかちだなと思いながらも準備をしていると
ミスターは日本人ね?と聞いてきた。


僕は財布とパスポートをポケットにしまいながら ああそうだよ、わかるかい?と答えた。


彼女は得意げにうなずきなら、日本人は諸外国人に比べ、いかに礼儀正しく親切かを手短に話してくれた。

最後に 部屋も綺麗に使ってくれるのよ とウィンクしながら付け加えた。


僕は じゃ今夜は他のホテルに泊まった方がよさそうだね と笑いながら答えた。


部屋を出る時に$5のチップを彼女に渡すとニッコリしながら 良い一日をミスター と言いながらそそくさとポケットにしまった。


あなたもね、ミセス。と言って廊下をエレベーターに向かって歩きだすと、ホテルの一階のカフェのサンドイッチはパサパサで具も少ないから食べちゃだめよ!と忠告してくれた。同じブロックの角にあるデリのシュリンプサンドを食べなさいと付け加えた。


エレベーターのドアが閉まりかけた時にいかにもアメリカ製らしい、業務用掃除機の轟音が部屋から鳴りだした。 僕は そうしてみるよ と言ったが彼女の耳には届いてなかっただろう。


サンディエゴの小さなホテルでこのおばちゃんに接してきた、決して多くはないと思われる日本人の方達が少しずつビルドアップしてきた良いイメージを崩してはいけないなと漠然と思いながら、おいしいサンドイッチ屋さんを目指して歩き出した。


これが民間レベルの交友なのだろうと思った。



#サンディエゴの記憶