<前編> 第60回 全国大学ラグビーフットボール選手権大会決勝 帝京大学vs明治大学 | ラグカフェ編集部の取材メモ

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1月13日(土)、国立競技場で「第60回 全国大学ラグビーフットボール選手権大会決勝」が行われた。

60回目の大会を制すのは、対抗戦全勝優勝で選手権3連覇を狙う帝京大学か、それとも、創部100周年の節目に5大会ぶりの日本一を目指す明治大学か。

 

 

元日に発生した能登地震で犠牲となった方へ哀悼を捧げるための黙祷が行われたあと、両校の校歌斉唱。明治ボールのキックオフで試合が開始した。

 

撮影:国分智

 

キックオフボールがダイレクトタッチとなり、帝京ボールのセンタースクラムで再開。帝京の規律のよさがパスにつながり、開始2分で11番高本とむがトライ。コンバージョンも決まり、早々に帝京が7ー0とする。

一方の明治は、勢いを感じるもののややまとまりを欠き、立ち上がりはスコアもさることながら帝京が一歩リードしている印象だった。

 

 

キックオフは15時10分。気象予報ではこの日、気温が低下することが予想されていたが、13時30分の開場時間のころは青空が広がり、15時ころのメンバー紹介まではさほど寒さを感じなかった。

が、それも束の間。校歌斉唱のあたりから急に空気が冷たくなり、北から濃い灰色の雲が。前半15分ころに、都心の空から雪が降りはじめた。20分過ぎると、雷鳴が聞こえはじめ、前半22分ころに近隣で落雷が確認されたことから試合は中断する。帝京にハイタックルの反則があり、帝京陣内での明治チャンスのシーンだった。

 

その後、複数回落雷が確認され、最終的に約1時間の中断となる。この中断がその後のプレーにどう影響するか、60回を数える選手権決勝での初めての事態に誰もが注目したことだろう。

とはいえ、雪が止む気配はなくすっかり日も暮れ、あの極寒のなか席を立つことなく試合再開を待ち続けた観客の皆さんの熱意には心から拍手を送りたい。

 

 

16時40分、落雷の危険が回避されたことから、明治ボールのラインアウトでようやく試合再開。

しかしそのチャンスは生かされることなく、逆に明治のペナルティから帝京がトライ。ここでTMOが入り、トライ前にノックオンが確認されたことからノートライに。ただし、その前に明治のオフサイドがあり、再び帝京のチャンス。ラインアウトからきれいにモールが組まれ、2番キャプテン江良颯が抜け出しトライ。判定に気持ちが引きずられることなくすぐに得点するしぶとさは、勝負の場において何より大事だ。

明治は、前半34分に13番秋濱悠太、38分に11番海老澤琥珀がトライを決め、帝京14ー明治12で前半終了。

 

撮影:国分智

 

後半開始後も雪は降り続き、前半同様に両チームともノックオンが続く。

試合開始43分と47分に明治ペナルティから帝京はショットを選択。試合後、江良キャプテンはキッカーの15番山口泰輝について「敵陣であればどこからでも入れられる」と信頼を寄せていたが、いずれもしっかりと決め、得点を重ねる。

58分に13番戒田慶都のトライ、さらに76分に江良キャプテンが再びトライ、コンバージョンも決まる。

 

撮影:国分智

 

明治は、前半にトライを決めた1年海老澤が50-22を決めるなど随所にチャンスはあったが、活かしきれないまま、後半はペナルティゴールの3点を返すのみだった。

最終スコアは34ー15で、帝京が雪の明帝戦を制し3連覇、12回目の優勝を果たした。

 

撮影:国分智

 

 

試合後の記者会見。

明治大学からは、神鳥裕之監督と廣瀬雄也キャプテンが出席。

 

神鳥監督「まず最後まで試合ができたことに感謝したい。帝京大学はやはり強かった。なんとか超えたかったが、超えられなかった。選手たちに、なんとか勝たせてやりたかった。申し訳ない気持ちでいっぱい。準決勝で廣瀬キャプテンが帰ってきて、いい形で決勝を迎えられた。その一戦一戦、いまのこのチームが持つ力は十分発揮できたと思う。創部100周年という大きなプレッシャーのなか、廣瀬キャプテンを中心に戦ってきた選手たちを誇りに思うとともに、4年生の次のチャレンジを心から応援したいし、3年生以下の選手たちはまた成長してくれると信じている。しっかりリベンジできる強いチームをつくっていきたい」

 

廣瀬キャプテン「決勝という素晴らしい舞台、最後まで明治でラグビーができたことはすごく幸せ。帝京大学には敵わなかったが、創部100周年という節目の年にいまのメンバーに出会えたことを嬉しく思うし、4年間に悔いはない。後輩たちには、この悔しさをバネにこの先また100年と続くようがんばってほしい」

 

PGを狙わなかったシーンについて質問が及ぶと「嶺二郎(4番山本)を中心にFWの自信を信じた。後半にショットを選択したのは、明治のプライドやこだわり、時間帯との兼ね合い。最後まで焦ることなくプライドを持ってやろうと」と廣瀬キャプテン。「圧倒できる力関係ではないと思っていたが、スクラムに関しては、この試合を通してしっかりやりきったと思っている」と神鳥監督も振り返った。

 

試合後、整列した廣瀬キャプテンが涙を見せたことについては、「スタンドを見たときにこの4年間、ファンの皆さんはもっと長く明治を変わらず応援してくれて、100周年の節目に優勝できなかった悔しさや申し訳なさがこみあげた。そのなかで、部員たちが自分の名前をコールしてくれて、本当にこのチームでラグビーをやれてすごくよかったと思った」と話した。

 

撮影:国分智

 

 

帝京大学からは、相馬朋和監督と江良颯キャプテンが出席。

 

相馬監督「いつもとは違うプレッシャーを受けた学生たちが、ただやってきたことを信じて1秒1秒積み重ねていくその姿を、誇らしく楽しく嬉しく、試合を見た。江良キャプテンが率いた素晴らしいチームだなと。ピンチになればなるほど楽しそうにプレーするし、まわりの選手が疲れれば疲れるほど生き生きするし、頼もしい選手たち。結果として優勝できて、何より嬉しい」

 

江良キャプテン「1年間このジャージを着てきたメンバーが、80分間、常に仲間のために身体を張り続け、走り続けた試合だった。“ワンハート”を掲げてやってきたが、今日の仲間の姿を見て積み上げてきたものに間違いはなかったと思った。その成果が全て出せた試合だったし、いままで感じたことのないような嬉しさ、幸せを感じた」

 

両チームともハンドリングミスが続いたことについて、天候以外で思いあたる理由を尋ねられ「ぼくは、メンバーの表情や行動を見ていつもと比べるが、緊張があったのではないかと。前日練習だけでなくこの一週間、いつもどおりやればいいことができないことが多かった。ぼく自身もあんまり緊張するタイプではないけど、昨日の夜からあまり眠れなかった。みんな普段に比べて、緊張が大きかったのだと思う」

 

大半がコロナ禍だった大学4年間については「ラグビーができることは当たり前のことではないのだと思い知らされて、ラグビーと向き合える時間、1日1日を大切にしなくてはという意識がラグビー部の中でも芽生えたと思う。でも、感染対策もありグループにわかれて練習をせざるを得ない時期も続いたので、今年は、より仲間意識を高めるために “ワンハート”を掲げ、帝京大学の強みにしたいと思った」と振り返った。

 

撮影:国分智

 

後編に続く

 

(夏)