別れの船出: 残酷なロマンス(持参金のない娘)(3) | 映画でロシアとロシア語

映画でロシアとロシア語

ソ連・ロシアの映画を選んで、詳しく説明します。
言葉を学び、ロシアを実感しましょう。

別れの船出: 残酷なロマンス(持参金のない娘)(3)

Жестокий романс3

Эпизод 1: На пристани.

エピソード1: 桟橋で

 

 

 

Лариса: Я сейас за Волгу смотрела. Так хорошо на той стороне.

 

Карандышев: Лариса Дмитриевна, разрешите пригласить вас завтра вечером в театр. Даётся пьеса «Дама с камелиями». 

 

Лариса: Благодарю вас, Юлий Капитонович, но нас с маменькой уже пригласили.

 

Карандышев: Кто, позвольте вас спросить?

Лариса: Господин Паратов.

Карандышев: Паратов? И вы пойдёте?

Лариса: Непременно пойдём.

 

ラリーサ:今、ヴォルガの向こうを見ていたの。あちら側は素晴らしいわ。

カランドィシェフ:ラリーサ ドミトリエヴナ、明日の夜に劇場にあなたを劇場に

ご招待させてください。「椿姫」が上演されます。

ラリーサ:ありがとうございます、ユーリ カピタノヴィチ、でも私たちは

もう招待されていますの。

カランドィシェフ:誰が、失礼ですがお聞きしてもいいですが?

ラリーサ: パラートフ氏です。

カランドィシェフ:パラートフ?それで行かれるのですか?

ラリーサ:必ず行きます。

 

最初の「向こう岸を見ている」というセリフ、ロシアの川は幅が広い印象があるのですが、

ヴォルガの上流地域例えばヤラスラブリでは川幅が500~600㎞。

下流に向かうヴォルガ川とカマ川の合流地点で川幅が最大になり、

40㎞だそうです。

 

Так хорошо на той стороне.の言葉は、

「青い鳥」を求めるラリーサの気持ちを現わしているのかもしれません。

 

「Там хорошо, где нас нет. 隣の芝生は青く見える」

諺は、「私たちがいないところは良いところ、でもそこに私たちが行ったら、

もう良いところではない」と、意味深です。

 

Маменька    мама の愛称で古い形、

今はмамочка, мамуля, が一般的、

他にмамаша, мамусяも。

 

ラリーサが好きなカランドィシェフはあくまでも丁寧な言葉で

「позвольте вас спросить」と。

パラートフの名前には鋭く反応。

最初のシーンで三角関係を示唆しています。

 

芝居が「椿姫」というのも、暗示的。

 

 

 

Ольга: Маменька, родненькая... куда же вы меня спровадили?

 

Огудалова: Всё будет хорошо... Всё будет хорошо... человек он знатный, я документы смотрела. В тебе души не чает. А что инородец, так что говорить... Ты же знаешь, среди своих не нашлось никого, кто бы взял без денег.

 

オリガ:お母ちゃま、わたしを何処にやってしまうの?

オグダロワ:全て上手くいくよ、全て上手くいく・・・、彼は名門の人、書類を見たよ。

お前に夢中なんだ。異民族と言っても・・・。お前分かるだろ、ロシア人の中には

金のない者を貰おうなんてのは、いないんだよ。

 

Маменька お母さま、で良いのでしょうが、愛称形のニュアンスを入れたくて、

「おかあちゃま」としてみました。

 

オグダロワの娘3人のうち、長女は既に嫁いでいて次女の結婚式。

 

не чаять души в ком  ~に夢中になる

 

相手はグルジア人、書類も確かめて身元は確実なよう。

инородец 異民族(今は使われない)

 

 ино + род+ ец = 前綴り「異なった・別の」+「一族」+人の意味の接尾辞

19世紀半ばにはグルジア(現ジョージア)は既にロシア帝国に併合されていましたが、

「民族が違う」と。

 

同じ前綴りの単語は、

иностранец, иностранный (外国人、外国の);

инопланетник, инопланетный (宇宙人、他の惑星の)

 

Ты же знаешь, среди своих не нашлось никого, 

кто бы взял без денег.

異民族に対して、ロシア人を「свои」自分たちの人と。

 

「持参金なしでは貰い手がない」とは身もふたもない言い方ですが、

当時の貴族社会の一面なのでしょう。

 

同じテーマの絵画「不釣り合いな結婚(неравный брак)、

プーキレフ(Пукирев)の作品がトレチャコフ美術館に展示されています。

 

 

 

 

Паратов: Каюсь, каюсь, каюсь! Добрый день! Здравствуйте, господа! Тётенька, каюсь! Виноват, опоздал, примите извинения и поздравления. Ольга Дмитриевна, будьте счастливы!

 

パラートフ:すまない、すまない!こんにちは!こんにちは皆さん!おばさん、すみません!遅れて申し訳ない、お詫びとお祝いを受け取ってくれ。オリガ ドミトリエヴナ、幸せに!

 

 

遅れて登場のパラートフ。

 

Тётенькаおばちゃん、と話しかけています。

映画でははっきりしないのですが、原作ではパラートフとオグダロワは

またいとこ、трою́родный брат/ трою́родная сестро

とあります。

いとこ:двоюродный брат/ двоюродная сестра.

 

 

 

Вожеватов: Сергей Сергеевич, ваша «Ласточка» причаливает. Хороша! Сергей Сергеевич, может, продадите «Ласточку»?

 

Паратов: Никогда. Моя «Ласточка» шибче всех по Волге бегает.

 

Кнуровв: А вам зачем, Василий Данилович? Вы ведь грузы перевозите.

 

Вожеватов: Да вот хочу к грузовому пароходству пассажирское присовокупить. А чего? Растем, богатеем...

 

ヴァジヴァートフ:セルゲイ セルゲヴィチ、あなたの「ツバメ」が停泊している。

素晴らしい!セルゲイ セルゲヴィチ売ってはくれないかい「ツバメ」を。

パラートフ:決して売らないよ。俺の「ツバメ」はボルガを最も早く走るんだ。

クヌーロフ:ヴァシリ ダニロヴィッチ、なぜ?あなたは荷物を運搬しているでしょう。

ヴォジェヴァートフ:そう、貨物船会社に客船を加えたいんだ。悪いことではないさ。

成長して、豊かになる・・・。

 

«Ласточка» パラートフの持ち船の名前

 

шибче、 шибкий(速い、今はあまり使われない)の比較級

 

пароходство 汽船会社

присовокупить + что к чему ~を~に付け加える

 

別れもそこそこに、さっそくビジネスの話を始める3人。

ヴァジヴァートフとクヌーロフは当時の流行の最先端を行くビジネスマンの服装。

パラートフは、ロシア風な趣味が強く、馬を乗り回す足元はブーツ。

 

 

 

Огудалова: Вперёд, я сказала, Езжай! Заехал... 

Паратов: Да, не надо ничего этого. Вот и всё! Прошу вас, Лариса Дмитриевна!

Лариса: Спасибо, Сергей Сергеевич!

Огудалова: Шею-то не сломай. Не про тебя жених! Ишь, разлакомилась!

 

オグダロワ:前に、回って、と言っているの。近づいて・・・

パラートフ:そんなことは何も必要ないよ。ほら、こうだ!失礼、ラリーサ ドミトリエヴナ!

ラリーサ:ありがとう、セルゲイ セルゲヴィチ!

オグダロワ:振り返らないの。お前の婚約者にはならないよ!甘い夢を見るのはおよし!

 

水たまりを避けて、馬車を移動させるパラートフ

Шею-то не сломай.

ломать(不)-сломать  の意味は「折る」ですが、ここでは「首を曲げる」。

 

Не про тебя жених!

 家柄や財産など、身分違いという事を娘に諭している。

 

Ишь, разлакомилась!

 

馴染みのない単語が出て来た時、「知っている単語を当てはめて推測する」ことがありますね。

ただ、それが的外れなことも多いので、後で辞書に当たってみるのも必要。

というのも、

「婚約者」の話しの続きでИшьを иши(искатьの命令形 )と、最初に読み違えて、

先生の註解で自分の勘違いに気づきました。

 

Ишь(俗語)そら、おやおや、あれ(非難、驚き、疑惑をあらわす)

разлакомиться 強い欲望を起こす、食欲を起こす

лакомство   ごちそう、美味しい物

лакомиться чем  舌鼓を打つ。

 

 

このシーン、原作ではパラートフがマントを投げかけているのですが、

俳優の絶頂期にあったミハルコフがスタントマンも使わず、

力技を披露する形に・・・。

 

結婚事情や会社経営など、150年近く前に書かれたとは思えない内容です。

変わらないのですね。

 

 

追伸:

 なぜかしら所用が重なって3週間近くもブログの更新ができませんでした。

久しぶりの知人の通訳などで、用事は多くとも気の滅入る出来事などは

何もなかったのですが、天候に振り回されました。

気温が上がって雪が解けたとたん、また大雪や冷え込み、強風。

道がグシャグシャ・デコボコ、その後はツルツル、少し歩くだけでも疲れ、

1時間もPCに集中できなくて・・・。

 

 そんな日々の中で、「ロシア語タンゴ-ちょっと楽しい出会い」がありました!

1.「ウインカー」

 日本の免許取得の実地試験とその事前練習で知人夫婦の通訳をしました。

単語帳から「車」「道路交通」などのページを引き出して単語のチェック。

 

 ウインカー:мигающий указатель (研究社和露辞典)

(мигать点滅する、瞬きする。Мигание瞬き)

 

で、コースに出てインストラクターの注意を訳していたら、ご主人から「поворот

と声が。後で確認しましたら、ウインカーは「указатель поворота」で、

日常会話では単に「поворот」と言っているとのこと。 

 

 Yakuruでは указатели поворотовと複数形。

 Google翻訳は поворотникとなっていました。

 

 車を運転しないので「ウインカー」と言う言葉を使ったのは初めてで、多分、最後。

 (参考: 24年1月号の「くらしのロシア語単語集」「自動車」)

 

 

2.「縁石」

 えんせき、ふちいし、へりいし、と色々な言い方があるようですが、

どれも今まで口にしたことがない言葉。

ロシア語はбордю́р(モスクワ地方) поре́бник(ペテルブルク地方)

フランス語起源の  бордюр (バルヂュール)は響きが美しいなと、

何となく好きな気になる言葉でしたが、

ついに!この単語を使いました、運転免許コースで。

 

Нельзя заезжать на бордюр. 

縁石に乗り上げてはいけません。 

 

(参考:22年4月号の「くらしのロシア語単語集」「街にあるもの」)

 

 

3.「歌謡曲」

 

 題名の романсはそのまま「ロマンス」としていますが、

「みんなの日本語」解説ロシア語版で、見つけました。 

 

「японский романс 歌謡曲」

 一般的にはяпонские популярные песни でしょうが、

もし歌謡曲の話題になったら、これからは

японский романс」を使おうと思っています。

 

 

 

 

 毎年一株か二株は花を付けていたのに、今年は全く花芽が出なく気になっていた胡蝶蘭。

コロナで中止されていた赤平の園芸店による「蘭の植え替えサービス」が

近くのスーパーで開催されたので、7鉢を持参。

「昨年の暑さで花芽がつかなかったのかも。葉も根も立派なので来年は大丈夫よ」

と嬉しい言葉。

 お安くなっていたレモンイエローの花に一目ぼれ、せめてもの春を楽しんでいます。