お金、お金、お金!:残酷なロマンス(持参金のない娘)(4) Жестокий романс(4 | 映画でロシアとロシア語

映画でロシアとロシア語

ソ連・ロシアの映画を選んで、詳しく説明します。
言葉を学び、ロシアを実感しましょう。

お金、お金、お金!: 残酷なロマンス(持参金のない娘)(4)

Жестокий романс4

Эпизод 2-4: У Огудаловых, В банке, Обед у Огудаловых

エピソード 2-4: オグダーロフ家、銀行で、オグダーロフ家の昼食会

 

 

 

 

Огудалова: Ну, что? Сдачи опять недодала. Дура

Служанка: От вас только и слышишь, что дура. Да я, барыня, каждую вашу копейку берегу! Огудалова: А гривенник где?

Лариса: Да что вы, маменька! Из-за таких пустяков нервы себе расстраивать!

 

オグダロワ:なに?またおつりが足りないよ、バカ!

女中:貴女から聞こえるのはバカだけです。奥様、わたしはあなたの1カペイカをいつも節約しているのです。

オグダロワ:10カペイカはどこ?

ラリーサ:なに、おかあちゃま!そんな小さなことで神経をとがらせて!

 

 買い物をチェックして、金額が合わないと不満の母親。

たった10カペイカのことで、とラリーサはお嬢様然としているのですが、・・・。

家庭内のシーンがいきなり「お金」で始まります。

家計簿を付けているらしいオグダロワの左薬指に指輪が。

未亡人の彼女が家庭を支えているのでしょう。

 

недодать 

「不完全・不足」の意味の前綴りнедо  が付いて、「必要量より少ない」

 

недо  が付いた言葉は他に

недожарить 焼き足りない、

недоспать  寝足りない、など。

 

ду́ра 、дура́к(バカ、マヌケ)の女性形

Она круглая дура. 彼女は全くのバカだ。

 

Служанка(帝政時代の)女中

帝政時代の用語が続きます

 

ба́рыня(地主・貴族の)奥様

関連する言葉で、

барин(地主・貴族の)旦那様

барышня (地主・貴族の)お嬢様

барчу́к (地主・貴族の)若様

 

гривенник(古)10カペイカ

 

 

беречь (берегу, бережёшь...)(不) + кого-что

大切にする、守る、節約する。

Берегите себя. お大事に。

 

「ся」が付くと、 注意する、用心する。

Берегись автомобиря! 車に用心

 

От вас только и слышишь, что дура.

「まいにちロシア語 応用編」第28課(1月19日)で説明されている一般人称文

 

 

 

 

Карандышев: Добрый день! Здравствуйте! Поздравляю вас с новорожденной!

Огудалова: Благодарю вас.

・・・

Огудалова: От Оли, поздравительная.

Лариса: От Оли? Дай скорее!

Огудалова: Доехали благоплучно... А это от Анны. Из Монте-Карло, наконец-то. Год не писала. «Мама, у меня несчастье: мужа обвинили в краплёных картах, грозит тюрьма, нечем заплатить гостиницу, нет денег вернуться во Франкфурт. Срочно вышли 700 рублей. Умоляю, спаси! Анна". Вот тебе раз!

・・・

Лариса: Мама! Может быть, дом заложить?

Огудалова: Спохватилась! Да он давно заложен. А на какие деньги мы живём? Семьсот рублей...

 

カランドィシフ:こんにちは!こんにちは!誕生日おめでとうございます!

オグダロワ:ありがとう、あなた。

・・・

オグダロワ:オーリャからは、お祝い。

ラリーサ:オーリャから?早くちょうだい!

オグダロワ:無事着きました・・・。こちらはアンナから。モンテカルロからよ、ようやく。1年も書いてよこさなかった。「ママ、不幸に見舞われています、夫がいかさまカードの嫌疑で入獄の恐れがあります。ホテルの支払いができなくフランクフルトに帰るお金もありません。至急700ルーブル送って下さい。お願い、助けて、アンナ」何てこと!

・・・

ラリーサ:ママ!家を抵当に入れたら?

オグダロワ:気づいたの!家はもう以前から抵当に入っているの。私たちどんなお金で暮らしている?700ルーブル・・・。

 

 

Поздравляю вас с новорождённой!

今日は、ラリーサの誕生日のようです。

 

новорождённый, новорождённая(名詞)は、

新生児、の他に「誕生日の人」という意味もあるので、ここは

「赤ちゃんの誕生おめでとうございます!」ではなく、

「お誕生日おめでとう」

 

Новорождённый 生まれたばかりの

 

帝政時代には、「自分が本当に生まれた日」と、

「自分の洗礼名にあやかった聖人の日」の二つを誕生日として祝っていました。

именины 名の日

именинник, именинница 名の日に当たる人。

 

ソ連時代からはименинник, именинницаは、

「誕生日の人」の意味でも使われるように。

 

オリガは冒頭のシーンでヴォルガ川を下りジョージアへ嫁いだ次女。

アンナは長女で、やはり外国人と結婚したようですが・・・。

 

краплёные карты いかさま用の裏に小さな印を付けたカード

крап 小さな斑点、トランプのいかさま用目印

 

700 рублей

10カペイカを惜しんでいるオグダロワ。

この戯曲が書かれた1878年から20年程後のチェーホフ作「かもめ」では

教師の月給が23ルーブル」とあります。700ルーブルは大金でしょう。

 

Вот тебе раз!( 驚いた時の表現)なんだって!、これは驚いた!

 

А на какие деньги мы живём?

жить на что 、~で生計を立てる。

Они живут на зарплату. 給料で暮らしている。

 

郵便局に勤めているカランドィシェフがわざわざ電報を届けに来ましたが、

オグダロワの対応は冷ややか。領地の収入や自分の事業で暮らしているならともかく、

持参金がないとはいえ、ラリーサを勤め人に嫁がせる気持ちはないようです。

 

抵当に入っている屋敷、教師になったプラトーノフなど、映画「機械仕掛けのピアノ・・・」を

思い出しますね。

 

 

 

一方でビジネスマンたちは銀行でこんな会話を、

 

Вожеватов: А я Ларисе дмитриевне подарок купил.

Кнуров: Чай, дорогой?

Вожеватов: Пятьсот.

 

ヴォジェヴァートフ:ラリーサ ドミトリエヴナにプレゼンを買いましたよ。

クヌーロフ:たぶん、高いだろ?

ヴォジェヴァートフ:500。

 

Чай(古)多分

 

ヴォジェヴァートフはラリーサの幼友達で貨物船の船会社を経営。

クヌーロフは富豪の事業家。

誕生日プレゼントのブローチを500ルーブルと、事も無げに話す二人。

 

 

    ラリーサの誕生日パーティ、

  どうにかして彼女の結婚相手を探したいと、母親が無理をしてお客を

 招いているのでしょう。

 

Вожеватов: Господа! Предлагаю ещё раз выпить за украшение нашего города, за Ларису Дмитриевну!

Гость: Ваше здоровье, Лариса Дмитриевна! Счастья вам!

 

ヴォジェヴァートフ:皆さん!もう一度わが町の誇り、ラリーサ 

 ドミトリエヴナのために乾杯しましょう!

客:健康を、ラリーサ ドミトリエヴナ!幸せを!

 

за украшение нашего города

украшение 飾ること、装飾

 

украшение чего ~の誇りとなる(人・物)

Шаляпин был украшением русского 

оперного театра.

シャリアピンはロシアオペラの誇りだった。

 

 

乾杯で、「Ваше здоровье」と、「За」を付けずに言っています。

 

もともとは、「あなたの健康を飲む」→「わたしと一体化」

→「自分の事としてあなたの健康を祈る」という乾杯の言葉だったそう。

それが変わって「За ваше здоровье、あなたの健康のために」と、

現在は必ず「За+対格」です。

 

 

Огудалова: Угошайтесь! Угощайтесь! 

Карандышев: Простите ради бога, господа, но меня управляющий задержал.

Огудалова: Милости прошу, чем бог послал.

 

オグダロワ:召し上がってください!

カランドィシェフ:本当にすみません、みなさん。支配人に引き留められていたので。

オグダロワ:どうぞ、ありあわせですが。

 

милости прошу  どうぞ(丁寧な誘い)

чем бог послал ありあわせの物で。

 

 

カランドィシェフは遅れてきた言い訳「上司に引き留められていた」を

もう何回も繰り返しています。

彼にとっては上司から話しかけられるのは大変なことで、また、

自分は職場で重要視されているという宣伝でもあるのでしょう。

ラリーサの誕生日に集まった人たちは彼には注意を向けてはいないのですが、

カランドィシェフは自己中心的で見栄を張る性格のようです。

 

 

Огудалова: Мокий Пармёныч, вот хотела дочери ко дню рождения подарок сделать. Да дорого, не по карману.

Кнуров: Ну, что там? Что это стоит?

Огудалова: Оцените!

Кнуров: А! Пятьсот рублей это стоит!

Огудалова: Если бы!... Все семьсот.

 

オグダロワ:モーキィ パルミョヌィチ、娘の誕生日にプレゼントしたいんですが。高くて手が出ません。

クヌーロフ:何ですが?いくらなのですか?

オグダロワ:値踏みしてください!

クヌーロフ:あぁ、これは500ルーブルです!

オグダロワ:それならいいのですが、700です。

 

не по карману (кому) 高くて手が出ない

карман ポケット

карманные деньги小遣い

 

Если бы! もしそうだったらよいが違う、という意味

 

  姉娘の窮地を救うためのお芝居をする母親。

クヌーロフは全てを知っていますが何も言わずにお金を渡します。

 

お金を手にした後に自分の罪を神に詫びるオグダロワ。