「魔除け」の菖蒲はどれでしょう | 横浜の香り教室 平安の香りと親しむ平安朝香道

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東急電鉄日吉駅3分にある平安の香りを創り楽しむ教室です。平安時代、貴族や「源氏物語」の主人公光源氏がたしなんだ香り創りや楽しみ方をご紹介。(by平安朝香道 朝倉涼香)

ピンクハート「魔除け」の菖蒲は

  どれでしょう

 

 

 

 

ご訪問ありがとうございます

平安朝香道の朝倉涼香です

 

 

 

 

5月に入って

夏のような日もありましたが

爽やかな五月晴に

なかなか会えません。

 

日中は蒸す日もありますが

朝晩はまだ冷えます

 

夜には

温かなお風呂に入って

じっくりと温まりたい毎日です。

 

 

5月5日端午の節句の日に

菖蒲湯に入られた方も

いらっしゃるのではないでしょうか?

 

 

5月が行ってしまわないうちに

と思い、菖蒲(ショウブ・アヤメ)

について少し綴ります。

 

 

 

花菖蒲

 

 

 

ず~~と昔

菖蒲とは

5月5日に飾る

紫の花の咲く植物

だと思っていました。

 

大人になって知ったのは

 

5月のお節句に飾る

紫の花が咲く

通常「菖蒲」と呼ばれるショウブは

花菖蒲でした。

お花は咲いても

香りはありません。

 

 

菖蒲湯に使用するショウブは

華やかな花とは大違い

ガマの穂状の小さなお花が咲き

全体に少し刺激のある

爽やかな香りがします。

 

 

 

 

 

 

特にピンク色の根元に

強く芳香がします。

 

 

 

 

 

 

「菖蒲」とはもともと

その香りを魔除けとした

植物なのです。

 

薬草を活用してきた中国では

古来より旧暦5月には

菖蒲や蓬の香りを無病息災を願って

厄除けとして使用しています。

 

 

五節句の一つ、端午の節句も

中国の行事が日本に伝来し

奈良朝では中国のそれに倣い

宮中で菖蒲の葉を輪にした鬘(かづら)を

頭に載せました。(菖蒲鬘)

その後

次第に日本の行事として

変化していきました。

 

 

万葉集にはアヤメグサ(菖蒲)が十二首詠まれ

全てショウブのことです。

この菖蒲は、香りのある

葉菖蒲または匂菖蒲

(花の咲く、菖蒲と区別のため)

なのです。

 

ほととぎす 待てど来鳴かず あやめぐさ

玉に貫く日を いまだ遠みか

              大伴家持

 

ホトトギスが鳴く日をずっと

待っているのですが・・・

あやめ草を玉のように繋ぐ日は

まだまだ遠いのだなあ

 

と5月5日を今か今かと

楽しみに待つ様子を詠った

和歌です。

(花橘や卯の花と同じように

菖蒲とホトトギスは

和歌の中でとても仲良し)

 

 

あやめ草や蓬を丸く編んで

続命縷(しょくめいる)と呼ばれる

くす玉を作りました。

 

邪気を払う目的で

それを身につけたり

御帳台(みちょうだい)や

母屋(もや)の柱に付けたりする

風習がありました。

 

このように

奈良時代や平安時代は

菖蒲は、花を楽しむのではなく

その香りで邪気を払い

永く健康に過ごせるように

願いが込められた植物なのです。

 

5月5日には邪悪なものを防ぐため

家の軒下に菖蒲や蓬を吊す風習は

今でも残っています。

 

菖蒲湯も菖蒲の香りで

健康な身体でいられるように

お風呂に入れるのです。

リラックス効果ありますよね。

 

 

花菖蒲の表記は室町時代以降

とされています。

 

ショウブ科なのに

アヤメグサとショウブの名を

アヤメ科の花菖蒲や野花菖蒲

に「菖蒲」と名乗られてしまったのです。

 

 

この「菖蒲」って

とてもヤヤコシや

な植物なのでした。

 

 

その見分け方は?

 

アヤメ(ハナアヤメ)は

4月下旬から5月にかけて咲きます。

とっくに咲いていると思います。

花弁の花元に綾目があります。

 

 

シトシトと雨に濡れて咲く

花菖蒲や杜若(カキツバタ)

5月中旬から咲きます。

 

 

 

 

 

 

花菖蒲は花弁の花元に黄色の筋

杜若は花弁の花元に白い筋が入ります。

アヤメ(ノハナアヤメ)は花弁の元に

綾目の筋が入ります。

 

 

梅雨の間の

鬱陶しい毎日に

清涼感を与えてくれ

雨の日を

心和やかに過ごせます。

 

湿地を好むのは

ハナショウブとカキツバタ

乾燥した陸地を好むのは

アヤメ(野花菖蒲・ノハナアヤメ)

この3つのショウブは

アヤメ科で

 

菖蒲湯に使用するショウブはショウブ科。

水を湛えた湿地の泥の中に根を張るのが

本来の菖蒲なのです。

 

古くはサトイモ科と言われていましたが

DNA研究により

サトイモ科ではないことがわかり

新たにショウブ科が作られました。

 

今では「菖蒲」と言ったら

アヤメ科の華麗な花の咲く植物

そのように認識されています。

 

端午の節句で

一般的に飾られるているのは

本来の菖蒲ではなく

花菖蒲なのです。

 

 

本来の菖蒲と区別出来るように

花菖蒲と葉菖蒲または匂菖蒲と

今では区別できるようにしていますが

「菖蒲園」と言っても

 

本来の菖蒲で成り立った

ショウブ園はあるのでしょうか?

 

本来の「菖蒲」の表記は

アヤメ科に取って代わられてしまいました。

元々の「菖蒲」は認識されず

悲しく思っていることでしょう。

 

少し癖のある

爽やかな芳香を放つ菖蒲は

古来よりその香りで

魔除けとして活躍してきました。

決して花の美しさではなかったのです。

 

魔除けの菖蒲

どの菖蒲なのか

もうお分かりのことと思います。

 

明日のお稽古ではこの菖蒲根を

使用します。