●気分は清少納言
心にくきものは 「枕草子」より「薫物の香り」
ご訪問ありがとうございます
平安朝香道の朝倉涼香です
今日の横浜は雨降りで
少し肌寒い日となりました。
前回は
のタイトルで温度が高く湿気の多い日は
香がとても良く香る
と言うお話でした。
そのことについて
「枕草子」の中で
「薫物の香いと心にくし」
と清少納言がしたためています。
古語の「心にくい」とは
心ひかれる
上品だ
奥ゆかしい
などの意味があります。
「枕草子」より「心にくきもの」
気分は清少納言で
跳んでる意訳をしてみましょう。
決して正解の意訳
とお思いにならないでください。
アレンジにあふれておりますので
あしからず。
気分は清少納言で参ります
「心にくきもの」
何かを隔てて聞こえる音なの
ご主人とは思えない
人を呼ぶ手の音が
パンパンッって聞こえるの
その音
せかすようでもなく
すご~く優しく品があって
それに答える侍女も「ハ~~イ」って
若々しい声で答えて
息もピッタリなの
いいわよね~
その上
サラサラッかしら?
キュルッキュルっかしら?
衣擦れの音がして
女主人の元へ急ぐ様子ね。
呼ばれたのがとっても
うれし~~
って言う気持ちが伝わってくるの
ものを隔てて聞こえる音なのに
何だか二人の奥ゆかしい良い関係まで
目に見えるようで
いいわよね~
もっと聞いていたい
って思うのよ~
中略
物を隔てて聞こえる宮中の様子や
垣間見た夜の情景や話し声
几帳(きちょう)に掛けてある
蔵人(くろうど)の衣装のことなど
目前で見聞きしているような錯覚を
起こさせます。
清少納言のちょっとイジワルな面も
垣間見えますが・・・
「心にくきもの」
の後半では過去の回想として
衣に薫き染めた薫物について
したためてあるのです。
「薫物の香 いと心にくし」
5月の長雨のころのことだったわ
(旧暦なので今頃の梅雨の時期です)
弘徽殿(こきでん)の中宮のお部屋の
妻戸の簾に藤原斉信(ただのぶ)中将が
寄り掛かっていらした時の香りったら
なんて素敵な香りだったでしょう
お顔なんてどうでもいいの
何?何?何の香?
どんな香を合わせて作られたのかしら?
ウ~~ン ステキ~
宮中ブランドの薫物
ってわけでもないし・・・
今日の雨の潤いが
薫物を際立たせてるってことはわかってるのよ。
でもこの衣に焚き染めた香り
何度でも
ステキ~
って言いたくなるの。
ステキ、ステキ
御簾に香りが移ってるみたいなの
次の日までもよ。
な~んとも言えない
抱きしめたくなるような心地よい香りが残ってるの
それを若い女房たちが
「わ~あステキな香り」
「今度は私の番よ」
「私にも~」
なんて言い合いながら
嗅ぎっこしてるんですもの
わかる、わかる
当然よね~
私だってそう思うのですもの~
というわけなのです。
毎日雨が降り続く梅雨には
高温と多湿で
薫物の香りが際立って
その芳香が寄り掛かっていた御簾にまで移り
次の日までも香りがしていた。
なんと素晴らしい
薫衣香(くのえこう・衣類に薫き染める香)です。
どんな香だったのでしょうか?
いろいろ想像を巡らしてしまいます。
平安時代も女性は
いいえ。
かえって男性の方が
香りにこだわっていたのです。
ひょっとしたらこの感覚は
現代よりも進んでいたかもしれませんね。