江戸の数字を楽しむ(1)
時代劇の楽しみ方は人それぞれだし、その時代のことをあまり知らなくても、楽しむことはできます。でも、もし知っていれば、もっと楽しめるだろうこともあるように思います。そこで、この記事では時代劇をより楽しめそうな、江戸の数字について書いてみたいと思います。
なお記事内の数値については、だいたい文化・文政、天保ごろのものだと思ってください。なぜなら、私たちがイメージする江戸は、明治の人たちの記憶にも残っていた、江戸末期の姿だといっても概ね間違いないと思うからです。また、数値は必ずしも厳密なものではなく、時代劇を楽しむに十分だと、私自身が思うものでしかないことを付け加えておきます。
■江戸の不定時制(場所や季節によって異なる時間)について
明六つは午前六時、暮六つは午後六時などと、番組内で注釈のある場合もありますが、これらはあまり適切な説明とはいえません。とはいえ、ドラマの制作者がそう断っているのであれば、それがそのドラマの設定ですから、それはそれでツッコミを入れずに、スルーして楽しみましょう。
ただし、本当は不定時制ですから、実際には場所や季節によって異なります。また解説等でたまにみかけますが、明六つは日の出、暮六つは日没という説明は正しくありません。明六つは夜明け、すなわち日の出のおよそ三〇分(正しくはニ刻半=三六分)前、暮六つは日暮れ、すなわち日没のおよそ三〇分(同前)後をいいます。詳しくは、下記のページを参照してください。
江戸の場合、明六つは、春・秋(春分・秋分ごろ)が午前五時ごろ、夏(夏至ごろ)が午前四時ごろ、冬(冬至ごろ)が午前六時ごろになります。よくいわれる「午前六時」よりも一時間ほど早いイメージでしょうか。暮六つは、春・秋が午後六時~六時半ごろ、夏が午後七時半ごろ、冬が午後五時ごろでした。
また、昼(明六つから暮六つまで)の一時(いっとき)の長さは、春・秋が二時間強、夏が約一六〇分、冬が二時間弱となります。逆に、夜(暮六つから明六つまで)の一時の長さは、春・秋が二時間弱、夏が約八○分、冬が二時間強となります。
時の数え方は、明六つから、五つ、四つと数が減っていき、昼九つで戻って、八つ、七つ、暮六つ 、 五つ 、 四つときたら、また夜九つに戻って、八つ、七つとなります。時間の経過とともに数が減っていき、 四つ まできたら、九つに戻るわけですね。ややこしいですが、これを知らないと落語の「時そば」もピンときません
あまり細かいことをいっても、楽しむどころか混乱するだけかもしれませんので、ざっくりといえば、明六つとは「日の出の三〇分ほど前、東の空が白み始める時間」、暮六つとは「日没の三〇分ほど後、あたりがすっかり暗くなる時間」と覚えておけば十分でしょう。日の出前と、日没後のニ刻半(三六分)こそ、魑魅魍魎が跳梁跋扈するといわれるトワイライト(薄明)ゾーンなのです。
(参考)
■長さと距離について
不動産の世界では、八〇メートルを徒歩一分と計算するのが一般的なようですが、江戸では半時で一里、一時で二里を旅などの目安にしていたようです。東海道は、日本橋から金杉橋までがおよそ一里、品川宿までがおよそ二里強の距離でした。
一里は三六町で約四キロメートル、一町は六〇間で約一〇九メートル、一間は六尺で約一.八二メートル、一尺は一〇寸で約三〇センチメートル。俗に九尺二間(くしゃくにけん)
(畳六畳=三坪)といわれる裏長屋の一戸分の広さ(狭さ?)がイメージできるでしょうか。
次回は、お金と幕臣の給料に関する数字について、書いてみようと思います。
■参考サイト