【このテーマの記事は、UAV写真測量に必要な解析や、そのためのAgisoft PhotoScanの操作について解説しつつ、適切な設定の探し方を提案することを目的とします。注意事項や用語説明もありますので、最初のページから読んでください。教科書的な操作手順表はこちらのページにあります。】
Step 10では、Step 9で入力したGCPの世界座標を使って、ジオリファレンスを更新する。
3点以上のGCPの座標が入力されていれば、「座標データ」ペインの上部にある「更新」ボタンにより、ジオリファレンス(SfMが行われた座標系から世界座標系への座標変換)が更新される。
ジオリファレンスは、既に述べたように、7自由度(原点の移動でx, y, zの3自由度、スケールの変更で1自由度、回転で3自由度)の線形変換である。GCP1つにつき、x, y, z成分に関する3つの拘束条件が得られるわけだから、GCPが一直線上に並んでいるなどの特殊な条件でなければ、GCP3点でジオリファレンスは十分に定まる。
より多くの/高精度のGCPがあれば、当然、7パラメータの推定精度は良くなる。回帰分析で、トレーニングデータが多い/高精度である方が回帰係数が安定するのと全く同じである。
(※ このスクリーンショットには細かい数値の誤りがあるが、イメージとしてご容赦いただきたい)
「座標データ」ペインを、「推定値を表示」に切り替えると、各マーカーの座標、各カメラ(撮影)の座標・向きの推定値が表示される。
多くのマーカーについて、m級の大きな誤差が得られている。マーカーが精密に設置されているなら、これは、既にStep 7までの段階で、カメラパラメータの推定に失敗していることを示している。つまり、カメラの特性や、各画像の相対的な位置関係・向きの推定が不正確であるということだ。「更新」はジオリファレンスを与えるだけで、カメラパラメータを更新するわけではない点に注意願いたい。本ステップを踏むことで、Step 7までの段階でのカメラパラメータの推定の成功度合いが、マーカーの世界座標の推定誤差というわかりやすい形で確認できる。
今回に限って言えば、Step 7で述べたように、「弱いカメラの配置」のせいで、カメラの内部パラメータの推定値に、答えを知らなくてもわかるほどの異常があった。マーカーの誤差を確認しなくても、カメラパラメータの推定に失敗しているのは明らかだったから、このジオリファレンスのステップを飛ばして、最終的なカメラパラメータの最適化に進んでもよかったかもしれない。