私は母の帰りを楽しみながら待つ事が出来た。

帰って来たらちゃんと『有り難う』って言おう。そんな事を考えながら待っていた。

夜暗くなってからみんなで帰ってきた。


『おかえりなさ~い!!ママ、私元気になった!ママ、お菓子有り難う!!』と抱きつきながら母に言った。

すると母から返ってきた言葉は『どいて!!疲れてるの!!』と腕を横に引っ張りながら言われたのだ。

横にはじかれた私に、父が『ただいま。寂しくなかったか。お腹が痛いのは治った?今度は一緒に行こうね』と微笑みながら抱き締めて言ってくれた。

私は、父に言われた言葉を母に求めていたのにとまた現実を目の当たりにする事となった。
家に置いていかれた私は何もする気になれず、祖母の家(二世帯だったので隣が祖母の家だった)にも行かず、誰も居ないリビングでボケッとしてた。


『今何やってるのかな』そんな事ばかり頭の中でグルグル考えては寂しさに明け暮れて泣いていた。

すると、祖母が心配して家に来た。

『何やってるの?早くばぁばぁの所においで。ママがおやつ置いていったから食べよう』とニコニコしながら近寄ってきた。

私はビックリした。
『えっ、おやつ?ママが私に置いていってくれたの?ばぁばぁが用意してくれたんじゃないの?』

そう言いながら、私はルンルン気分で祖母の家に向かった。


祖母の家のテーブルには私の大好きなお菓子が3個と冷蔵庫にヤクルトが何本かあった。

『お菓子は1日一個好きな物をたべさせて』って旅行でから帰る日までの物が置いてあって、私は嬉しくて嬉しくて仕方なかった。


『ママが私の為に用意してくれたんだぁ』と置いて行かれた事の寂しさが一気に吹き飛んだ。
私が年長の夏休み、家族で千葉に家族旅行に行く事に決まった。

私も記憶にある初めての旅行になるはずだった。

しかし、父が旅行予定一週間位前に急に出張が入ってしまい、旅行には途中から合流する事になった。

私は父の居ない旅行に不安もあったが、途中から父も来ると言うことで不安より楽しみと言う気持ちの方が遥かに勝っていた。

そして、いよいよ旅行当日の朝、母から
『あんたも知っての通り家族旅行ってのは家族以外行かれないから!明日パパには具合悪くて留守番させたって言っとくからあんたもそう言いなさい!』と言われ、私は祖母と留守番する事になった。


みんなが家を出た後、リビングでワンワン泣いた。やっぱり家族にはなれないんだと実感した。